★独学、61歳受験生が行政書士試験に合格する法② 悪条件に慣れる!

61歳受験生2

今年も最初の1時間あまり、泣きたいような気持だった。
問題は長いし、分からないし、『辞めたい』の思いも一瞬よぎった。しかし、『絶対にあきらめない』と思ったし、集中力も途切れなかった。

粘り抜いてこそ活路は開ける

たくさん問題集を解いたから、『全滅はしない』確信があった。
いつも1問~7問目までが鬼門である(憲法と基礎法学)。
問題集で7問目までに「×」が6つというときもあった。
それでも法令40問中、終わってみれば24問正解(一応6割)。

もちろん6割では心もとないが、法令が悪くても一般知識で奇跡的に稼げるときもある。
行政法で「×」が多くても民法では「○」が多い、あるいはその逆。
5肢択一が悪くても、記述式が意外にスラスラ―など、なんとかトータルすれば60%確保、ということがよくあった。
そういう経験の積み重ねが「とにかくあきらめず、粘る」という意味だ。

わからないとパニックに・・・・

かつて大学受験生のころは、自分のことを「あがり症」と思ったことはなかった……。
しかし一度、手ひどい洗礼を受けてから恐怖感が染み付いてしまったらしい。
案外、パニックに陥るのだ。

『分からない』と思ってしまうと、ろうばいする。
耳の後ろが熱くなる。
そうなると、文章が頭に入ってこない。

だいたい30分から1時間程度、そんな感じになる。
前回の試験のときもそうだった。
1問目、簡単なようでいて確信がない、時間ばかり食う。
それで焦ってしまった。

今回は……。
やはり「憲法」「基礎法学」の1~7問目まで調子が上がらなかった。
しかし、出足が悪いのは想定内!
それでなんとか、焦りすぎることだけは回避できた。

記述式はメインディッシュで後回し

記述式は、いつも一番最後にやる。
気分的には、試験の中の“メインディッシュ”である。
先に見るのが怖い、ということもある。
ショックを受けたくないのだ。

法令40問、一般知識(国語の3問を含め)14問を片づけてから、穴埋め3問に時間を掛け、最後に記述式に取り掛かる。

穴埋め問題は、前回試験を受けるまでは「やさしい」と思っていた。
しかしこの年の問題は超難問、結果は衝撃的だった。
12問中、正解はわずかに3問、穴埋めで6点しか取れなかった。
それで今回もビビっていた。

案の定、最初の問題は読み進んでも、どうもよく分からない。
しかし、法令問題のように「飛ばして先に行く」わけにはいかない。
混乱のまま先に行っても、どうせ文章は頭に入ってこないからだ。
で、ここだけは時間をかけ何とか粘った。
落ち着いて読み直したら意味が分かってきた。
2問目、3問目の方が落ち着いて出来た。

最後に記述式問題。
先に3問読むような方法はとらなかった。
1問ずつ取り組む。

1問目、「即時強制」はすぐに分かった。あとは書き方の問題。
2問目、抵当権消滅請求と○○弁済(だっけ?)だとはすぐに分かったが、
『ヤバイ!度忘れした!!』キーワードが出てこない!!

消滅請求だけをメモしておいて、このときは先に進んだ。
3問目、『表見代理だな』と考えた時、
何の脈絡もなく『代価弁済じゃん!!』と言葉が浮かんだ。
2問目がそれで救われた。

度忘れ対策にも手を打った!

高齢受験生にとって何がネックかと言うと、瞬発力だ。
短い時間に次々、論点の違う問題を解いていく。
なかなか頭の切り替えと、スピードに自信が持てない。
しかし「瞬発力」は若い受験生でも至難だろう。
それで、気にしないことにした。

もう一つ、決定的な危険がある。
度忘れだ。
この歳になると、よく知っている人なのに名前が突然、出てこなくなる。
テレビを観ながら、家内と「ほら、あの人なんて言うんだっけ⁈」。
連日こんな調子。
地名も、固有名詞も同様だ。

ふだんは実害ないが、試験となれば話が違う。
最も影響が大きいのは記述問題だ。
言葉を自分で書き込まなければならない。
何気なく書いているときはスラスラ出るのに、
「答だ!」と思った瞬間に出てこない言葉がある。
頭の引き出しからなかなか出てきてくれない。

これは怖い。
「代価弁済」がまさにそれだった。

忘れやすい言葉をノートに

度忘れが予想できるなら、はじめから書き出しておけばいいではないか。
そこで僕は、試験2日前に「民法」「行政法」で特定の言葉をすべてノートに書き出した。
心裡留保・不真正連帯債務・追完請求…(民法)
釈明処分の特則、検索の抗弁権、原処分主義…(行政法)

試験直前にそれを見ようと思っていたが、実際には見る暇がなかった。
表見代理も代価弁済も、その中にあった。
ふっと思い浮かぶ下地を一応はつくっていた、ということである。

どうしても言葉が出てこなければ……?
そのときは、その言葉の内容を書いて理解していることだけは示し、部分点を取りにいくつもりだった。

試験は理想の環境で行われない!

