★年齢で命を値切るな! 『大事なこと、ノート』を大幅改訂

「命を年齢で値切る

「エンディングノート」について講演する機会があるので、気になっている個所を書き換えました。
『大事なこと、ノート』
終活のためのノートではなく、老後を無事に生き抜くためのノートです。
中でも力を入れたのが「延命」についての項目。
年齢で命をねぎるな!
「延命」拒否を促すような空気、おかしくないですか果て⁈
書き直しの中心は、その辺になりました。

■いきなり”鼻からチューブ”の選択

「延命」に対する私の考え方は、昨年(2016年)1月3日を境に180度変わりました。
その日、父が脳梗塞で倒れたのです。
5日後医師から、鼻からチューブを入れて栄養を摂る「経鼻胃管栄養法」をするかどうか打診されました。
父は右半身がマヒし、嚥下障害が強く出ていました。

《いきなりかよ……》
母は3年前から鼻からチューブにより生きています。
長い経過がありそうなって、今、意識はまったくありません。
そういうことがあるものだから《いきなり⁈》と思ったのでした。

あれから1年たちました。振り返ると───
父は発病から3週間で退院し、リハビリ病院に転院。
訓練に熱が入っていた3週間後、誤嚥肺炎により生死の境に。
それも3週間でなんとか回復、また訓練に復帰しました。
3か月後には”鼻からチューブ”を脱し自力で摂食。
奇跡のような回復ぶりでしたが、さらに7か月後、
口から食べるとむせることが多くなり、また鼻からチューブに戻りました。
一進一退。完全回復はないのでしょう。

以前の私はこういう話に興味がありませんでした。
「それで生きている価値があるのかなあ」
問われれば、そう答えていたと思います。
しかし今、1年当事者として父と接してきて思うのは
《いくつであっても「これで仕舞いでいいや」はないな》
ということです。

リハビリ病院では目を見張りました。
活気に満ちているんです。
絶望病棟ではありません。
歩行器で歩ける人はエリート、車いすを操れる人は優等生、それ以前の重度の人がいっぱいいます。
しかしみな真剣。
患者も、療法士たちも、医師も看護師も。
そこは”希望の世界”です。

4か月目、父は老人保健施設に移りました。
少し活気は落ちたけれど、落ち着いた日常があります。

■父の病で心の距離、縮まる

私と父とは、仲の悪い親子でした。
40年も同居してきたのに考え方、生き方がまるで違う。
いつも父を批判的に見てきました。
最近は父の衰えもあって、まるで”叱り役”のよう。
病院に、施設に通うようになり、少しずつ変わってきました。

父は意識はありますが、言葉は出てきません。
リハビリ初期には懸命に発声していましたが、聴き取る側としては難しく、意思疎通がうまくいかないので、そのうち父は話をしなくなりました。
代わりに文字盤を使っての”会話”です。
通じないけれども、距離は近くなったと互いに感じています。

医師から鼻チューブを打診された時、驚きはしたものの「お断りする」という選択肢はまったく浮かびませんでした。
延命拒否論者であったのに……。
理由は父の目です。
「俺は生きている」と語っていました。

《そりゃ、そうだ。オヤジ、分かったよ》
そう思ったのです。
延命もヘチマもあるか、生きたいという人を止める権利なんて誰にもありゃしない!

いつまで父の闘病が続くのか、皆目見当もつきません。
しかし気力の衰えない父は生きる権利がある、と私は思っています。
この1年、グチも嘆きも聞きませんでした。
《根性、座ってるなぁ》と敬服します。

■「延命」に私の想いを載せた

さて、ノートです。
今の私の気持ちをそのまま文章にしたので「延命」については強く”私の想い”がにじんでいます。
年齢によって命を値切るようなことはおすすめしない!
かなり主張の強いノートになりました。

「■大事なこと改訂

『大事なこと、ノート』改訂版

[15ページ]

