★自筆遺言 決めたら書く、公正証書は後でいい! ためらい禁物、老後の安心へ鉄則だ

「自筆遺言の効用」

遺言を書くのは面倒・・・・・・・・・。
その気持ちは、よ~く分かります。
(気が乗らない、まだ早い、縁起が悪い・・・・私もそうでした)
でも遺言は、思い立ったらその場で書かなければダメ。
これは、自筆遺言ゼッタイの鉄則です!

 

きょう、ドキッとする電話をもらいました。
先日92歳の老婦人のお宅を訪ねたのですが、同席してくれた甥御さんからでした。
「おばが・・・・」
自宅で転び大腿骨を骨折してしまった、という話。
ホッとしました。大事に至らなくて本当によかった。
と同時に、もう一つ私は胸をなでおろしたんです。
実は、伺ったその日に、その場で、自筆の遺言を書いてもらっていたからです。

 

■その場で自筆の遺言を書く

《こんなこともあるんだなぁ》
危ないところでした。
骨折ではなく、亡くなってしまうことだってあります。
老後は何があっても不思議ではない。
亡くならないまでも、大けが、入院を境に急に認知症状が出て遺言が書けなくなるというのは、割とよくあることです。

 

だから、遺言する意思が明確な場合、私はその場で自筆の遺言書を書くことを必ずおすすめします。
”緊急避難”的な意味です。
自筆の遺言には、
何が起きたとしても、これだけは実現させたい、ということだけ書くんです。
だから1行でも、2行でも構わない。
「〇〇に私の財産のうち△△を相続させる」
住所と名前と日付を書いてハンコを押せば自筆遺言書は完成です。
この自筆の文書は公正証書遺言と同等の効力を持ちます。

 

《起きそうもないことのために、なんと、乱暴な・・・・》
と思いますか?
確率的に言えばその通りでしょう。
でも、計算してください。
よく使われる表現───「万が一」。
1年は365日、「万が一」というのは27年と138日に1回という意味です。

 

80歳や90歳のお年寄りがあす亡くなってしまう確率、「27年と138日」に1回でしょうか⁈
もっとずっと高い確率のはずです。
でも人は「万が一」と思い、100人が100人ともあす”万が一”が起きるとは信じない。
こういう発想はやめなければなりません。

 

自分の想いを自筆遺言として1行でもしたためておく。
5分でできることです。
手の動きがよほど悪くても、1時間がんばれば書けるでしょう。
書ける人は、書いてください!

 

■父が倒れ「まさか」を知る

こんなことを口に出して言うようになったのは、今年からです。
「まさか」を身をもって体験しましたから。

 

私の場合は、父でした。
正月3日、脳梗塞を発症しました。
「ラクナ梗塞」と言って、脳の毛細血管が詰まるタイプの梗塞でした。
「あまり重篤にはならない」と言われているのですが、父は発見が遅れひどくやられてしまいました。
90歳でしたが懸命にリハビリをしました。
一時は鼻からチューブの経管栄養法を脱したのですが現在は、嚥下障害による「ムセ」が強く出るようになり再びチューブに戻っています。

 

《あんなに食べるのが好きだったのに》
健啖家(けんたんか)でしたから、病気になる前までは私よりよほど食べられたのです。
最近はやせ細り、気力もかなり落ちてきていて、心配です。
きのうの父はきょうの父ではないんです!
それを実感したこの1年でした。

 

■法定相続人が10人!

お会いした老婦人は92歳。
とても頭がシャープで言葉もはっきり。声量もありました。
ただ腰をかばって、歩くのは大変そうでした。

 

ご相談は「書いた遺言書」の添削。
ある人に全財産をあげたいという希望です。
ご婦人に子はいらっしゃいません。
6人の兄弟姉妹の末っ子で、他のきょうだいはすでに全員が他界。
甥や姪が10人もおられます。そのうち2人が外国暮らし。

 

法定相続人が10人です!
遺言を書かなければ相続人全員で叔母(伯母)さんの財産をめぐって遺産分割協議をしなければなりません。
でも彼女の心は決まっていました。
大勢の中から相続させたい人はただ1人。

 

■公正証書遺言で確実に意思表示

遺言を書こうという決断はすばらしい決断です。
「でも、相続人は10人ですよね・・・・・」
私は《自筆で大丈夫かな》と思っていたのです。
1人に全財産を相続させる。
いとこ同士は仲が良い、でも「ゼロ対全部」
《心にさざ波を立てる人が出てくるだろうな》

 

もちろん今回の相続人は「兄弟姉妹の子ども(つまり甥・姪)」ですから、この人たちに遺留分はありません。
婦人が遺言を書いておけば財産の行先は決します。
しかし遺産は労せずして転がり込むお金ですから、嫉妬は生みそう。

 

その場合に出てくるのは、「遺言を書かせたのではないか」「おばさんは認知症だったのではないか」ということ。
婦人に意思能力がなければ遺言書の効力は失効します。
実態は言いがかりに近いです。
でも、もめごとは起きない方がいい。

 

自分の意思で遺言したことを証明するには「形式」も大事です。
この場合は遺言書を「自筆」ではなく「公正証書」にしておくこと。
公正証書遺言は公証人が本人の意思確認を行い、証人も2人付きますから”疑念”を封じることができます。

 

■嫌な”魔”を打ち消す自筆遺言書!

ただし、公正証書にするまでには手続きがあり少し時間がかかります。
《”魔”が滑り込むのはこういうときだぞ》
それで「下書き」として送ってこられた自筆遺言書を先に完成させることを提案しました。
一瞬でも、「間(ま)」をつくってはいけないのです。

 

余計な手間と思いますか?
しかし”つなぎ”としての自筆遺言書があれば魔が滑り込む余地はありません
婦人は別室で遺言書をていねいに書き上げました。
書かれた後、とてもお疲れの様子だったので申し訳なく思ったのですが・・・・・。

 

先ほどの電話で「遺言書」を公正証書にするのは先延ばしとなりそうです。
骨にボルトを入れる手術をするので、早くてもたぶん来春。
《やはり、その場で書くことをおすすめしてよかった》
と思いました。

 

◇思い立ったら自筆遺言を書く

自筆の遺言書と公正証書の効力は同じです。
自筆の遺言は通常、ひとりで書くので本人の意思能力については誰も確定できません。
また簡単に作成できるため時に真贋(しんがん)を疑われることもあります。
だから、これをすすめない専門家は多いのです。
しかし「すぐ書ける」という絶対的な強みを、なぜ彼らは見ようとしないのでしょう。

 

それに、民法は「自筆遺言書ファースト」なんですよ!

(普通の方式による遺言の種類)
第967条  遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

※この後、第968条(自筆証書遺言)、第969条(公正証書遺言)とそれぞれの遺言の規定が続きます。

 

「公正証書遺言の方がエライ」ということではないのです。
要は使いようです!
もしあなたに「行く末を気にかけたい人」がいるなら、まずその人に対して”してあげたいこと”を書き、自筆の遺言書として残しておいてください。
1枚の紙切れがその人を救います。
思い立ったら、一瞬でも間をあけてはなりません。

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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