試験会場は、理想の環境とは限らない。
いつも最悪の状況を想定しておくべきだ。
静かで誰にも邪魔されない環境で勉強したいものだが、条件が良すぎるのも考えものだ。

肉体面の環境も同様。
試験当日、40度の高熱が出ていようと、1年を棒に振るわけにはいかない。
だから、理想の状況ばかりを追い求めない。

僕はよく眠くなる。
お昼過ぎと午後5時過ぎから9時までにかけて眠気が続く。
しかし、まさにこの時間こそが書き入れ時だ。
薄ぼんやりしながらも、頭の中に詰め込む。

冷暖房完備、無菌、防音の試験などない!

暑さ対策、寒さ対策も万全にしない、至れり尽くせりにはしない。
今回の試験、当日割り当てられた席は窓から2列目だった。
11月中旬だというのに、暑くて芽が出そうだった。
冷房も、暖房も、極力エアコンを使わずにやってきたから、気にならなかった。

声の対策もそうだ。
家人に「やかましい」「集中できない」などと言わないことにしている。

試験当日は試験官の声が結構、耳触りになる。
「1時間たちました」「後10分」はともかくとして、
「今から退出できる云々」「もう一度よく見返して云々」などの口頭による注意は、切迫している人にとってはだいぶ気になる声だったのではないだろうか。
それでも、試験とはそんなものである。
無菌室、防音室で受験できるわけではない。
ふだんからさまざまな喧騒に対して、耐性を作っておくべきだ。

試験当日、時計を忘れた……

当日、僕は時計を忘れた。
ふだんから腕時計はしていないので、肝心な時に忘れたらしい。
駐車場に着いたとき気がついたのだが『教室には時計があるでしょう』と楽観していた。
しかし、どの壁にも時計は掛かっていない!

所用時間は体が記憶

『困ったな』と思ったものの、忘れたことは仕方ないとあきらめた。
あっさりあきらめた訳は、だいたいの所要時間を体が記憶しているからだ。
1問~40問まで1時間15分前後。
一般知識と国語の3問で30分~40分、
穴埋めには結構かかるが、それでも3問で15分未満。
記述式も1問10分は掛からない──これが僕の経験知だ。

穴埋めと記述式を残して1時間は残る見当。
実際、試験官が「1時間たちました」と言った時、
僕は33問目に取り掛かっていた。
法令の5肢択一問題、まだ民法3問、会社法5問が残っている。
いつもより若干時間が掛っているが『まあ、想定内』。

いつもの手順で一般知識をやり、最後に穴埋め、記述式をやる。
すべてを書き終えて、まだ30分程度は残っているような感覚があった。

解答のバランスがいかにも悪い!

そこから、答えの見返しに入った。
まず、問30を前後して僕の解答だと「2」が5問連続していた。
これはいかにもバランスが悪い。
そこで、ここを真っ先にチェックした。
落ち着いて考えると、やはり答えは違ってくる。
(結果的に、3問拾った!)

続いて1問~7問まで。3問ほど答を変えた。
変えた結果、落とした肢もあるが、拾った肢もある。

続いて穴埋め問題。
ここは答えを入れてざっと読んでも抵抗がなかったので、そのままにした。
(結果「×」は4つ。全問正解のつもりだったが、なかなか……)

一般知識は、当初の勘を信じていじらず。
国語を読みはじめたが、考えすぎると余計に罠にはまる。
検討半ばで、見返しはやめた。得意科目という自信があった。
(結果は3問中「○」は1問のみで惨敗!じっくり読み返せばよかったかな……)

受験予備校は「さすが」の存在だ

受験予備校を利用するべきか否か。
授業を受けたことがないから何ともいえない。
(過去問に付いていた解説DVDも結局は見なかった)
しかし最近の傾向を見るにつけ、お金と時間があるなら、
通ったほうが早道ではないかと思う。

1年目、難しさの見当が付かず『何とかなるだろう』と思っていた。
しかし1年やってみて、予備校の出題察知能力に舌をまいた。

最近の試験を見ると、
予備校と試験委員の知恵比べみたいな印象を受ける。
言葉は悪いが、だまし合い、出し抜き合いだ。
尋常な問題なら、多くの受験生が正解する。
そこで試験委員は問題をひねる。
いゆる「新傾向の問題」だ。
するとそれを見て予備校は、即座に対応する。
授業やテキスト、模擬テストで徹底的に類似問題を解かせる。

それを見て、試験委員はさらに新しい問題を考える。
予備校は今度は試験委員を「出し抜いて」、さらに想像し得る新しい傾向の問題をつくって“挑発”する。
かくて、問題はだんだん一筋縄でいかなくなる。

過去問が通用しにくくなっている!