闘病

この項で扱うのは「死に至る病」にかかったときのあなたの対処法です。

死因の上位に出てくる病気は、▼がん、▼心疾患、▼脳血管障害、▼糖尿病など。
これらの病気は、病院や医師の治療方針によって、また患者自身の希望や心構え、人生観などによってさまざまな治療形式が選ばれ、“闘病の形”は人によって違ってきます。
あなたは病気とどう向き合いますか? イメージしやすいよう下に選択肢を示しますが、最終的にはあなたの言葉でどのような治療を受けたいのか、書いておくべきです。

<治療方針について>

  • どんな状況でも病気と闘い、寿命があるなら治療を受けまっとうしたい
  • 不治の病であるならお金のかかる先端医療は望まない
  • 治癒が見込めないなら手術はしてもらいたくない(積極的な治療は望まない)
  • 病気のことは病院や医師の判断にお任せする
  • 病気に関するあらゆる情報を知らされることを望む、セカンドオピニオンも求めたい
  • 今後の治療方針についてはしっかり説明を受け、わたし自身が判断したい


<あなたが大切にしたいこと>

  • 病と闘い生きられる命を大切にしたい
  • 治療や処置については十分知らされ、自分で選択できること
  • 生活の質(声を出せる、口から食べられる、意思表示ができる)を落とさないこと
  • 病院や施設より、なるべく自宅で療養・看護を受けること
  • 認知症や老化で意思能力がなくなった時には自然に任せること
  • (  歳)まで、(例:孫が成人する)までは生きたい ※そこまでは積極的な治療を
  • 末期に「痛み」があるとそのことばかりに気を取られるので、痛みは緩和してほしい

<最低限の希望>

  • 最後は自宅で死にたい
  • 治療、延命より“生きている日々”の質を高めたい
  • 病気などで衰弱し、意思能力がなくなったら看取りの医療に切り替えてほしい

 ★闘病の形b

(自由記述)

[16ページ]

告知と延命

「あなたの闘病の形」がイメージできたら、次は「告知」の問題を考えてみましょう。「告知」が問題になるのは、不治の病であると判断される場合です。代表的なものは「がん」。また成人病である心疾患や脳血管障害、糖尿病でも重篤な場合は治癒困難となる可能性があります。医師が病名を告げるのは、その後の治療をしやすくするためです。最近は本人に告知する場合が多いですが、家族などにあなたの意思を伝えておけば、病院側も配慮して対応してくれます。
あなたの意思をノートに書き、しかるべき人に伝えておきましょう。

<病気の告知について> 

以下は、判断材料の一例です───

  • 不治の病であるなら病名を告知しないでほしい
  • 病名は告知してほしいが、不治であるなら余命は知りたくない
  • 余命が______年以上ある場合は、病名も余命も告知してほしい
  • 治癒する可能性があるなら、病名と現状と今後の見通しを詳しく知りたい
  • 病名と治癒の可能性、または余命の目安を知ったうえで、今後の治療方針については自分で選択したい
  • 病名や治癒の可能性を知ったうえで、今後の治療・対処方針は医師の判断に任せる
  • 病名や治癒の可能性、余命などはすべて家族に話し、わたしには知らせないでほしい
  • ありのままの事実と、その事実に対する医師の判断を聞かせてほしい
  • わたしの状態はすべて伝えてほしいが、セカンドオピニオンも聞いてみたい

★告知について

★この病気について相談できる人(親族や友人、医師など)

(記入欄あり)

★病名や「余命」告知についてあなたの思うところ
(自由記述)

[17ページ]

★延命措置

延命治療と言えば心肺蘇生装置や心臓マッサージ、栄養面では胃に直接穴を開け栄養剤をチューブで流し込む胃瘻(いろう)や鼻からチューブの胃管栄養法が思い浮かびます。

「延命」を真剣に考えるなら、最低4つのケースで対処方針を決めなければなりません。

■「延命」について考える4つの場面

  • 脳卒中や事故、重病で意識が鮮明でないような急性期
  • 治療をしてきたが回復せず、ついに死期を迎える終末期
  • 老化や病の進行、病の性質により通常の食が摂れなくなる慢性期
  • 認知症の進行や老化で意思疎通が難しくなる老耄(ろうもう)期

