★認知症対策に3つの選択肢。「間に合ううちに家族信託」がベストだ!

母が認知症3つの選択肢 成年後見
Ads by Google



こんにちは、静岡県家族信託協会石川秀樹です。

きょうは「家族の1人が認知症になったらどうなるか」についてお話しします。
家族には<3つの選択肢>があります。
①何もしない
②公的後見制度に駆け込む(成年後見
③家族で信託契約を結ぶ(家族信託
誰しも「何もしないで済むなら、それが一番いい」と思うでしょう。
それがベストな選択になるのかどうか、これから実例でお話しします。

 

■資産1億円のX氏一家

ご紹介するのは私の先輩のご家族です。

  • 先輩のX氏(78)
  • その妻Yさん(73)
  • 長女Aさん(47)
  • 長男Bさん(44)

 

X氏の資産は

  • マイホーム 4100万円(土地3400万円、建物700万円 ※相続税課税価額)
  • 預貯金 2400万円(うち1200万円は定期預金)
  • 生命保険 1000万円(受取人はYさん)
  • 有価証券 500万円

一方、Yさんは500万円の貯金と地方銀行に1500万円の定期預金を持っています。

 

大企業で長年勤めたX氏の資産は、不動産が4100万円、金融資産が3900万円、妻のYさんの資産も2000万円。
夫婦で1億円、そのうち金融資産が5900万円あり”潤沢”です。
住宅ローンは完済。年金も2か月に1度45万円入ってきます。
だから「老後は心配ない」と家族の誰もが思っていました。
少し暗雲がただよい始めてきたのは、妻のYさんが70歳を過ぎて認知症の症状を示し始めてきてからです。

 

■肝心なのは「動かせるお金」!

長女のAさんは札幌市の会社員に嫁ぎ、しばらく専業主婦だったもののフラワービジネスを始めて成功、今は介護事業もスタートさせ多忙な日々です。
長男Bさんは東京の大学に進み、そのまま研究者となりました。独身。
というわけで、母の介護はお父さんに任せきりで、典型的な”老々介護”となっています。
認知症の発症から3年、Yさんは精神的にもX氏に頼りきりで、介護度2の現在もデーサービスに行きたがりません。
X氏は気力で妻の介護を続けていますが、80歳を目前にして自身も要支援1の状態になり、先行きが少し不安になってきました。

 

久しぶりに帰省したとき、Aさんが私の元を訪ねてくれたので、先輩一家の窮状を知ることができました。
Aさんから見ると、介護のキーマンであるX氏自身の判断能力も
「以前と様変わりと思えるくらい落ちていて、お父さんのことも心配」というのです。
それで私は、冒頭の<3つの選択肢>をお話ししたのです。

 

問題点は明確です。

  1. 妻の認知症という”時限爆弾”を抱えていること
  2. 介護の担い手は老齢のX氏ひとりであること
  3. しかも夫婦のきずなが強いため、施設を使いにくいこと
  4. 資産1億円でも、すぐに使えるお金は少ないこと
    (X氏の普通預金1200万円、Yさんの貯金500万円)
  5. そして将来的には、X氏自身の認知症も危惧すべき状況になってきたこと

どれも深刻ですが、私は「4.」の問題に着目しました。
1億円の資産があるのに、動かせるお金は1700万円しかないこと‼
この資産の持ち方が、X氏一家の将来を大きく左右します。

 

■夫婦の入院・施設費に毎月30―50万円

先輩夫婦は信頼しあい気持ちも落ち着いていますが、「このままずっと」は難しいでしょう。
X氏の心身の健全性は永久ではありませんし、奥さんの認知症も進みます。
すでに”徘徊”が始まっていますから、いずれは入院、または施設入所が必要になりそうです。
あとは、その時期をいつまで遅らせられるか、というだけ。

 

先輩の性格から、自分が動ける限りYさんの介護は続ける気でしょう。
逆に言えば、”その時”が来ると、夫婦同時に入院・入所となる可能性が高いのです。
互いの存在に強く依存していますから、2人とも大きなショックを受けそう。
そういう問題と同時に、専門家の私としては、下世話な「お金」の話をテーマにせざるを得ません。

 

