遺留分とは分かりやすく言うと、被相続人(亡くなった人)の遺言によって他の人に与えられた財産を、法定相続人が自分で取り返すことが出来る分で、おおむね法定相続分の1/2です。
遺留分という観念は、遺言書がなければ生じません。
遺言書がないと被相続人(亡くなった人)の遺産は法定相続人全員による「遺産分割協議」を行い、相続する額を決めます。
だから「分割協議でもらい分が少なかったから不満である」と遺留分を請求することはできません。
分割協議は全員一致で決めて初めて効力が生じるものですから、不満を抱えたあなた自身も実印を押しているはずだからです。
「遺留分を侵害した遺言は無効だ」と思っている人がいますが、そんなことはありません。
遺留分は減殺請求してはじめて認められるものですから、誰からも減殺請求されなければ遺言書通りに分けることになります。
遺留分を取り戻せる割合は、第3順位の兄弟姉妹以外の相続人は、自分の法定相続分の半分を取り戻すことができます。
子も配偶者もいなくて親だけが相続人である場合は、遺留分は法定相続分の1/3になります(全遺産の1/3ですから決して少なくはありません)。
第3順位の兄弟姉妹が相続人の場合は、遺留分がないので、取り返し分はできません。(民法1028条)
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
遺留分がいくらになるかは、全相続額を試算して割り出します。
<死亡時の遺産+相続人への特別受益分+死亡前1年間の贈与分―負債額>が全相続額です。
相続人が特別受益しているときは、何年前であっても遺留分計算に組み入れられます(ただし、相続税対象になるのは死亡前1年以内の受益分だけです)。
「生前贈与」分も注意が必要です。生前贈与も死亡前3年以内の贈与は「相続額」に組み入れられ相続税の対象になりますが、遺留分の計算においては「1年以内の贈与」だけが計算の対象となります。
遺留分を請求できる期間は、遺言内容を知ってから1年以内、遺言があったことを知らなければ、遺言した人が死んでから⒑年以内までです。
遺留分減殺請求の方法は民法に決まりが書かれていません。
内容証明郵便ですることが一般的ですが、法的には「意思表示すれば足りる」とされているので口頭・手紙・ファクス・メールなどで行っても有効なはずです。しかし「届いてない」「見ていない」と言われかねないので配達証明付きの内容証明で送るのが無難です。
送る相手は遺産をもらった(もらう予定の)人や法人です。
この郵便をもらって「遺留分を侵害しててすいませんでした」と素直に返還されることはあまりないようです。
話し合いがつかなければ、遺留分減殺調停を申し立てるか、返還請求の裁判を地方裁判所または簡易裁判所に起こすことになります。
遺留分は強行規定とされていますから(法定相続分は任意規定だから法定通りにしなくても問題にはなりません)いったん行使すれば、遺留分は認められる可能性が高いといえます。
最後に、「遺留分」の意義とはなんでしょう。
①相続人の生活保障
②相続財産には相続人の潜在的持分がある
③相続人間の公平を保つという現実的な意味合いもある
──といったところでしょうか。
現在の司法はこういった意義を認める方向に向かっていますが、法律家の中には「遺留分は遺言者の自由な財産処分権を縛るものであり、所有権絶対の原則に反している」という批判もあります。
実は私もその考えるひとりです。
少なくとも配偶者の一方が亡くなった一次相続においては、子の遺留分権より、老齢に向かうもう一方の親の生存権を優先し「遺留分権の濫用」は戒めるべきだと思っています。
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<ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)>
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