相続指南処、総合プロデューサーの石川秀樹です。
「相続の悩み」と一口に言いますが、悩みの種類はいろいろです。
悩んでいる内容がはっきりしている場合、解決することはそれほど難しくありません。
しかしお悩みが”漠たる不安”のようなものであった場合、速攻で解決というわけにはいかなくなります。
例えば、こんなお悩みです─────
◆老後の問題(「ひとり」になるという不安)
- 夫婦ふたり暮らしだが、私がひとりになっても子らは同居してくれそうもない。
- 私がひとりになったら誰が面倒をみてくれるのか? でも家から離れたくない。
- 独りになったら施設にと思っているが、どこがよいかわからない。
- 今は体が動いているけれど、介護される状態になったら伴侶に迷惑を掛けそう。
- 私が認知症になったらどうしよう。夫は家事ができないし、まして介護など。
- 妻が認知症。私が死んだら家を売ってその資金でホームに入らせたいが、誰が取り計らってくれるのか。
- 私たち夫婦には子がなく親しい親戚もいない。この財産はどこかに寄付してしまいたい。
- 身寄りはなく独り身、財産を残してもしょうがない。お葬式のことやお墓のことが心配。
- そもそも独り暮らしの私が死んだとき、誰が気づいてくれるのだろうか。
「これが相続の悩み?」と疑問を持たれましたか? 確かに。
相続の悩みと言より、これらは「老後への不安」と言うべきかもしれません。
こういう不安は、いわゆる「相続対策」の中ではほとんど話題になりません。
(いきなり「どうしたら節税できる?」なんて話になりがちです)
■「老後」という長い下り坂のリスク
でも、考えてみてください。
私たちが亡くなり「相続」が発生する前に、あなたも私も、全員、
「老後」という長い下り坂を生きていかなければなりません。
「私には関係ない」と言い切れる人はうらやましい限りです。
お子さんや孫に囲まれ仲良く同居、しかも子らに頼らない自分たちの財産(収入源)がある、
悩みと言えば、この財産の次世代への引き継ぎに多少の不安があることくらい・・・・・。
こういう人は例外中の例外というべきでしょう。
多くの人はこの対極にいるはずです。
お見せしたいのはこのグラフ。
内閣府発行の平成27年版「高齢社会白書」です。
■2人に1人は「最後はひとり」になる!
このグラフに映っているのは65歳以上の高齢者がいる世帯。
高齢者世帯は2013年には全世帯のうち44.7%にまで伸びています。
30年前には24、5%だったんことを考えれば、過半数に届きそうな今は、
うーん、なんともすごい高齢社会に突入したものです。
すべての高齢者がこのグラフの中にいます。
問題はその「世帯構成」。
政府がしきりに持ち上げる「三世代同居」なんて13.2%しかありません。
高齢者がいる世帯の中の13%だから、全世帯中の比率で言えばたった6%。
今や「子と同居」などという幸せな(?)世帯は、ほとんどないわけです。
代わりにこの20年、どんどん増えているのが「単独」と「夫婦のみ」の世帯。
2013年、「単独」は25.6%、「夫婦のみ」はさらに多く31.1%(赤い枠内)。
過半数を軽く超え、全高齢者の57%は1人もしくは2人で暮らしています!
いま相続対策をお考えのあなたも、この中に入るかもしれませんね。
私はこの頃、「今が一番幸せ」とよく考えるんですよ。
なんといっても隣にはいつも伴侶がいますから。
でも冷静に言えば、どちらかが必ず先に逝ってしまいます。
そうなると(「白書」では何も言っていませんが)、数字の意味は明白。
《高齢者の2人に1人は、最後はひとりになる!》ということです。
「ひとり」になり方も、もしかしたら長い老々介護の果てかもしれません。
「ひとりになる」というのはまことに大きな老後リスクの一つなんですね。
■老いて迷惑をかけるのは当たり前
エンディングセミナーなどで、受講されている方にうかがうと、
みなさん「家族に迷惑を掛けたくない」とおっしゃいます。
まあ、お気持ちはわかりますが、私ははっきり言いたくなります。
「そういう発想、捨ててください!」と。
私事で恐縮ですが今年の正月3日、父が脳梗塞で倒れました。
救急車で運んで緊急入院、3週間たってリハビリ病院に転院、
小康を得たと思ったのもつかの間、飲み込みの訓練中に誤嚥して肺炎に。
また救急車で元の病院に搬送し、なんとか命を救ってもらいました。
今はまたリハビリ病院で半身まひの回復訓練や、嚥下や言葉の訓練に戻っていますが、
いつまた誤嚥するか(自分の唾を飲み込めずに気管支に入ってしまう)予断を許しません。
90歳まで元気で、やりたい放題生きてきた父の、これが「ただ今の状態」です。
こういう出来事を「迷惑」と言いますか?
迷惑を掛けたくないからと、ひとりで乗り切れますか?