Yさんが入院となるか入所になるかでも変わってきますが、仮にグループホームに入所した場合、介護保険を使ったとしても毎月の自己負担額は20―30万円くらいになります。
X氏は介護付き有料老人ホームに入るでしょうから、やはり月額25―40万円。
さらに両施設とも入居一時金または保証金を求められることが多く、合わせて数百万円の費用を用意しなければなりません。
つまり最低でも2人の入院施設費に、入居一時金とは別に、毎月45―70万円の自己負担が必要となります。

 

■2年8ヶ月でお金が尽きてしまう⁈

資産が1億円もある夫婦なのだから、何とかなるに決まってる――というわけにはいきません。
仮に夫婦ふたりの入院・施設費が月50万円で乗り切れたとしましょう。
総務省「家計調査年報」によれば、健康な夫婦の老後の生活資金の月額平均は約30万円です。
ふたりが自宅での暮らしを断念せざるを得なくなると、月の赤字が急増します。

 

その試算―――
X氏の家計の収入源は2か月に1度の公的年金45万円です。
毎月の赤字は「50万円―(45万円÷2)=27.5万円」となります。
夫婦が今すぐ使えるお金は1700万円ですが、入居一時金が800万円だとすると残りは900万円。
何年もつでしょうか?
900万円÷27.5万円=32.7か月
つまり2年8か月でお金が尽きてしまいます‼

 

平均余命を考えてみましょう。
X氏78歳 → 平均余命10.15年(88歳で死亡)
Yさん73歳 → 平均余命18.27年(91歳で死亡)
以上の机上の計算から分かることは、このモデルは中途破綻が約束されている、ということです。

 

娘のAさんにこの数字を説明すると、「両親には定期預金もあるし、不動産もあるわけだし……」といいます。
「お母さんの認知症がここまで進んでいるのに、定期預金を解約できると思いますか?
さらに「Xさんの判断能力がこれ以上落ちてくると、家を売ることも難しくなりますよ」
私がこういうと、Aさんは初めて「何が問題か」を悟ったようで、顔色が変わりました。
※預貯金も居宅売却も「契約行為」ですから、判断能力を喪失するとできなくなります。

 

■「何もしない」という選択

3つの選択肢について解説します。
「何もしない」というのは、家族信託も成年後見も使わない、という意味です。
まったく「何もしない」でX氏一家が苦境を乗り切れる可能性は、ほとんどゼロ。
信託や後見といった仕組みや制度を使わないにしても、何かをしなければ認知症問題は乗り切れません。

 

何をしなければならないのでしょうか。
大きなお金を「動かせるお金」にしておく、ということです。
銀行からすすめられてしたことを、すべて元に戻しましょう

  • 定期預金を解約し普通預金に(カードで入出金する)
  • 不要な生命保険は時機を見て解約、または払い済みに
  • 上場株式や投資信託等は解約して現金に

 

これらを、X氏に判断能力がある今のうちにやっておかなければなりません
Yさん名義の定期預金1500万円も解約したいところですが、Yさんの常況を見れば、もはや難しいでしょう。
さて、これらをすべて実施したとして、X氏の手残りはいくら増えるでしょうか。

 

まずX氏の定期預金1200万円。
有価証券500万円は、しぶしぶ売却しました。
しかし生命保険1000万円の解約は、X氏がどうしても「うん」と言いませんでした。
生保の中途解約は「解約返戻金(へんれいきん)」の額によるので、今売ると200万円も損をするからです。
以上の結果、動かせるお金は「1700万円+1200万円+500万円=3400万円」となりました。

 

X氏の今後はこう変わります。
X家の毎月の赤字27.5万円、入居一時金は両施設で800万円。
(3400万円―800万円)÷27.5万円=94.5か月 → つまり7年10か月
X氏の平均余命に2年以上足りません。
足りない分は姉弟が出さざるを得ず、毎月27.5万円の負担は壮年期の家計に大きな負担になると思われます。

この時期を乗り切れるかどうかは、施設の選び方にもかかってきます。X氏の経歴にふさわしい介護付き有料老人ホームにしたいと考えれば、入居一時金が1000万円を超えそうで、試算を圧迫します。またX氏が長生きすればするほど”破たん”に近づくという、根本的な矛盾をこのモデルは抱えています。 

 

■X氏は遺言を書いておかなければならない

Yさんの認知症の影響は、お金のことだけに限りません。
X氏が遺言を遺さないと、X氏の資産は遺産分割協議で決することになります。
分割協議は判断能力のある法定相続人全員の一致で決しますので、Yさんのために成年後見人を付けるという話になってしまいます。
後見はYさんが亡くなるまで続きますので、その間の後見報酬への負担は数百万円になる可能性があります。
遺産分割協議をしないで済む方法は、X氏が遺言を書くことです。

