★使ってはいけない「成年後見」! 本人の財産を厳重に管理、家族の思惑は通らない

「成年後見人」
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成年後見人の使い方を多くの人が間違えています。金融機関でさえも!
法定後見制度は負担の大きい制度です。
本人の身の上と財産を守るための制度であって、本人の周りにいる人(例えば家族)の都合や金融機関の安全のためにある制度ではありません!
成年後見人は”一時的な便利な代理人”ではないのです。
この肝心な点を間違えて後見開始の審判を申し立てると、「こんなはずじゃなかった」とほぞをかむ人が出てきてしまいます。

 

成年後見人を使う」などと失礼な表現をしてしまいました、ごめんなさい。
しかし、多くの人がこういう感覚なのではないでしょうか。

 

■申立て理由1位「預貯金」

最高裁判所は毎年、「成年後見事件の概況」という資料を発表しています。
”事件”というので大げさに聞こえますが、利用状況の統計です。
最新の平成27年版で私が注目したのは「資料7」です。
主な申立ての動機別件数───

 

後見開始の申し立て理由

 

字が小さくて読みにくいですが(発表資料をコピペしました)、
対象は「成年後見・保佐・補助」の法定後見と、任意後見の申立て件数です。
1位は「預貯金等の管理・解約」。ダントツの2万8千余件。
2位は「介護保険契約(施設入所等)のため」。1万件を超えています。
以下、▼身上監護▼不動産の処分▼相続手続き▼保険金受取──と続きます。

 

「身上監護」を除けば、すべて単発の”困り事”のための申し立てでした。
また「介護保険契約(施設入所等)のため」と「身上監護」以外は、”本人(被後見人等)の財産を何とかしたい”ための申立て。
あえて繰り返します。
成年後見は本人を守るための制度です。
グラフをもう一度見て下さい、申立ては本人のためでしょうか?
”財産を何とかしたい”という家族の都合ではないですか?

 

■かくも誤解されている成年後見!

法定後見という制度は、ずいぶん誤解されています。
というより、大半の人が「成年後見人」という名前を知ってはいても、その内容までは知らない。
高齢者が身近にいない人が「その程度の認識」というのは、まあ、仕方ないとは思います。
でもこの問題と日常的に向き合う人、例えばケアマネジャーとか銀行や生命保険の前線にいる人たちまでが、正確な知識を持っていないというのでは困ります。

 

「預貯金等の管理・解約」のために年間2万8千人余の人が後見開始の審判を申し立てている!
驚きです、ほんとうに。
「保険金受取」のためが2,692人、これも「どうかしてる!」と思える数字です。
申立てする理由は分かるんですよ。
本人が病気になった、介護度が進んでいる。本人は預金を持っている、死亡保険金を受け取れる立場でもある。それなら”本人のお金”を本人の療養費に回したい。
家族としては当然、そう考えるでしょう。

 

ところが銀行の窓口で「本人以外、預金の解約はできません」といわれる。
「本人に意思能力がなければ家族でも”代理”はできません」
「じゃあ、どうすればいいんです⁈」と気色ばむと、
「成年後見人を付けてください」と言われてしまう。

 

保険のコールセンターでも同じです。
判で押したように「その場合は成年後見人を・・・・・」。

 

■ワンポイントリリーフに非ず!

この対応、日本国中で行われているからこれに異を唱えるのは気が引けます。
しかし私は「成年後見人の使い方を間違えている」と思います。
本人に意思能力・判断能力が残っていない場合、本人を代理できるのは公的な代理人である成年後見人だけ、というのは正しい。
でもだからと言って、本人の通帳(のお金)を動かすには成年後見人を使いなさい、と一直線にここまで行ってしまうというのは「使い方がおかしい」としか言いようがありません。
銀行にできる方法は他にもあるはずです。

 

なぜこんなことを言うのかというと、
銀行窓口の関係者の多くが、「成年後見人は便利なワンポイントリリーフ」のような認識でいるのではないかと推測されるからです。
その認識は違います。
人に「成年後見人を」とおすすめする立場の人は、この公的後見制度のことをもっとよく知ってください。
そうでないと、人をとんでもない方向にミスリードしてしまいます!

