★使ってはいけない「成年後見」。認知症対策の切り札にはならない‼

[成年後見、使ってはいけない
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成年後見人の使い方を多くの人が間違えている。
特に金融機関の勘違いがはなはだしい!
法定後見制度は使う側にとって極めて負担が大きい制度だ。
本人の身上と財産を守るための制度であって、本人の周りにいる人(例えば家族)の都合や金融機関の安全のためにあるのではない!
しかし後見の申立をする多くの人は、成年後見人を”一時的に本人を代理人してくれる人”程度にしか考えていない。
事実を誤認しており、法の主旨からしてもまったく的外れの理解だ。
間違いから出発するから、いざ成年後見が始まってみると「こんなはずではなかった」とほぞをかむことになる。

 

■申立て理由の1位が「預貯金」だなんて

最高裁判所は毎年、「成年後見事件の概況」という資料を発表している。
”事件”というので大げさに聞こえるが、利用状況統計だ。
最新の平成27年版で私が注目したのは「資料7」。
主な申立ての動機別件数───

 

後見開始の申し立て理由

 

対象は「成年後見・保佐・補助」の法定後見と、任意後見の申立て件数である。
1位は「預貯金等の管理・解約」。
ダントツの2万8千余件。
2位は「介護保険契約(施設入所等)のため」。
1万件を超えている。
以下、▼身上監護▼不動産の処分▼相続手続き▼保険金受取──と続く。

 

■「本人を守る」という主旨はどこに消えた⁈

「身上監護」を除けば、すべて単発の”困り事”のための申し立てである。
また「介護保険契約(施設入所等)のため」と「身上監護」以外は、”本人(被後見人等)の財産を何とかしたい”ための申立て。
あえて繰り返す。
成年後見は本人を守るための制度である。
本人が意思能力を失った後でも、人間らしく生きてもらうための制度だ。

 

グラフをもう一度見てほしい。
家族がお金を引き出すための制度のようではないか!
介護施設等の契約の安全を確保するためにも使われている。
守るべきは本人の自己決定権だとするとコレ、法の趣旨に沿っていると言えるか⁉
ぜんぜん別の目的のために使われているようにしか見えない。

 

■成年後見人は預金や保険金の受取代理人か⁉

法定後見という制度は、ずいぶん誤解されている。
というより、大半の人が「成年後見人」の実態を知らない、というのが現実なのではないか。
高齢者が身近にいない人が「その程度の認識」だというのは、まあ、仕方がない。
しかしこの問題と日常的に向き合う人、例えばケアマネジャーとか銀行や生命保険の前線にいる人たちまでが、正確な知識を持っていないのでは困る‼

 

「預貯金等の管理・解約」のために年間2万8千人もの人が後見開始の審判を申し立てている!
驚きだ、本当に。
「保険金受取」のためが2,692人、これもどうかしてる!
もちろん、どういう経緯でこういう申立てがあるのか、その理由は分かる。
<本人が病気になった、介護度が進んでいる。本人は預金を持っている、あるいは死亡保険金の受取人になっている。ならば”本人のお金”を本人の療養費に回そうじゃないか>
家族がそう考えることは悪いことではない。

 

ところが銀行の窓口では「本人以外、預金の解約はできません」と言う。
畳みかけて「本人に意思能力がなければ家族でも”代理”はできません」
「じゃあ、どうすればいいんです⁈」と気色ばむと、
「成年後見人を付けてください」と言われてしまう。

 

保険のコールセンターでも同じ。
判で押したように「その場合は成年後見人を・・・・・」。

 

■金融機関は後見制度を誤用している!

