★相続ではお母さんを守れ! 相続の本質はそこにしかない

相続では母を守れ

相続の本質とは何だろう。
お母さんの安心をつくる
これしかないのではないか。

今、ここが不安定になっている。
「ここが」とは、「家族の絆(きずな)」である。
家族のそれぞれが、自分のことしか考えていない。

■「幸せ」をつくってくれたのは誰?

「自分のこと」だけを考えられる状況とは、実はすごく幸せなことだと思う。
その「幸せ」をつくってくれたのは誰か。
安心して自分のことしか考えないでいられる、そんな状況をつくってくれた人は?

陰に日に守ってくれる人、支えてくれる人がいなければ、子は1日だって「自分」に没頭できない。
子は皆、自分がえらかった、自分が頑張った、自分が道を切り拓いたと思うけれど、家族なしでそこにたどり着くのは難しい。
お父さんがいなければ、お母さんがいなければ、(またはそれに代わる人がいなければ)「自分」などと自意識を持つことさえ難しい。
生きることに必死で、「自分」をなぞ顧みる暇(いとま)さえなくなってしまう。

ごう慢、強権な父は時に「誰のおかげで大きくなれたと思っているんだ」などと言うが、お母さんはほとんどそんなことは言わない。
そのお母さんを守ってあげられるというのが、相続の本質なのだと思う。
いま何人が、相続に遭遇して「うちの相続は成功だった」と言えるだろうか。

■法定相続分という愚かな主張

言いたいこと、やりたいことをやって、男は死ぬ。
世の「お父さん」なる人種を見てみよ、10人が10人「自分の方が妻よりも先に死ぬ」と決め込んで、なのに、あとに遺る妻のことは考えていないという体たらくだ。
子もまた、自分や自分の家族の生活しか考えていない。

結果、親の遺産が少しでもあろうものなら、それがほしい。
もらえれば助かる、と考える。
民法に「法定相続分」などと書いてあれば、もらうのが権利だと思い込み、母の今後の生活などに思いをめぐらすこともなく、「寄こせ」「寄こせ」と言い募る。
奇特な父親が妻のために「全財産を」などと遺言を書けば、父親の想いを無視して「遺留分があるはずだ」と息巻き、減殺請求をして恥じない。

考えてもみよ、資産がマイホームの価値を含めて3000万円、4000万円程度のふつうの家で、法定相続分で母と子2人が夫の遺産を分け合ったらどうなるか。
住んでいる家に母が住み続ける(相続する)だけで”遺産の価値”の半分以上を「もらった」ことになる。
時には財産価値の3分の2がマイホームということもあるだろう。
「じゃあ、預貯金は私たちがもらうね」と子たちは言いそうだ。
(母は当てにしていた「老後資金」を子によって”合法的”に?奪われてしまう)

こういうバカ息子、バカ娘は、まさか現実にはおるまいと思うのだが、事実は逆である。
こんな子たちばかりがいるというのが現実だ。
「子」と言っても30代、40代・・・・・どころか、今の相続は老々相続になっていて、子の年齢が50代、60代が多数派。
それでもこういう現象が増えているからあきれるのである。

■お母さんの「老後」は長い

お母さんの「老後」は長い。
夫が男性の平均年齢80歳で亡くなったとしよう。
それでも80歳女性の平均余命は11.7年ある。
100歳長寿も「まさか」とは言えない時代なのだ。

しかし老後の10年―20年、なめらかに静かに下っていけるというのは楽観にすぎない。
すでに介護が始まっているかもしれない、3人に1人は認知症かその予備軍であり、脳梗塞などを発症し劇的に体が不自由になることも考えられる。
現代医学は(やっかいなことに)人を簡単に死なせてはくれない。

そういうお母さんを、老後資金という金銭面での安心を奪いながら、「独りで生きてね」と放り出すのが”法定相続分という主張”なのだ。
それなのに母親の側から怨嗟(えんさ)の声が聞こえてこない。
たぐいまれなほど、日本の今の高齢女性は我慢強い。我慢強すぎる!
口を開けば「家族に迷惑を掛けたくない」「人さまの世話になりたくない・・・・」

こういう刷り込みはいつ誰によって培われてきたのだろうか。
誰が、というより社会全体の「いけいけの空気」の中で、置き去りにされてきたのだろう。
そんな危うい日本という国にいるのに、高齢女性自身が実に不用意である。
今の自分、比較的元気で自分のことはなんとかやれている今の自分が、この後もずっと続くと思い込んでいる。
『大丈夫な日々』がいつか破たんするなど考えないようにするけなげな精神が、母親たちを追い詰める。

「そうはならないよ。歳をとったら人に”迷惑”をかけないでは生きていかれないよ。それは決して恥じゃない。だから安心して頼ってよ」
と言えるのが成熟した大人というものだろうが、
その担い手は、間違いなく”大人になった”子のはずであるのだが・・・・・。

■母よ、子に幻想をもつなかれ!

