★任意後見契約とは──「やってもらうこと」を元気なうちに公正証書で取り決め

任意後見とは
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「認知症1000万人時代」も予測される、大変な超々高齢社会になってきました。
そんな時代に注目されそうなのが「任意後見契約」です。

 

■任意後見人に「代理権」を付与

今は元気でもこれから歳を重ねて判断力が落ちたり、認知症の発症で意思能力を失っていく可能性があります。
「任意後見契約」はそんな時に備え、支援してくれる人と「将来、自分のためにやってもらうこと」をあらかじめ契約しておくものです。
契約は公正証書で行います。

 

公的な後見制度である「成年後見」の場合、後見人は家庭裁判所が決定しますが、任意後見契約では信頼できる人(家族や友人、行政書士、司法書士等の専門家)と自由に契約できるメリットがあります。任意後見人の主な仕事は、本人に代わって金銭管理をすることや、さまざまな手続きを代行することです。
任意後見契約は、任意代理人となってもらいたい人に本人が、金銭管理や取り決めた諸事務について「代理権」を与える委任契約である、といってもいいでしょう。

 

日本公証人役場連合会は任意後見人の具体的な仕事について、以下のように説明しています。

「金銭管理」とは、自宅等の不動産や預貯金等の管理,年金の管理,税金や公共料金の支払い等々です。
もう一つが,「介護や生活面の手配」です。要介護認定の申請等に関する諸手続,介護サービス提供機関との介護サービス提供契約の締結,介護費用の支払い,医療契約の締結,入院の手続,入院費用の支払い,生活費を届けたり送金したりする行為,老人ホームへ入居する場合の体験入居の手配や入居契約を締結する行為等々です。

 

■成年後見ではできないことまでやれる

任意後見は契約ですから、自宅で生活したいとか、希望の施設への入所、病気や介護が必要になったときの対応方針などをあらかじめ契約書で細かく取り決めておけば、任意後見人は本人を代理して方針に実現を図っていくことになります。
ここは重要なので、もう少し詳しく説明しておきます。

 

「任意後見は契約」、だから成年後見制度ではできないことが可能になります。
例えばあなたは奥さんのことを心配していて、自分の亡き後、奥さんが認知症になったら「わが家を売って、しかるべき施設で余生を送ってほしい」と考えていたとします。その場合、成年後見制度ではあなたの意思は実現しません。成年後見人は被後見人(奥さん)の財産を守るのが使命なので、家を売って資金をねん出するということが難しいのです。
しかし「契約」なら、事前に起こり得ることを想定して「こういう場合にはこうする」と決め、代理権を与えておけば任意後見人はその方針の範囲内で裁量権を持って動くことができるのです。

 

任意後見契約とは

後見が必要な状況になってから契約が発効します

 

■認知症になったら自宅を売って施設に

任意後見人に「代理権」があるというのは、実はすごいことなのです。
本人と同じことができるのですから。
上に書いた自宅の処分、これは成年後見でも信託契約でもできません。
任意後見人にこれができるのは「代理権」を持っているからです。

 

こういう感じのスキームになります。
夫は遺言書で自宅と土地を妻に相続させます。
妻が夫の死後、認知症を発症し任意後見開始。
1人で暮らせなくなったと判断したら、任意後見人はあらかじめの契約に基づき妻の不動産を処分して施設を探し、入所手続きをするという段取り。

 

夫との契約は夫の死によって終わりますが、妻との契約はなお続いているので、妻の自宅となった家を処分することができるのです。

 

■発症するまで任意後見は発動しない

任意後見契約は、依頼人の判断能力があるうちでなければ契約できません。
ここも大事なポイントです。
すでに認知症の症状が出ている場合は任意後見ではなく、成年後見制度を検討するしかありません。
先の例で言えば、奥さんがお元気なうちに任意後見契約を結んでおく。
契約の主体は奥さん単独ではなく、ご夫婦で契約をしておき”遺される人”の対策を契約に盛り込むことになります。
(どちら先に亡くなると決まっているわけではないから、両用の対策に知恵を絞ります)

 

夫婦二人で契約するとなると、費用のことが心配になるかもしれません。
しかしそれは大丈夫です。
上のイラストのように、依頼人が元気なうちは任意後見人は何もしないからです。
したがってこの段階では、費用は何も発生しません。
(契約を交わしたときに一定の経費はかかります。下記枠内)

 

認知症の症状が出てきたり、老化などで判断力が落ちてきたら、本人や任意後見人が家庭裁判所に任意後見開始の申し立てを行います。
あなたが生きているうちに奥さんが認知症になるかもしれません。
あなたが面倒をみられるなら申し立てしなければいいし、体力的、精神的に無理なら申し立てをする、こんな感じでいいと思います。
あなたが亡くなった後なら、事情を知っている親族、または任意後見受任者が(本人の了解を得たうえで)申し立てすることでしょう。
家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見が始まります。

※任意後見契約を結んでも、あなたの意思能力が生涯健在なら、任意後見は契約しただけで終わることになります。

 

■契約時の費用はごくわずか

任意後見契約を結ぶ時の費用は以下の通りです。

  1. 公証役場の手数料 1契約につき1万1,000円
  2. 法務局に納める印紙代 2,600円
  3. 法務局への登記嘱託料 1,400円
    ※任意後見契約が結ばれると、公証人が任意後見契約の法務局への登記を嘱託します。
  4. 書留郵便料 約540円
  5. 正本謄本の作成手数料 1枚250円×枚数

 

任意後見にかかる費用は、任意後見人が管理する依頼人の財産から支出することになります。任意後見人の報酬は契約で決め、これも依頼人の財産の中から出すことになります。
これらの処理が適正になされているかを任意後見監督人が監督することになります。

 

相続対策の総合プロデューサー 石川秀樹ジャーナリスト行政書士)>

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ABOUTこの記事をかいた人

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。 40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。