この対応、日本国中で行われているからこれに異を唱えるのは勇気がいるが、
私は「成年後見人の使い方を(金融機関側が)間違えている」と断言する。
本人に意思能力・判断能力が残っていない場合、本人を代理できるのは公的な代理人である成年後見人だけ、というのは法的な認識としては正しい。
でもだからと言って、本人の通帳(からお金)を動かすには成年後見人でなければだめだ、というのは短絡だ。

 

金融機関側の努力はどこに消えた?
お客さまのお金を預かっているという誇りと責任感はどこに行った?
自分で審査せず、お客さまに法定後見を使えというのは責任逃れではないのか?
銀行は、お客さまのお金の引き出しを認めるか否か、自行の判断で決めるべきだし、引き出しに伴う混乱が予想される場合そのリスクはお客さまにではなく、自行が取るべきである。
お客様側に後戻りできない、経済的にも、事務作業的にも、精神的にも大きな負担を強いる成年後見制度を「使いなさい」と言うのは、責任のすり替えである‼

 

金融機関自身が、「成年後見人は便利なワンポイントリリーフ」と勘違いしているのではないか。
その認識は大間違いだ。
人に「成年後見人を」とすすめるなら、制度の中身くらい知った上でにしてもらいたい。
そうでないと、被成年後見人の家族にとんでもないミスリードをすることになる!

 

成年後見人についてもう少していねいに説明しよう。
成年後見人のみが「意思能力を欠いた本人(被成年後見人)」の代わりになれる理由は、➀本人の身の上を守るためと、➁本人の財産を守るためだからである。
”本人のためにする”ということが大前提になっている。
成年後見人が本人の預金を(本人に代わって)引き出せる行為は、決して「家族に頼まれたからやってあげる」などという次元のものではない。
本人の療養費に充てる等の、本人を守る理由があるからこそできることなのだ。
この点、金融機関は”単純な本人の代理”、まさに銀行や生保が自ら判断するというリスクから守ってくれる”便利な代理人”と思っていることとは真逆の存在である。
法律が認めた「公的な代理人」である成年後見人が、実際には金融機関の(リスク回避)ために使われているというのは、法の精神が著しく曲げられた異常事態であると言わざるを得ない。

 

■大事な財産はすべて成年後見人が預る

成年後見人は、銀行や家族のために本人を代理して預金をおろしているわけではない。
だから引き出した現金を家族にホイホイ渡し自由に使わせる、などということは絶対にない!
本人の療養費に充てるのが目的で預金をおろしたなら、家族に触れさせることなく、施設側の通帳にそのまま振り込む。
もっと言えば、一定額以上の金額をおろすときには、成年後見人は家庭裁判所と相談してその許可を得てからその行為をする。
いちいち厳密な手続きを経て、お金を取り扱う。
個人財産が事実上国家管理下におかれるという”負担”を本人及び家族は抱えているわけだ。

 

だから、家族の誰かからの申立てによっていったん成年後見人が就任すれば、家族は本人の財産にアンタッチャブルになる(触れられないということ)。
▼預貯金通帳▼実印・銀行印▼印鑑登録カード▼年金関係書類▼保険証書▼有価証券▼重要な契約書類──などなど、本人に係る一切の財産、または大事なものはすべて成年後見人に預けられ、管理されることになる。

 

➀ワンポイントリリーフどころか、成年後見の事務は本人(被成年後見人)の事理弁識能力が回復するか、本人が亡くなるまで続く。
➁「用が済んだからお引き取り願う」などということはできない。
③家族の言いなりにならないから解任する、などというわがままも通じない。
④成年後見人のバックには家庭裁判所が控え、本人が不利益にならないよう目を光らせているからだ。

 

■職業後見人の費用は「月額2-6万円」

今でも多くの人が「成年後見人には家族が就任できる」と思っている。
それも誤解だ。現在の運用はそのようになってはいない!
平成27年統計では、配偶者や息子・娘などの親族が後見人になったのは29.9%
弁護士・司法書士・社会福祉士など職業後見人が就任したのが70.1%だった。
法定後見制度が誕生した当時の平成12年の統計では90.9%が親族後見人だった(弁護士は4.6%)から、完全に様変わり。
親族ではなく職業後見人に、という流れは後見人の不正が頻発している昨今、ますます強くなっていくだろう。

 