 

もう少し説明しましょう。
成年後見人のみが「意思能力を欠いた本人」の代わりになれる理由は、本人の身の上を守るため、あるいは本人の財産を守るためだからです。
成年後見人が本人の預金を(本人に代わって)引き出せるのは、「家族に頼まれたからやってあげる」などという次元ではなく、(本人の療養費に充てるなどの)本人を守る理由があるために行うことだからです。
法律が認めた公的な代理人だからできる、のではなく、本人を守るための一定の理由があってする行為だから許されているのです。

 

だから、預金をおろして家族にホイホイ引き渡すなどということは絶対にありません!
本人の療養費に充てるのが目的で預金をおろしたなら、家族には触れさせることなく、施設にそのまま振り込みます。
もっと言えば、一定額以上の金額をおろすときには、成年後見人は家庭裁判所と相談してその許可を得てその行為をします。
いちいち厳密な手続きを経て、お金を取り扱っているのです。

 

だから、家族の誰かからの申立てによっていったん成年後見人が就任すれば、家族は本人の財産にアンタッチャブル(触れることもできないということ)になります。
▼預貯金通帳▼実印・銀行印▼印鑑登録カード▼年金関係書類▼保険証書▼有価証券▼重要な契約書類──などなど、本人に係る一切の財産は成年後見人に預けられ、管理されることになります。

 

ワンポイントリリーフどころか、成年後見の事務は本人(被成年後見人)の事理弁識能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。
「用が済んだからお引き取り願う」などということはできません。
家族の言いなりにならないから解任する、などというわがままも通じません。
成年後見人のバックには家庭裁判所が控え、本人が不利益にならないよう目を光らせているからです。

 

■月額2-6万円は掛かる制度

今でも多くの人が「成年後見人には家族が就任できる」と思っています。
それも誤解です。
平成27年統計では、配偶者や息子・娘などの親族が後見人になったのは29.9%
弁護士・司法書士・社会福祉士など職業後見人が就任したのが70.1%でした。
法定後見制度が誕生した当時の平成12年の統計では90.9%が親族後見人でした(弁護士は4.6%)から、完全に様変わり。
親族ではなく職業後見人に、という流れは後見人の不正が頻発している昨今、ますます強くなっていくでしょう。

 

家族以外の人が成年後見人になれば「報酬」も発生します。
後見人の報酬については、家庭裁判所が発行する資料の中にはほとんど載っていません。
ただ、家庭裁判所立川支部が「成年後見人等の報酬額のめやす」という文書を平成25年1月に公表していますので、その数字を紹介します。

 

成年後見人等の報酬

 

月額換算、2万円-6万円、さらに監督人が介在すればその分の報酬も上乗せされる、というわけです。
またこの文書にはこんな説明もあります。

成年後見人等の後見等事務において,身上監護等に特別困難な事情があった場合に
は,上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額の報酬を付加するものとします。

 

■正当な報酬が高く感じられる理由

余計なことをあえてていねいに説明したのは、金融機関の窓口等で

「それでは成年後見人を付けてください」

と言われて、「わかりました。成年後見人を付ければ(預金や保険金を)下ろしてもらえるんですね」と家庭裁判所に駆け込むほど”お気楽な”制度ではないことを知ってもらいたかったからです。
誰に知ってもらいたいかと言えば、もちろん家族の方。
さらには、ふだん「認知症や病気や事故で判断能力・意思能力が欠ける状態になったら成年後見人を」と言っているこの問題の最前線にいる金融機関や介護・療養に携わる人たちにです。

 

念のため申し添えておきますが、成年後見人等の費用は決して「高い」とは思いません。
後見人たちは常に「1円の単位」までゆるがせにせず後見対象者の財産を管理しています。
また身上監護にも神経を研ぎ澄ましています。
その対価として、上記の金額は高くはないのです。

 

しかし「事があったときのワンポイントリリーフ」のつもりで成年後見人を付け、その財産は家族に渡してもらえると思い込んでいた人にとっては、とてもとても大きなツケと感じられるはずです。

 

