★相続税の計算、アプリで楽々!! 実用レベルの使いこなし術

「相続税の計算アプリで

 

相続税の計算は複雑。そこで「プロにお願いしようか」となりますが、料金がちょっと・・・・。
”入り口無料”の場合もあるけれど、「後で営業をかけられたら」とかえって心配になります。
ご安心ください。アプリがあります !!
簡便、らくらく、しかも無料でヒモ付きなし。
コレを使わない手はないです。
でも使う前に、「相続税の計算に使う数字」について少しだけ説明させてください。
誤まった数字を入れると見当外れな結果が出てしまいますから。

 

■「あんしん相続」というアプリ

今回使うアプリはコレです。
相続税対策を考えるとき、相続税がいくらかかるか計算するのは基本中の基本。
それもササッと片付けたいですよね。
というわけで「使えるアプリ」をずっとiPhoneで探していました。

あんしん相続アプリ


私が探していたのは、「実用レベルで使える」アプリです。
帯に短したすきに長し、不正確なもの、有料なのに何の役にも立たないものが多かったのですが
永井コンサルティング(株)が作成したアプリ、これは使えます!
Appストアのアプリで「水準を超えている」と思えたのはこれだけでした。

※アンドロイド版もあるようです。

 

■「配偶者の取得割合」にご注意!

はじめにこのアプリ「あんしん相続」の使い方をざっと説明します。
使い方自体は簡単ですが、入力する数字は少々説明が必要です。
その都度ミニ解説をするとともに、後でまとめて「相続税の計算に使う数字」について解説します。

相続人の設定

 

まず「相続人」を入力します。
デフォルト(初期値)は、配偶者有り(1人)。
配偶者がいない場合は「―」をタップして「0人」にします。

 

ここでの注意点は赤い矢印で示した「配偶者の取得割合」です。
デフォルトは「100%」に設定されています。
これに「被相続人の子」を「1人」とか「2人」と入力すると、自動的に「50%」に移動します。
つまり配偶者の法定相続分に設定されるわけです。

※しかしこのスライドバーは「前回のシミュレーション」に引きずられるクセがあるようで、うまく動かない場合があります。その時は手動で「適切な位置」に動かしてください。

◆「適切な位置」というのは、
相続人が[配偶者と子]なら50%
[配偶者と親]なら67%
[配偶者と兄弟姉妹]の場合は75%です。
勘の良い方はお分かりと思いますがこの数字、法定相続人の順位(子1位、親2位、兄弟姉妹3位)に応じた「配偶者の法定相続分」を表しています。
こうすることによって、A家の相続税総額を導き出すことができます。

 

この後は▼不動産▼有価証券▼預貯金▼生命保険等▼その他▼債務等のページを開いて順に金額を入れるだけです。

 

■「数字の意味」こそ重要です

それでは「正味の遺産総額」が1億円の「A家」の相続税総額を計算してみます。
遺産の細目は以下の通りです。

土地 4000万円
家屋 1000万円
上場企業の株 1000万円
現金と預貯金 3000万円
生命保険 2000万円

不動産の価額を入力

 

不動産価額の評価は、実際には専門知識が必要になるところです(土地の評価いかんで相続税額に100万円、1000万円級の差が出ることもあるくらい)。
通常は「路線価(単位:千円)✕面積(㎡)」か「固定資産税評価額✕倍率」でおよその数字を入れます。
分からなければ「実勢価格✕0.7」で、当たらずとも遠からずの数字になります。

 

ここでもっと大事なのは、あなたが相続で「小規模宅地の特例」を使うかどうかです。
この特例を使えるなら、自宅の土地は(一定面積まで)8割引きか5割引きで計上できます。
相続では超有名な特例なので、ご存じなかった人は上の行のリンクをたどってください。
肝心なのは、この特例を使う場合はココで「割引きした価額」を入力する、ということです。

※今回の解説では「小規模宅地の特例」は適用しませんでした。ですから「4000万円」は何も手を加えていない数字です。もしこの土地に「小規模宅地の特例」を適用するなら「0.5または0.2」を掛けた数字を入力すべきです(最大80%減額ですから宅地の評価額は一気に20%になります。念のため)

 

次は有価証券。上場株式は現在の株価でOKです。
とかし非上場の株式は難題です。
自社株式が多いと思いますが、会社の業績が永年にわたってよい場合は(税務上)とんでもない高値の評価を受けることがあります。
そういう株をお持ちの方はこのアプリを使って試算するより、今すぐ非上場株式の価値を計算できる専門の税理士を探して、相続税対策をすべきです。
すでに株価をご存知の方はその数字を入れてください。

 

■「生命保険」の非課税枠に注意!