家族以外の人が成年後見人になれば「報酬」も発生する。
後見人の報酬については、家庭裁判所が発行する資料の中にはほとんど載っていない。
ただ、家庭裁判所立川支部が「成年後見人等の報酬額のめやす」という文書を平成25年1月に公表してるので、その数字を紹介しよう。

 

成年後見人等の報酬

 

月額換算、2万円-6万円、さらに後見監督人が介在すればその分の報酬も上乗せされる、というわけである。
またこの文書にはこんな説明もある。

成年後見人等の後見等事務において,身上監護等に特別困難な事情があった場合に
は,上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額の報酬を付加するものとします。

 

■成年後見人は辞めてくれない

余計なことをあえてていねいに説明したのは、金融機関の窓口等で
「それでは成年後見人を付けてください」
と言われて、「わかりました。成年後見人を付ければ(預金や保険金を)下ろしてもらえるんですね」と家庭裁判所に駆け込むほど気楽な制度ではないことを、ぜひとも知ってほしかったからだ。
誰に知ってもらいたいかと言えば、もちろん「家族」にだ。
さらには、ふだん「認知症や病気や事故で判断能力・意思能力が欠ける状態になったら成年後見人を」と言っている”この問題の最前線”にいる金融機関や介護・療養に携わる人たちに知ってもらいたい。

 

念のため申し添えておくが、私は成年後見人等の報酬を決して「高い」とは思わない。
後見人たちは常に「1円の単位」までゆるがせにせず後見対象者の財産を管理している。
また身上監護にも神経を研ぎ澄ましている。
その対価として、上記の金額は高くはないと思う。

 

しかし「事があったときのワンポイントリリーフ」のつもりで成年後見人を付け、その財産は家族に渡してもらえると思い込んでいた人にとっては、とてもとても大きなツケと感じられるはずだ。

 

■リリーフ扱いはとんだ誤解

以下は私見である────
法定後見制度の使い方が、本来の使い方あるべき姿とずれているような気がしてならない。
本人の家族たちが、▼「通帳を解約したい・預金をおろしたい」といったり、▼「死亡保険金を受け取りたい」というのも、ましてや▼「(本人のために)介護保険制度を使いたい」ということを、「それは家族の欲のためであり本人のためではない」と断じ切れるだろうか。
金融機関が、あるいは家庭裁判所が、《家族は本人の金を流用しかねない、だからあえて成年後見人を付け家族が干渉できないようにする》と考えてこの後見制度を使いなさいといっているのだとすれば、それは大きなお世話というものであろう。
”家族の自治”が信じられないなら、そもそもこの制度は成立しない。

 

私の両親は母も父も「要介護度5」。
父には意思能力があり「俺の通帳を使え」と言ってくれるので私は昨年1月、介護費用としてその通帳から施設に自動引き落としができるようにした。
両親がこういう状態になるとは、10年前には想像もできなかった。
想像できないことが現実になれば、家族は少なからず狼狽する。
費用負担のことものしかり『これからどうしよう』と思い悩む。

 

そんなときに施設から、「(患者さんに)意思能力がないんですか? それなら入所の手続きには成年後見人を付けてください」などと言われたら、私は激怒するだろう。
何が成年後見、何が家庭裁判所だ。
私以上に親を心配し、公明正大に親の財産を管理できる者はいない‼

 

■「後見促進法」という圧力

幸い静岡あたりでは、判断能力が衰えた家族の介護や医療のシーンで、そんなバカなことを言う施設も、病院もない。
家族がいるのに成年後見人の方を信用したり、行政の指示を盾にして契約から家族を締め出すような者たちはいない。
しかしこのまま行けば、この静岡県でも、そんなことを言い出しかねないような雰囲気を感じることがある。

 

杓子定規に法や省庁の通達を前に出せば、善良な家族は困惑するだけになろう。
私の経験を言えば、これまでは少なくとも私の周囲では、母のことも父のことも病院や施設は私に判断を求め、私の意向に沿って手続きを進めてくれている。
ところが、介護施設などは県の指定・許可がなければ開業できないなので、「成年後見制度普及」のために厚労省や行政などが「使え、使え」と言い始めると、家族を差し置いて「成年後見人を付けてください」と言い出しかねない。