ふつうの受験生の法令知識は懸命に覚えたとしても知れている。
プロから見れば生半可。
そこを突かれ、難易度を上げられるともはや手の打ちようがない。

以上は、あくまで僕の印象である。
しかし、四六時中試験問題を研究していれば(予備校はまさにそれ)、そして数年間分の出題実績を日夜分析している訳だから、次にどこが狙われやすいかは、かなりの確率で当てられるのではないか。

個人でやっている限り、この“高度な戦い”は見えない。
その意味で、予備校に通わない受験生は不利だろうな、と思う。
一言で言えば、過去問が通用しにくくなっている時代なのだ。
過去問と同工異曲の問題が出る確率は年々下がっている。

試験制度はこれでよいのだろうか

一受験生の立場で批判するのははなはだ僭越だが、真の実力を測る、あるいは受験生の将来の伸びしろを推測するという意味からは、「60%が合格点」という現行試験方式は、現実に合っていないのではないだろうか。

「60%で合格」は考え直すべき

受験生の力が上がっているのだ。
だから、オーソドックスな問題を出すと、何十%もの人が合格ラインを超えてしまう。
勢い、落とすための問題を出題することになる。

ひところなら、条文知識があり、しっかり過去問をやっていれば(時折、難問、奇問があったにしても)合格点には達した。
つまり、まじめに受験勉強している人なら受かったのだ。

”難問化”を誘発している感じ

合格率数%を維持するために難問化していくとするなら、「想定合格人数」をあらかじめ決め、上から順に合格とする方が素直だと思う。
それなら無理やり、問題をひねる必要もなくなる。
(合格者の正答率は年々異なることになる。司法書士試験がそれだ)

もっとも「60%越えで合格」と言うのがこの試験の伝統である。
その良さも確かにある。
ハードルが低そうでいて、実は難関!!
個人的にはこちらの方が性に合っている。
問題の難化は攻略し甲斐がある(しかし、独学派は苦戦だろうな)。

いずれにしても一長一短、これ以上御託を述べるのはやめる。

挑戦はまだ始まったばかり

法律の勉強を始めたのは59歳の10月からだ。
ほとんど衝動的に、瞬発力のみでスタートしたので、
僕の勉強は相当に効率が悪かったと思う。
試験の難易度さえ知らずに、闇雲に戦ってきてしまった。

「俺流受験勉強」に既視感があった

それでも何とかゴールにたどりつけたのは、「既視感」があったからだ。
団塊の世代は“受験戦争”と言われた厳しい大学受験の経験がある。
田舎の高校だから、受験テクニックなど学校にはなかった。
1年間“浪人”をしたので、有名予備校にも通った。
しかし授業に出たのは1学期だけだった。
以後、東京の下宿でもっぱら「自習」。
つまり、今回と同じだ(僕は人と一線で勉強するのが苦手のようなのだ)。

結果、いつでも自己流を通してしまう。
逆に言うと、何とかつじつまを合わせるのが得意なのだろう。

家内や娘からは「絶対に予備校に行くべきだ」と言われていた。
特に前回、試験に落ちたときには。
それをきかなかったのは、ここに至るまで、つまづきつまづきだが、
ショックと挫折の壁を、いくつも越えてきていたからである。
歩みは遅々としていたが、2年目の勉強にはそれなりに手ごたえがあった。

結果的に、何とか具体的な「成功の形」を手にすることが出来た。
しかし、挑戦はまだ始まったばかりだ。

長い道のり、60歳は通過点でさえない

ツイッターのプロフィルに「行政書士試験を受ける」と書くと、
「アグレッシブですね」「前向きですばらしい」とか褒められてしまう。

『これって、何なんだ……』

「60歳=定年=おしまい」は固定観念だ

60歳だと、挑戦するだけでエライのか!
20代や30代の人が受験生なら、別に誰も褒めたりしないだろう。
「60歳」=「定年」のイメージ。
「定年」=「人生の終わり」、終わりと言わないまでも「一段落」。
多くの人にそんな固定観念がある。

でも実際にその歳になってみれば、「60歳」は通過点でさえない。
淡々と続く1本の道である。
その道が僕の場合、分岐点に差し掛かってはいるだけ……。

受験生をやり抜いた最大の贈り物は「意欲を回復」したことだろう。
サラリーマン人生の終わりに近づき、気抜け状態になっていたが、
いつの間にか、また「欲」が出てきた。
やりたいことが次々に浮かんできたのだ。

そんな訳で、行政書士を開業する前に、一足先に出版社を立ち上げることにした。
道はまだまだ続く。
長年会社に守られてきたサラリーマンから、一事業主へ。
冷たい風が吹くかもしれないが、歩き続けようと思う。

★このブログは2012/2/8、行政書士試験に合格して8日目に書いたものを再掲、文章を少し手直ししています(日付などは当時のままです)。

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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