父とは40年間同居です。この間、どれくらい私や妻に”負担”をかけたことでしょう。
夫の両親と同居するという苦労は心身共でありまして、言葉で表現できません。
■子をきちんと評価して「相続」に反映
老後というのは長い下り坂─────
長いゆるやかな下り坂だと思っていました。でも父のことがあって
《ゆるやかどころか、突然の奈落というのもあるんだな》と実感した次第です。
こういう老後をひとりで迎えるとしたら、大変なことです。
では私たちがひとりになったとき、ただちに子らと同居すべきでしょうか。
そうしたくても、現実的には難しいというのがふつうでしょう。
慣れ親しんだ家から離れたくない気持ちがあるし、子たちの都合もありますから。
だから相談を受けたとき「ご家族と同居するのがベスト」とは言いにくいんです。
そういうことがわかっているからこそ私たちは、
「子に迷惑をかけたくない」などと先回りして言ってしまうんですよね。
でも、もしあなたが相続対策をお考えなら、そういう発想は捨てましょう。
迷惑が掛かろうが掛かるまいが、私たちの「安心」を第一に考えなければなりません。
お子さんがいるなら「同居」も視野に入れること。
同居と言うのはどちらの側にも(子の立場、親の立場双方)
強い覚悟がいることですし、現実的には難しい場合が多いかもしれません。
それでも初めから可能性をゼロにしてはいけないと思います。
子らへの相続を考え相続対策に頭を悩ませているなら、
「ひとりになった親をどう見守り、具体的にどういう行動を取ってくれるのか」
というのは、子を評価するときの重要なポイントのひとつであることを理解してください。
はじめから”好い人”ぶって「迷惑を掛けたくない」なんて決して言わないで!
親が老後を迎えるということは、子にとって避けては通れない重大事です。
そこを素通りさせて、財産だけあげようとすれば、ろくな結果にならないと断言できます。
あなた自身が後悔するでしょうし、子の人生にも良い影響を与えないでしょう。
■あなたは我慢してはいけない!
先ほど9つの不安を挙げました。
どれも「ひとりになる」ことへの恐れが根底にあります。
この解決方法は、子がいる場合、いない場合で違ってきます。
子がいない場合は第三者の手を借りなければなりません。
子がいる場合でも、頼りになるかならないかで対処法は変わってくる。
どんな場合でも解決策はあります。(その点はご安心ください)
でもそれには、1つだけ条件があるんです。
あなた自身が意識を変える、ということです!
不安を直視するのです。問題に向き合ってください。
《私には不安がある、これを解決しなければ安心して生きていけない》
と、あなた自身が強く思わなくてはいけません。
あなたが我慢してしまうと、何も解決しないで時だけが過ぎてしまいます。
■「あなたの意思」をはっきり伝える
「相続対策」からこのブログを見つけ、まさかこんなことを言われるとは思ってもみなかったでしょう。
私の基本的な考えはこうです。
- 相続の悩みは、「問題」が明確ならほぼ解決する(専門家に相談すること)
- だから順番を急がず、まず自分の「老後の安心」を確保する
- その状況を踏まえて、しかる後「相続の方針」を決める
- この過程はひとりでやらずに家族全員と情報共有をする
当たり前のことだと思うんですが、実際にこういう相続対策をしている人はまずいません。
遺言もひとりで書こうとします。
そして「遺言書を見つけてくれるか心配だ」などとおっしゃる。
ナンセンスです!!
なぜ隠すんですか?
「相続」はなにもあなたの財産の仕分けではありません。
あなたの「思い」を引き継いでもらうのが主ですよ。
それに伴って財産の割り振りをするのです。
あなたの財産をもらうのは当然の権利、ではありません。
あなたの「こうしてほしい」が前面に出ていいんです。
それが”渡す人”の権利なのです。
「私の遺す財産のために皆がもめるなっ!」と思うなら、今からきちんとクギを刺しておきましょう。
相続するであろう人、全員にです。
あなたのゼッタイテキな声がなければ、人は金銭のためにいとも簡単に争うようになります。
■「思い」を秘め事にしてはいけない!
あなたが望む「相続」の形を私は
- 遺言書
- 生命保険
- 家族信託
などを使って実現させます。
この3つの方法・ツール・手段には使い方があります。
どれも強力で有用な”道具”です。
でも「あなたの意思(思い)」以上に強力な手段はないんですよ。相続において。
だからこそ意思を”秘め事”にしてはいけません。
「父や母はこう言っていた。こうすることが両親の意思だ」と誰もが理解していれば、
相続はおさまるべきところに収まります。
遺言書はあなたの意思の確認のためにあるのです。(だめ押しですね)
相続対策というのは大仕事ですよ。
あなたの最後の意思を完成させるプロジェクトです。
まずは長い下り坂を無事に乗り切る算段をしましょう。
その目途を付けたら、ご自分の相続をどうしたいのか、具体的なイメージを持つ。
熟慮が必要で長い時間がかかりますから、取り掛かるのはお早めに。
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<ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)>
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