 

たいていの人は記憶にないと思うが(メディアに報じられることもなかったから)昨年5月、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行されたのである。
こんなに使いにくい、法律バカたちがガチガチ運用をしてますます利用しにくいようにしている成年後見制度を、利用促進させようというのだ。
お上に弱い施設たちは、言われれば今までの対応をがらりと変え「これからは成年後見人を付けてください」と言い始めるかもしれない。
まことに憂慮に堪えない。

 

この法律を作った国会議員たちは、介護や医療現場の現実をいかほど知っているというのだろう。
そんなことを思うので、この記事がどんどん長くなってしまう……。

 

■成年後見人は手術や延命判断をしない

◇成年後見制度でできないこと
これも公的後見に対する重大な誤解なので注釈しておく。
「医療行為」に成年後見人が同意することはできない‼

医療行為とは、歯科治療やインフルエンザの予防注射など簡単なことから、手術や延命措置などまで広範囲に及ぶが、本人に対する医療侵襲行為に対する判断は本人固有のものであり、代理権等の及ぶものではない。──一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター

 

成年後見人になるための研修会で、行政書士はこのように指導を受ける。
”本人固有の権利”と言われれば、家族であっても判断はできないのだ。
家族と昨日今日成年後見人になった者とでは、本人との交流の歴史が違う。
だから医療側は、本人に意思能力がない場合、家族に「どうしますか?」と聞くわけだが、家族が身近にいない場合も少なくない。
その場合は、医療側の多くが成年後見人に許諾を求める。
(医療側としてはどうしても誰かに責任を負ってもらいたいのだ)

 

しかし、成年後見人は判断してはならない、とされている。
家族はおらず、成年後見人も判断してくれない、ではそんな場合医療側はどうすべきなのか?
医の倫理に従って、あるいは医師としての信念において対応するしかない。
成年後見人よりはるかに重い責任を医療従事者は負っていることになる。

 

■家族より成年後見人の判断は正しいか⁉

この話を援用すると、先ほどオレンジの文字で示した介護施設の言い分がひどく的外れであることがお分かりいただけると思う。
施設に入居したいかしたくないかは本人の一身専属的な問題なのだ。
しかし本人に意思能力はない。
施設としては誰かと、本人に代わってくれる誰かと、契約を結びたい。
その場合の契約相手が、身近にいる家族より成年後見人の方がふさわしいというのは法律バカの所業というほかないが、先ほど書いたように「促進法」の施行で施設側は「成年後見人に」と豹変しないとは限らない。。

 

しかし「促進法」が何と言おうと、こういう現実があるのだ。

 

家族も成年後見人も本人専属の事項は代理できない。
できないことを無理やりやる場合、「成年後見人なら(民法に則る限り)大丈夫」と思い込むのは勝手だが、現実を少し深く掘り下げれば、そんなものは机上の空論に過ぎないことはすぐに論破できる。

 

考えても見よ!
成年後見人が「よろしい」と言って施設に入ったときに、本人に不測の事態が起き死亡したら、成年後見人は責任を取るのだろうか。
後見人の後ろ盾になっている家庭裁判所は後見人の判断を追認したことに対する責任を負ってくれるのか。
100%、そんなことにはならないだろう。
「その時点での入所させる判断は正しかった」と断じられるだけのことである。
だから家族に代わって成年後見人に判断させるようなこんな運用は、あってはならない。

 

■だまし討ちみたいに後見に誘うな!