「はずである」がまるで通じないのだ。
このことを夫も妻も、強く自覚してほしい。
いつまでも子に幻想を持たないでもらいたい。
子は自分たちのことにしか興味がないのだ。
よい悪いの問題ではなく、多くの家庭で次の世代、次の次の世代は追い立てられている。

「閉塞社会」という言葉は使いたくないが、子や孫の世代が今よりよい未来を見通せないというのが「閉塞」というなら、今はすでにそういう社会になっている。
ではこちらも頭を切り替えて、閉塞社会の中での相続を考えよう。
相続を「自分のこと」としてもっと真剣に、神経質に考えてみよう。

母よ! あなたは何歳まで生きると思っていますか?
そんなことを考えない人たちばかりなんですよ。
80歳のあなたは90歳は当然、100歳まで生きていくかもしれない。
今の預貯金で足りていますか?
急な病を発症したとき、駆けつけ、見守ってくれる人はいますか?

もう「迷惑をかけない」などという発想は捨てましょう。
老いて子や他人(療養看護、介護のプロを含め)に頼るのは恥ではありません。
迷惑をかけないという希望は希望として、今は現実に目覚めてほしい。
もしあなたや、あなたの夫に財産があるなら、それを精一杯自分のために使う、という発想に切り替えなければいけない。

■夫よ、子に大金を遺して増長させるな

夫よ、もしあなたが先に逝くと決まっているなら、まず妻の老後を考え相続の算段をしなさい。
間違っても「子に公平に」などと考えないように。
子にすべてをあげるのは、妻が逝くときでいいんです。

第一、子にただで、あなたとあなたの奥さんとで築いた財産をあげようなどと思わないでください。
親に多くを尽くした子がより多くを得る、これは当然のことだし、正義の観点からも親はそのように振る舞うべきです。
親の務めとして、子が好きなように生きていけるようにしてあげたのなら、親の務めとしてはもう十分に(お釣りが来るほど)果たしている。
その上に、何の労、負荷をかけることなく、子に無条件にすべてを与える気ですか?
子を甘やかすのもいい加減にしてください!!

夫よ、もしあなたに有り余るほどの財産があるなら、子に多くを遺したいなどと考えないでください。
わがままな子をこれ以上、増長させないでください。
人は10万、20万円の仕事を得るために、どれほど相手に尽くすことだろう。
あなたが子に無条件に残そうとしているのは100万? 1000万? それとも億円を超える金?

そんな大金をあなたや、あなたの妻に何もしようとしない(寝て待っている、そして相続が始まればより多くを得ようとして相争う愚かで欲張りな)子にあげるくらいなら、あなたの「事業」のために使ったらどうですか?
優秀な人材を育てるための教育資金、研修費用に回した方がよほどいい。

■1次相続では母に全部を託せ

さて、ふつうの家庭のことです。
資産家でさえ「子の貢献を見て子にあげるかあげないか」を考えてほしいと言っている。
ふつうの家庭なら、まず間違いなく妻の老後資金は潤沢ではないはずだ。
こういう状況で、子の主張に沿ってはいけない。
あなたが亡くなる1次相続では、断固として「お母さんに全部託せ」と言い切るべきだ。

子が親の財産を相続するのは、お母さんも亡くなった2次相続のときでいい。
そのときでさえ、子はみな平等などと甘い考えを捨て、
母よ、あなたは”あなたに孝養を尽くした子”に優先的に配分するよう心がけるべきだ。
母のことを自分のことのように深く考え、より手を尽くした子に優先的に。

ずいぶん時代錯誤な非合理を述べているように思われたかもしれない。
しかし、いったん自分(の欲)を置いて虚心に考えてみてほしい。
親の財産はあなたのものではない、引き継ぐと決められたものでもない。
親があなたのことをどう想っているかだけなのだ。

そう考えれば、「相続の本質は「お母さんを守る」にしかない」という私の主張に得心がいくだろう。
親のことを思いもしない子に財産が行くことを、親は喜べないのではないか。
相続は家族の絆を結び直す最後のチャンスである。
お金の争奪戦ではない。

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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