■「あるべき姿」とずれた使い方

以下は私見です────
法定後見制度の使い方が、本来の使い方あるべき姿とずれているような気がしてなりません。
本人の家族たちが、▼「通帳を解約したい・預金をおろしたい」というのも、▼「死亡保険金を受け取りたい」というのも、ましてや▼「(本人のために)介護保険制度を使いたい」というのも、家族の欲のためであって本人のためではない、と断じ切れるでしょうか。
家族は本人の金を流用しかねない、だからあえて成年後見人を引っ張り出して、以後、家族が干渉できないようにする(そこまで考えてやっているとは思いませんが、結果的にはそうなります)というのは、大きなお世話が過ぎると思うのです。

 

私の両親は母も父も「要介護度5」です。
父には意思能力があり「俺の通帳を使え」と言ってくれるので、介護費用としてそこから施設に自動引き落としできるようにしています。
両親がこういう状態になるとは、10年前には想像もできませんでした。
家族は少なからず狼狽します。
『これからどうしよう』と思い悩みます。

 

そんなときに施設から、「(患者さんに)意思能力がないんですか? それなら入所の手続きには成年後見人を付けてください」などと言われたら、私だって家庭裁判所に駆け込むかもしれません。
幸い、静岡あたりではそんなことを言う施設はありません。
家族がいれば、家族の意向をまず聞いてくれるし、その意向に沿って手続きは進みます。

 

しかし金融機関の窓口で、父の通帳と印鑑を持っていったのに手続きが進まない、としたら。
あるいは(これは仮定の話ですが)、父が死亡し母が死亡保険金の受取人になっていた場合、そして母は意思能力を喪失していたとすると、私が代わりに受取請求する可能性はかなり高くなるでしょう。
その時「成年後見人を付けてください」と言われれば、『そんなものか』と厄介だとは思いながらも申立てる気になるかもしれません。

 

申立ての相談があると家庭裁判所では、ていねいに成年後見の制度について説明してくれます。
▼本人を守るための制度であること、▼申立てしたら取り消せないこと、▼必ずしも家族が成年後見人になれるとは限らないこと、▼家族が後見人になったとしても主な財産は信託銀行に預けることになり後見人の自由裁量でお金の出し入れができるわけではないこと(1回ごとに家裁に上申書を提出して許可を求めます)──などなど教えてくれるでしょう。

 

ところがこちらは保険金を受け取りたい一心。
また普通の人が、裁判所で上のようなことを説明されてもイメージがわかず、その重要さにはなかなか気づけません。
その結果、通帳からお金を引き出したい、保険金を受け取りたいというだけのことで成年後見の申立人が年間3万1千余人にも上る結果になっています。

 

■金融機関は自ら判断すべきだ

”悪い家族”は本人の意思能力・判断能力がないことをいいことに、本人のお金を勝手に使うために通帳から金を引き出し、保険金を受け取ろうとしているのかもしれません。
そういう”悪い家族”がいることを否定はしませんが、入り口で彼らの思惑を砕くためにこの制度はあるのでしょうか。
そうではなく、恒久的に本人を守るためにこの制度はあります。

 

この制度は、後見開始を申し立てる家族に強い覚悟がなければ成り立たない制度です。
本人を守るために家族ができることは何か、どうしても成年後見人に頼らなければならないとしたらどんなことか、よくよく熟慮して申立てするかどうかを決める制度です。
今お金が必要だからと、”便利な代理人”のつもりで成年後見人を使えるような制度ではありません。

 

金融機関は人から大事なお金を預かっています。
こういう時代だから預けた本人が意思能力を失くしてしまうことはあり得る。
その時の対応を法定後見制度に丸投げするのは間違っていると思います。
それでは金融機関の役割を果たしていない、利用者に寄り添っていない。
自社の安全のために「制度」を借りて、厄介な自己判断を投げ出しているとしか思えません。
お客様に事情を聴いて、ひとつひとつていねいに解決策を見出すべきです!

 

成年後見人に頼らなくても、この案件を金融機関独自の判断で解決する知恵は必ずあります。
(そのことについては次回、詳しく書きます)
この制度は家族に深い理解と後見行為に対する強い信頼がなければ機能しません。
お金の処理のために第三者が制度に誘導するようなことは、あってはならないことです。

 

相続対策の総合プロデューサー 石川秀樹ジャーナリスト行政書士)>

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ABOUTこの記事をかいた人

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。 40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。