もうひとつ、金融機関の窓口での対応についても私見を述べたい。
父親の通帳と印鑑を家族が預かっている場合のこと。
父親の認知症が誰から見ても明らかになると、銀行で預金を引き下ろしたり預金を解約するのは難しくなる。
あるいは生命保険。
父親が死亡し母親が死亡保険金の受取人になっていた場合、母が著しく意思能力を喪失していると家族の誰かが母に代わって受取請求をすることになるだろう。
その場合に窓口で、「成年後見人を付けてください」と言われれば、『そんなものか』と後見の審判を申立てる気になるかもしれない。
なにしろ大金の収受がかかっているのだから。

 

申立ての相談があると家庭裁判所では、ていねいに成年後見の制度について説明してくれる(はずだ)。
▼本人を守るための制度であること、▼申立てしたら取り消せないこと、▼必ずしも家族が成年後見人になれないこと、▼家族が後見人になったとしても主な財産は信託銀行に預けられることになり後見人の自由裁量でお金の出し入れができるわけではないこと(1回ごとに家裁に上申書を提出して許可を求めることになる)──などなど。

 

(はずだ。)とカッコ書きにした理由は、私には家庭裁判所がそのように対応してくれた記憶がないからだ。
少なくとも私が家庭裁判所に行った時にはそんなていねいな説明は受けなかった。
パンフレットをもらい、別室でビデオを見せられただけ。
被後見人の財産が「後見支援信託」として信託銀行に預けられて管理される、ということを説明するビデオだった。

※私がこの記事で諸々「成年後見という制度の使いにくさ」を強調している個所は、制度の運用に疑問をもっていろいろ調べて分かってきたことである。

 

家庭裁判所がていねいな説明をしてくれたとしても、申し立てる気になっている人は、保険金を受け取りたい一心で気持ちが固まっている。
また普通の人が、裁判所で成年後見制度についてあらためて説明されたところで、本当のところ、イメージがわかないのではないか。
まさかそれほど使いにくい制度であるとは思っていないで見聞きするので、その重要さにはなかなか気づきにくい。
その結果、通帳からお金を引き出したい、保険金を受け取りたいというだけのことで、成年後見の申し立てをしてしまう人が年間3万1千余人にも上る‼
これは不正義だ、と私は感じている(だまし討ちみたいではないか)。

 

■金融機関は後見人に丸投げするな

「悪い家族」は本人の意思能力・判断能力がないことをいいことに、本人のお金を勝手に使うために通帳から金を引き出したり、大金である保険金を受け取ろうとしているのかもしれない。
そういう悪い家族がいることを私は否定はしない。
しかし法定後見制度は、入り口でこのような悪い家族の思惑を砕くためにあるのだろうか?
そうではなく、本人の身上を守る、本人の財産を守る、そして、本人の残存能力を尊重し本人らしく生きてもらうためにこそ、この制度はある。

 

この制度は元々、後見開始を申し立てる家族に強い覚悟がなければ成り立たない制度だ。
本人を守るために家族ができることは何か、どうしても成年後見人に頼らなければならないとしたらどんなことを頼むのか、よくよく熟慮して申立てをすべき制度なのである。
今お金が必要だからと、”簡便な代理人”のつもりで成年後見人を使うような制度ではない。

 

金融機関は人から大事なお金を預かっている。
こういう時代だから預けた本人が意思能力を失くしてしまうことは普通にあることだ。
その時の対応を法定後見制度に丸投げするのは間違っている‼
それでは金融機関の役割を果たしていない、利用者に寄り添っていない。
自行の安全のために法定後見という「制度」を借りて、厄介な自己判断を投げ出しているとしか言いようがない。
お客様に事情を聴いて、ひとつひとつていねいに銀行自身が解決策を見出すべきなのだ!

 

それはとんでもなく大変なことではない。
成年後見人が通帳から金を下ろしたときにその金をどのようにするかを書いたこの文章を思い出してほしい。

本人の療養費に充てるのが目的で預金をおろしたなら、家族に触れさせることなく、施設側の通帳にそのまま振り込む。

私が銀行に言いたいことの「答え」はここに書かれている。
なにも成年後見人に頼らなくても、この案件をうけた金融機関はお客さまに個別に事情や常況を聴取して、金の使途に納得がいったら上記赤い文章のように対応すればいいだけである。

 