4つの時期を例に挙げましたが、症状や状況が重なり合ことが多く「死期」の判断は非常に難しいです。しかも①②の時期と③④の時期では「延命」の意味がまったく違います。急性期の意識で簡単に「延命拒否」とは言わないでください。いくつになったからもう延命はいらない、という発想も、あなたが今元気だからそう言えるのだと思います。高齢期に口から食べられなくなることは症状の1つであり、それが死に直結する「末期になった」ということではありません。
ですから、命の終わりをどうするかについては、冷静に真摯に考えてから決断を。急性期のイメージのまま「延命拒否」と書くと、まだ生きられるのに命を縮めることになります。

≪主に急性期から終末期≫

  1. あらゆる手立てを尽くして命を少しでも長らえさせてほしい
  2. 手術が必要なら手術をしてもらいたい(先のことは考えずに)
  3. 手術をしても社会復帰が難しいなら、静かに余命を生きたい
  4. 死期を遅らせ命を延ばすだけが目的の医療は拒否する(「尊厳死」に当たります)
  5. 鼻からチューブや胃ろうは回復過程ではやむを得ないが、回復が困難であったり、私の意思能力が回復しないときには点滴などに換え、自然に任せてほしい
  6. 重篤な場合は集中治療室(ICU)での治療を望む
  7. ずっと集中治療室(ICU)にいなければならないなら、治療を中断するか、代わりの治療法に換え、一般病棟に戻してほしい(経済的な負担が心配)
  8. 危篤になったときは心肺蘇生術(気管挿管や心臓マッサージ)を行ってほしい
  9. 危篤に陥ったときには自然に任せ、命を無理に引き戻す治療はしないでほしい
  10. 私が   歳以上の場合は、手術も高度な医療も受けたくない
  11. 認知症や病気の進行で家族のこともわからない状態なら、手術はしないでほしい
  12. 経済的なこともあるので手術はせず標準的な医療にとどめてほしい
  13. 病が末期なら治療はしなくてよい、痛みをやわらげる措置だけをお願いしたい
  14. 自宅で倒れたら救急車を呼ばないでほしい。病院で倒れたら救命処置は不要

 ≪老化が進んだとき≫

  1. ずっと意識がなく、回復の可能性がないなら、延命措置はしないでほしい
  2. 私に意識があるなら、口から食べられなくなっても胃ろうや胃管チューブで生かしてほしい
  3. 私に意識があっても、胃ろうや胃管チューブで栄養を摂る措置は不要だが、中心静脈栄養法はお願いしたい
  4. 私に意識がある場合でも、中心静脈栄養もとらず栄養補給は普通の点滴にとどめ、自然に任せて静かに死を迎えたい

[18ページ]

◆わたしが意思能力を失っているとき、わたしの代わりに判断してくれる人

(記入欄あり)

※意思を通すには、家族や信頼できる人にあなたの意思を伝えておかなければなりません。念のため申し添えますが、成年後見人はあなたの意思を代弁しません。また手術の同意権も有しません。
かかりつけ医や診察・治療を担当している医師に、もしもの場合どうするかは事前に伝えておきましょう。高齢者の治療では常に「延命の可否」が問題になります。本人の希望と社会の風潮とが微妙に関係し、医師は常に(延命する・しない)どちらの方向からも批判される可能性が高いからです。だから「どうするか」に迷います。自分では決められず、決めてもらいたいのです。
あなたの意思が決め手になります。慎重に判断してください。

★急性期の延命治療について

(自由記述)

★終末期の延命治療について

(自由記述)

★老化や認知症が進んだ時の延命措置について

(自由記述)

★病気により経管栄養法や胃ろう増設を受けたとき

※必ずしも終末期ではありません。

(自由記述)

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★”超エンディングノート”を創りました!

人生の「大事」を目の当たりにして、いろいろなことを考えました。
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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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★筆者のプロフィール

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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