★有効期限のある遺言書を書いてみた。超長生き時代、定期的に書き直す発想が必要だ!

期限付き遺言書を書いてみた

 

有効期限のある遺言書を書いてみた。
書いた後に状況が一変したら……? 
それが取りこし苦労でない超長生き時代。
遺言にも有効期間を設け、定期的に書き直す発想が必要だ。
初めての遺言を妻のために書いてみました。

 

■期限なしという遺言書の強みが弱みに⁈

遺言書にはもちろん期限がありません。
書いてから十数年たっても遺言書は有効です。
これは遺言書の強み。法的な拘束力(効果)は絶大です。

 

しかし、それが裏目に出ることもあります。
なぜなら、遺す人も、受け取る人も生身の人間。
生きている以上、何が起こるかなんて誰にも保証できません。
もともと遺言は、死期が迫った時に書くものという暗黙の了解があるようです。
法律(民法)も、書いてから長く生きる、したがって遺す人、受け取る人の状況も変わり得るということを想定していません。

 

でも、状況が変わったのに変わる以前の遺言書が遺っていたとすると……。
大変なことになりかねないということ、分かっていただけるのではないでしょうか。

 

■亡くなる順番が狂うと事態急変

そこで「遺言書に有効期限をあらかじめ設けておこう」とひらめいたんです。

 

きっかけは正月に父が脳梗塞で倒れたことでした。
直前まで生命力旺盛だった人が、今はすっかり変わってしまいました。
誰にでも”予定外”は起こり得る。
『俺だって、父より先に逝くかもしれない……』
急に死が身近になってきました。
(こんな仕事をしているのに、自分の死については思考停止でした。恥ずかしながら)

 

「順番」が狂うと、わが家の場合も深刻な事態を迎えます。
第一番に影響を受けるのは妻です。
「夫の死」というストレスに加え、私の両親と40年間も同居して苦労してきたことが、一瞬にして無に帰してしまうかもしれません。

 

妻は言わず語らずのうちにこう考えていたはずです───
<今は楽ではないけれど、夫の両親の遺産を夫が引き継げばそれを私たちの老後資金に回し、なんとかやっていける>と。
しかし私が親より先に死ぬと、両親の遺産は(私の代襲者となる)子どもたちには引き継がれますが、妻には1円も回りません。
私には姉が一人いますから両親の財産の最終的な行先は、姉に半分、子ら3人に半分ということになります。
苦労してきた家内は「ゼロ」。

 

■期限が来たら遺言書の効力消滅

そこで私は一計を案じ、妻のためにのために遺言書を書くことにしました。
次のような内容です。

 

遺言書

1 私の全財産を妻である石川〇〇に相続させる。

2 私の両親がふたりとも死亡した時点で私が生きている場合、この遺言書の効力は消滅する。

(「付言」や日付、住所、署名、押印などは略)

 

 

相続が順番通りに起きるなら、私は全財産を妻に相続させる必要はありません。
妻と子ら3人でバランスよく私の財産(その中には両親から引き継いだ財産も含まれている)を分割すればいいわけです。
だからこの遺言書はあくまで不測の事態に備えた「臨時のもの」。
私が無事に両親を看取れたら(そこまで生きていたら)当然、この遺言は破棄するか書き換える気でいます。

 

だから「2」両親が他界した後に私が生きていれば遺言書の効力はなくなるという意味の一文は、念のために付け加えたものです。
効力が残ってしまうと、これはこれで、今度は私の目算が狂ってしまいますから。

 

ペン書きで遺言書

 

あまり知られていませんが、遺言書に何が書いてあっても、相続人が全員で一致すれば「遺言者の意思」に逆らうことができます。
ですからこの遺言書が遺ってしまっても、妻や子らが話し合って適切に私の財産を分けることはできるでしょう。
でも厳しい相続の現場を見てくると、100%「うちは大丈夫だよ」というわけにはいきません。

だから「まさか、うちに限って……」という甘さを封じ込めるために、あえて「2」を付け加えたのです。

 

■母と姉妹の誤算

ちょっと実例を紹介しましょう。
お母さんと長女、次女の話です。
お母さんは「次女に私の全財産を相続させる」という遺言を書きました。
長女とあつれきがあったわけではありません。
長女は資産家に嫁いでいたので、実家の財産がすべて次女に行くことには納得していたのです。

 

ところが次女の夫の事業が行き詰まり、破産してしまいました。
直後にお母さんが倒れます。
お母さんは「(遺言書を)書き換えなければ」と思ったかどうか……。
物理的に文字を書ける状態ではなく、そのまま亡くなってしまいました。

 

ふたりだけの姉妹ですから話し合えばいいようなものですが。
話し合いはつきませんでした。
妹には長い間積りに積もったお姉さんへの感情があったのかもしれません。

 

長女は妹に遺留分を請求するかどうか、迷っています。
母が遺す遺言内容を自分も承知していたわけですから。
プライドと、少しでも資産を得たいという現実のはざまで悩んでいます。

 

■書き直せない可能性も心に留めて

このような例を目の当たりにすると、「状況が変わったら遺言を書き直そう」と思っているだけでは甘い!、と思わざるを得ません。
人間ですからねぇ(と、ここでも「生身の人間」を強調せざるを得ないのですが)、
書き直したくても書き直せない状況は「しばしば起きる」と言っておいた方がよろしいでしょう。

 

例えば私の例で言うと────
うっかり者なので、遺言を書いたことを忘れてしまうかもしれない。
(まさかねぇ。こんな大事なことを忘れるほど抜けてはいませんが……)
しかし認知症になってしまう可能性は十分あります。
父の例を見るまでもなく、私だって脳梗塞になるかもしれない。
車に乗っているから交通事故に遭ってしまう可能性もある。

 

両親ともに見送った後には、しばらく虚脱状態になるかもしれない。
葬式・法事と神経を使い、遺言を書き直すどころではないかも。
さらにこれは非常にあり得る話だと思うのですが、
『いつかは書かなければ』はずっと心に引っ掛かっているでしょうが、今度書く遺言書は”暫定”ではないので「妻に全財産を」と単純化することはできません。
熟慮が必要。時間は掛かるんです。
その分、手が止まりがちになるでしょう。

 

■長生き時代だからこそ周到に

実はこの間、”危険な日々”です。
「書き直すつもりだった」には何の意味もありません。
私にもしものことがあれば、前の遺言書はそのまま有効です。

 

そのための「有効期限を切った遺言書」だったのです。
とりあえず効力を消滅させておけば、ゆっくり書き直せますから。

 

(なんて私は用心深いんだろう!!)
相続の仕事をしていると、「まさか!」と一笑に付すわけには参りません。

 

有効期限のある遺言書
現在は非常に長生きになっていますから、遺言者が生きている間に諸般の状況が変わってしまうことは大いにあり得ます。
今後ますます「有効期限のある遺言書」という発想が重要になってくると思います。
遺言書は1回書いたら終わり、でなくてもいいのです。
自分の誕生日や元旦に「この遺言のままでいいのか」考えてみる、
そんな定期的に遺言を見直す発想も必要ではないでしょうか。

 

みなさんはどう思われますか?

 

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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