 

X氏の判断能力は急速に落ちてきていますから、急がなければなりません。
遺言は自筆でも公正証書でも構いません。
問題はそんなことより、X氏の書く気力が残っているかどうかです。
老々介護で心身ともに疲労の極に近い状態。
そういう人に「遺言を」と切り出すのは難しいことですが、何としても書いてもらう必要があります。

 

動かせるお金にしておくことといい、遺言の必要性といい、この辺のことは「人生百歳時代の常識」として、皆さんはぜひ知っておいてください。
後手に回ると成年後見に追い込まれる可能性がありますから、聞き流さないで確実に実行してください。

 

■凍結預貯金を動かせるのは「成年後見」だけ

今書いたように、追い込まれたら成年後見しか手立ては残っていません。
追い込まれるとは、つまり、お金のことで行き詰ってしまうということです‼
最高裁判所が毎年出している「成年後見統計」では「預貯金等の管理・解約」を成年後見の申し立て理由に挙げている人が83%。
驚くべき高率です。

 

家族信託は、高齢期・終末期の高齢者の財産管理に大いに力を発揮する制度です。
でも勘違いしないでください、家族信託契約をすれば本人に代わって凍結された預貯金通帳から引き出しができるようになるわけではないのです。
大きなお金をあらかじめ「使えるお金」にして受託者に預け、名義を受託者に換えるから、そのお金を受託者が管理できるわけです。
残念ながら、凍結したお金を動かせるのは成年後見人だけです‼

 

ただ、成年後見の問題点はそこからです。
自由になったお金を管理できるのは、これまた後見人だけ。
後見を頼んだ(申し立てた)家族に、「はい、引き出してあげましたよ」と手渡してくれるわけではありません。
以後、その財産は成年後見人が、本人(後見を受ける人=被後見人)が亡くなるまで管理し続けます。
引き出したお金だけでなく、本人の財産の一切合切、他の現金・預貯金通帳・実印・株式や有価証券・生命保険証書・不動産の権利証(登記識別情報)などなど、後見人は本人の身上監護も業務としますから、保険証や介護保険証まで――およそ”財産”といえるすべてのものを手元に置いて、管理や処分をすることになります。

 

■しかし依頼者の思いとすれ違う成年後見

そんな重たい重たい制度だと思っていましたか?
成年後見人は、預貯金を手軽におろしてくれるワンポイントリリーフではないんです。
一方、家族が後見人になれる、と思っている人も多いのではないでしょうか。
それは2000年の制度発足当時のことです。
今では家族が後見人になれるのは2割台、4人に1人だけです。
本人の金融資産が1000万円を超える場合は、たいてい士業の者が選ばれます。
職業後見人の後見報酬はほぼ、本人の金融資産額に比例して増えています。
月額換算で2万―6万円。ですから年間24万-72万円の費用がかかります。
生涯コスト(本人や家族からすればまさに「コスト」です)は数百万円以上になるわけです‼

 

公的後見制度にはさまざまな問題点があり、一方、利点もあります。
その辺については別稿に譲りますが、この制度の特徴は以下の点にあります。

  • 成年後見の申立てをするのは、主に家族(本人は判断能力を失っていますから)である。
  • ところが成年後見制度の狙いは、本人の財産を守ること。
  • 家族を守ったり、幸せにするのが目的ではない、ということ。

つまり「依頼者(申立者)の思い」と「制度の目的」とがかみ合っていません‼
実に不幸な「思い」のすれ違い、と言うほかありません。

 

■家族信託は、依頼者の思いに応えてくれる

それに対し、「依頼者の思い」と「制度」とがピタリとかみ合っているのが家族信託です。

 

家族信託の「依頼者」は主に誰でしょうか。
成年後見の場合と同じように、家族の誰かです。
後見してもらう人が自ら後見申立てをすることが少ないように、家族信託においても、「家族信託をしたいのですが」と私を訪ねて来られるのは、高齢の委託者ではなく、受託者適齢期の40-60代の人たちです。

 

❶母が認知症? 家族信託による対策を考えてみた。父を委託者兼当初の受益者に、娘の私が受託者になる

 