■保険金、1000万円までなら後見人不要

生命保険についても同じことが言える。
私が調べた限りでは、死亡保険金の金額が1000万円以下の場合、受取人が意思能力を失っていたとしても受取人の口座に入金することを条件に、受取人の親族による請求を認めている。
「1000万円まで」の基準の根拠がどこから来ているのか特定はできなかったが、ここまでの柔軟性が保険会社にあるのなら、「1000万円以上」についても個別に対応する方法はあるはずだ。

 

法定後見制度は利用する側に大きな負担を負わせる制度である。
金融機関のリスク回避のためにこの制度に個々のケースを丸投げして、家族に思わぬ負荷をかけることは許されない。

 

■認知症対策、「成年後見」だけではない‼

家族が認知症となり困惑の日々を送っている人は、私が書いたこの文章を何度でも読み返してほしい。
そして銀行に言われたから、保険会社に言われたからと家庭裁判所に駆け込まないで‼
ひとり決めは禁物だ。
相続のことや認知症問題、成年後見制度についてよく知っている専門家に必ず相談してほしい。

 

さらに蛇足を付け加えるなら、認知症の問題は、その傾向が見られたすぐに「対策」を考えた方がいい。
初期症状は必ず現れる。
アルツハイマー型の認知症は今のところ完全治癒は難しいものの、進行を遅らせることは可能だ。
そしてこの段階ならまだ、認知症に伴って起こるであろういろいろな問題について手を打つことができる。

 

認知症が完全に進んでしまった場合、確かに本人を代理できる人は成年後見人に限られてしまう。
しかし皆さんとっくにご存知だと思うが、認知症の人がいる家族でも、成年後見人を付けずに本人の生をまっとうさせた家族は数多く存在する。
(むしろそういう家族が大半である)
その一方、本人の認知症をいいことに本人の財産を勝手に使う”老人虐待”を行う家族も少なくない。
しかしあなたが公明正大な人なら、後見制度を使わずに本人の終末期を支えることは可能だ。

 

■重要な契約案件、成年後見人は無力だ

ただし、本人が会社の経営者であったり、収益不動産のオーナーであったり、何か重要な契約の当事者であった場合、家族では本人を代理できない。
では成年後見人を頼むのか?
違う! 成年後見人が代理できる範囲もまた、限られている。
どんなことでも本人の代理ができるわけではないのだ。

 

考えてもみてほしい。
本人が進めている重要なプロジェクト。
いくつも契約しなければならないことが残っている。
例えば銀行からの借り入れ、成否を握る製品の形状・材質・デザインの決定。
本人の意思こそがプロジェクト進行のカギを握っている。
そんな場合に成年後見人が代打のように登場し、たった1つでも重要な判断事項を決することができるだろうか。
成年後見人のその決定を、家庭裁判所は勇気をもって認めることができるか⁈

 

法律家では100%無理である。
事業は法律を知っていることとは違う。
かくしてそのプロジェクトは?
本人の認知症深刻化により後見の審判を申し立てた瞬間にプロジェクトは凍結されてしまう。

 

こんなことまできると私たちはリアルに思っているわけではないが、何となく「なんでもやってくれる切り札が成年後見人」のように思っている人が多い。
だから「いざとなったら頼めばいい」と思いこんでいるのだが、現実には成年後見人でもできないことの方が多く、事態が凍結状態になって初めて『こんなはずでは……』とほぞをかむことになる。
だから重大事項を抱えている人(や家族)は、事前に成年後見制度を研究し「限界」を知っておかなければダメだ。
できないことがいくつもあるというより、現実には単純な金銭の出し入れ(それも家庭裁判所の監視付きで)くらいしかできない、と思っていた方が事実に近い。

※後見制度でできることは、コチラに書いた。
★法的後見制度で「やってもらえること」のすべて!