次の「預貯金」は、現金と預貯金についてそのままの数字を入れてください。
「生命保険」もそのままの数字を入れて大丈夫です。

6生命保険

 

ただし「生命保険」については、重要な注意点があります。
生命保険の死亡保険金は相続税の課税対象ですが、大きな”特典(非課税枠)”があります。
[500万円×法定相続人の数=非課税限度額]
上の式のように、法定相続人1人につき500万円が非課税となります。

 

この相続では法定相続人が3人いますから、1500万円が課税価額から減額されます。
つまり、上図のように2000万円の生命保険の場合、実質的に相続税がかかるのは500万円だけです。
しかし入力する金額は「2000万円」のままにしておいてください。
アプリが「1500万円」の減額を織り込んで自動的に計算しますから。

※なおこの特典があるのは、亡くなった方が自らを「被契約者」として契約し、保険金の受取人を法定相続人にした生命保険だけです。

 

次に「その他」の入力項目があります。
これが意外にクセ者でして・・・・
その他

主な入力項目としては、ゴルフ会員権など「その他の財産」と「暦年課税の生前贈与(相続開始前3年以内)財産」「相続時精算課税による生前贈与財産」ですが、もう一つ「家財一式」という項目があり、ここにデフォルト値として「10万円」が入力されています。
実際の相続税計算のときには「家財一式」は加えるべきですが、単純に「この家の相続でかかる全体の相続税額」を知りたいときにはこの「10万円」のおかげで端数が出てきてしまいわずらわしくなります。
ですから、通常の計算の折には「10万円」は削除してください。

 

最後は「債務」です。
ここには「借入金」「未払金」「債務」などマイナスの財産を入力してください。
また「葬式費用」や「祭祀財産」には相続税がかからないので、この金額もこちらに書いてください。
ここに書いた数字は、相続税対象価額から差し引かれて計上されます。

 

■配偶者の税額は常に「ゼロ円」⁉

以上を入力すると自動的に「A家の相続税の合計額」が出てきます。

シミュレーション結果

 

このようにA家の相続で支払うべき相続税額は「206万円」であることがわかります。
残念ながら相続人ごとの税額はわかりません。
とは言え、答えは単純です。
配偶者は「ゼロ円」。
ですから「206万円」は2人の子が支払うべき税額です。

 

なぜそうなるかと言うと───
赤い線の枠で囲った注釈を思い出してください。
バーを操作することにより、配偶者の相続する分は「法定相続分通り」に設定しています。
すると、相続税において最も有名で価値がある特例がフルに効果を発揮します。

 

配偶者の税額軽減の特例」です。
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、以下の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからない、という大特典です。

(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額

 

そうなんです。
亡くなった方の配偶者は、法定相続分以内の財産を相続するなら、その額が100億円だろうと1000億円だろうと、相続税は1円もかかりません。
法定相続分を超えて相続しても(例えば「全財産」)、その額が1億6000万円以下なら非課税です。

 

■相続人別に数字を読むコツ

だからバーを赤枠の割合で設定して計算すれば、常に配偶者の税額は「ゼロ円」。
表示された税額は配偶者以外の相続人の税額ということになります。
今回は2人。
この2人が[甲:乙=3:2]で相続したとすると
甲 206万円✕3/5=123万6000円
乙 206万円✕2/5=82万4000円

 

この「あんしん相続」というアプリは大変優れているので、バーの位置を移動して配偶者の相続分を増減しても「全体の相続税額」を計算してくれます。
配偶者の相続分を法定相続分より減らしていくと、相続税総額は漸増していきます。
逆に配偶者の取り分を多くすれば、相続税総額はみるみる減っていきます。
この現象は、配偶者が実際に取得する正味の遺産額が「1億6000万円」までの間は続き、配偶者の税額は「ゼロ円」ですから相続税総額は配偶者以外の相続人の税額を現しています。

 

このアプリを使えば、相続税の計算方法をまったく知らなくても実用レベルのシミュレーションができるようになります。

相続税の計算方法を知りたい場合はコチラ ↓ をご覧ください。

[kanren postid=”1477″]

また、今回は長くなるので説明をしませんでしたが、実はアプリの説明以上に重要なのは、「本当に相続税の課税対象になる財産は何で、実際に税額計算に使う数字(税務上の価値の額)はどうであるか」ということです。
それについてはあらためて記事を書くつもりですが、「正味の遺産額」等を知りたい方はとりあえずコチラをご覧ください。

[kanren postid=”1469″]

 

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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