受託者は何をしたいのかといえば、認知症が危ぶまれる高齢の親が持っている財産を自分が管理して、親の暮らしが今までと同じように成り立つようにすること。
一言でいえば、「銀行なんかにお金を凍結されちゃあかなわない」と思っています。
だって、そうしなければ自分(たち)のお金で親を支えていかなければなりませんから。
子は子で生活があります。
親の財産があるのに、認知症だからおろせないといわれ、自腹を切らされてはたまらないのです。
実はこの思い、成年後見を申し立てた人も同じだったはずです。
「親のお金を、親のために使えるようにしたかった」だけイラスト❶>なのに、親の財産は家族の手から離され、ワナにかかったみたいに後見が始まってしまった……。
途方に暮れている人が大勢います。

 

X氏ケース2

❷両親ともに施設に入居。費用捻出のため、信託財産とした父の居宅を売却

 

家族信託は「本人のためだけに財産を使え」とはいいません。
今までX氏のお金で家計を回していたなら、Yさんのためにも使えばいい。
たまに家族旅行をしたければ、そのようなことにも信託財産を使えます。
家族信託は「信託目的」のみに縛られます。
目的が「自分及び妻の安定した暮らし」ならば、このお金の使い方は何の問題にもなりません。
そしてX氏、Yさんふたりともが施設に入り、自宅が不要になるなら、この不動産も売却できます<イラスト❷>。
もちろん信託目的に「居宅の売却」を入り、居宅不動産を信託財産にしておくのです。
これらの財産管理は、委託者(X氏)に代わり受託者のAさんが行います。

 

■Yさんを第2受益者にしておけば安心

実例にこだわったので、みなさんに説明する事例としてはちょっと複雑なケースを採用してしまいました。
何とかしたい張本人はYさんでしたね。
Yさんの定期預金1500万円が凍結されたために、介護資金が枯渇しそうになっていました。
「何もしない」を選択するつもりで、X氏の財産をできる限り現金化しました。
でも、完全に危機を乗り切るには少し足りません。
「成年後見」を選択すれば、凍結解除ができるのでお金が足りない問題は解決します。
しかし後見報酬という巨額なランニングコストと、家族の思いが全く無視されるという予期せぬ問題が新たに起きてしまいました。

 

X氏ケース3

❸父が亡くなっても信託は続きます。受託者者は父が遺してくれたお金を、今度は母のために使います

 

では、家族信託はYさんを救えるのでしょうか。
もちろん救えます。
受託者はYさんの定期預金については何もできませんが、ふたりが施設に入居することになったら居宅を売ればいいのです。
これで資金問題は解決します。
また、X氏が予想外に早く亡くなったとしても大丈夫です。
契約であらかじめYさんを2番目の受益者にしておきます。
するとX氏が残した財産すべてを、受託者Aさんの采配の下、今度はYさんのために使うことができます<イラスト❸>。
そしてYさんが亡くなったら家族信託を終了させ、その時点で残っている財産をAさんとBさんが分け合えばいいのです<イラスト❹>。
家族信託を使うと、契約書1つで「相続」までできてしまいます。

 

X氏ケース4

母が亡くなったら家族信託は終了。残った信託財産を私と弟が承継します

 

■追い込まれての成年後見だけは避けたい

親が認知症になりそうになってきたとき、私たちには3つの選択肢があります。

  1. 何もしない
  2. 成年後見を利用する
  3. 家族信託契約を家族と結んでおく

どれが最適な答えかは、まず本人の常況によりますし(銀行で凍結を解除してくれないなら成年後見を頼むか、自腹を切ってでも何もしないか、の2択しかありません)、ご家族の性格によっても変わってくるでしょう。
ただ、不用意に、追い込まれるように成年後見を申し立てることだけは避けてください。
それが言いたくて、私はこのブログを書いているのですから。

 

◎遺言・家族信託・後見制度・認知症対策・延命と尊厳死・終活・死後の心配についてメールで無料相談を行っています。

サイトのトップページへ

静岡県家族信託協会

ジャーナリスト石川秀樹相続指南処行政書士

■■ 遺言相続・家族信託.net ■■

★第2回「家族信託」無料相談会

主催:静岡県家族信託協会
認知症・成年後見・家族信託のご相談を承ります。
3人様限定、事前にご予約下さい。
詳しい記事はコチラ

Ads by Google