 

■認知症対策なら「民事信託」がベスト‼

認知症対策の切り札だと多くの人が思っている成年後見制度の限界を私はとうとうと述べた。
では、どうしろというのか⁈
認知症問題を切実に感じている人なら、問いたくなるだろう。

 

私の答えは「信託という方法がありますよ」である。
法定後見制度は、民法で規定している「代理」という法理に基づいている。
その元にあるのは「本人の意思」だ。
「誰々に私の代理をしてもらう」という本人の意思が大事。
これがなければ「代理」は意味をなさない。

 

で、本人が意思能力を喪失した場合───
もう「代理」はあり得ないのだ、としたら多くの問題が行き詰まってしまう。
そこで「代理権を法定するため」に後見制度が”新設”された。
法定とはいえ、何でも代理できると権限が大きくなりすぎ権利関係を複雑化しかねないので、できることは大幅に制限されている。
いや、契約事項は星の数ほどもあり、判断基準もひな形をつくるような簡単なものではないので、(いくら法律知識があっても)本人でない者には代理は不可能なのだ。

 

これに対し、信託は平成19年9月に新信託法を施行。
「代理」の法理ではなく、「名義」を変えるという方法で、本人の財産を託された者(受託者)に本人と同様の”所有”に関する権限を与える。
文章にすると非常に分かりにくいが、民法的な発想とは異なる法理でできていると思ってほしい。
(今後このブログで民事信託について多くの記事を書くつもりだ)

 

■これが「家族信託」のひな形だ‼

この法律により、本人が意思能力をなくす以前に契約しておけば、本人の所有に関する権利の多くを受託者に委ね、本人が病気や認知症などによって意思能力を喪失した後でも、「信託の目的範囲内で」受託者が本人に代わって(契約で定められた)本人の意思を実行することができるようになった。
「信託」というと投資信託など投資商品の一部と思われがちだが(これを「商事信託」という)、民事信託は商事信託とはまったく違う。

 

例えば認知症が心配な父親を委託者…………
イラストを見てもらった方が早そうだ。

実家の信託のイラスト

お父さんの認知症が心配になってきた姉妹ふたりの提案で 信託契約が結ばれた例。
委託者はお父さん(まだ認知症)ではない。
受託者 長女
受益者 父(この信託によって実質的な利益を得る人) 
第2受益者 母(夫がなくなったら受益権を引き継ぐ人)
受益者代理人 妹(父の認知症が進む過程で父の意向を受託者に要求する人)
信託の目的 父の認知症がひどくなったときには実家を売却し、その売却益で父と母を介護付き住居に住まわせる。

 

この信託を締結しても両親は今まで通り自宅に住み続けるだけ(委託者がそのまま受益するので税金はゼロ)。
受託者である長女も、当分は固定資産税を信託財産から払い込むだけ。
父の認知症が看過できなくなったら、受託者は自宅売却に奔走。その益金で両親を新たな住まいに移ってもらう。父親がやがて亡くなったとしても信託は終了せず、母は受益権を引き継ぐ(税務的にはここで相続税が発生)。
母が亡くなったら信託は終了。
残った財産は「残余財産」として姉妹ふたりが受け取る(あらかじめ契約書に「残余財産帰属権利者」として姉妹の名を書いておく)。

 

長くなったのでこれ以上、民事信託について書くことは控える。
このイラストのように、委託者、受託者、受益者という3人の当事者が「家族」である場合が多いので、このような民事信託を「家族信託」ということが多くなってきた。
家族信託は成年後見制度と違い家庭裁判所が登場して来ることがないので、契約書という”シナリオ”に沿って何をするかを当事者間で自由自在に決めることができる。
財産の所有名義を契約時点で「委託者」から「受託者」に換えるので、受託者は契約の当事者として(この場合は「実家」という不動産を)改修したり売ったりすることができる。

 

成年後見よりダンゼン自由度が高く応用が利くので、私も認知症対策の重要なツール(方法)として最近は、遺言・任意後見制度を使う方式から「家族信託契約」を採用する場面が多くなってきた。先日はアメリカからのメールに応え、何回も何回もメールでやり取りをして(依頼人が来日した日に合わせ)静岡の公証人役場で「実家の信託」の契約書を締結することができた。
(いずれこの間の経緯はブログにアップするつもりだ)

 

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ジャーナリスト石川秀樹相続対策の総合プロデューサー行政書士

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