★「寝たきり100歳社会」の悪夢、だって!?──生き抜いて死に切らなければ人生の価値なぞ分からない!

まさかの長生きを悪夢にしないB

<人類が初めて遭遇する「寝たきり100歳社会」の悪夢───>
朝刊下の「週刊新潮」広告のど真ん中に載っていた見出しだ。
言葉のおどろおどろしさに比べて文字が小さかったので、気に留めた人は少ないかもしれない。
しかし私はドキッとした。

遠い記憶がある。
高校時代、ひそかにあこがれていた女生徒がいて、照れくささまぎれにこんな軽口を言ったことがある。
「お前なんかしぶといから、95歳で寝たきりになって100歳まで生きるんじゃないか⁈」

デリカシーのないこと、はなはだしい。
若気の至り。笑ってくれなかったのでしばらく落ち込んだ。
100%冗談、まったくの想像力が言わしめた軽口なのだけれど、
50年後の今、それが現実になっている。

いや、週刊誌の話ではなくて
自分の身、私の家族に現に起こっていることなのだ。
父も母も、ことし90歳になった。
ふたりとも”寝たきり”である。

母の介護が必要になったのは7年前、私はまだ以前の職場にいた。
暮らしは一変した。
2年間で、家内も父も私も「介護」で経験するであろうことは一通り経験した。
デイサービスもショートステイももちろん大いに利用。
おかげで母の生命力はまだまだ輝かしかったと言える。

しかしやがて背中に褥瘡(じょくそう)ができてしまい、私たちは骨まで見える大きな穴に打ちのめされた。
素人の私たちは手当にも及び腰でらちが明かず、老人病院にすべてを託すことにしたのだった。
プロというのはすごい、時間をかけてあの背中の傷を完全に治してしまった。
が、母のパーキンソン病は進み、やがて嚥下する能力を失った。
ある日見舞いに行ったとき、母には、鼻からチューブが胃まで通され「経鼻経管栄養法」が施されていた。

その頃から母の意思能力はほぼ失われ、目も開かず、眠り続けたまま早3年余が過ぎている。

父は今年正月に脳梗塞で倒れた。
以後の経過はまるでジェットコースターだ。
▼発症5日目で鼻からチューブ→▼3週間で退院→▼リハビリ病院で回復訓練→▼3週間後に誤嚥肺炎を起こし危篤に→▼3週間で回復を果たし→▼またリハビリ→▼2か月たって鼻からチューブが抜け→▼今は口から自力摂食。

現在の父の状況を見れば、”奇跡の回復”ぶりである。
しかし介護にはめでたしめでたしがない。
小康を得ているが楽観はできず、リハビリしても立てず歩けずかもしれないし、万全な訓練を受けたいにしても医療と介護制度の壁がある。
また家族にとっては、経済的な負担は予想以上に重い。

週刊新潮の見出しを思い出してほしい。
「(親の)長生き」をほんとうに喜べる人はどれだけいるだろう。

「寝たきり100歳社会」の悪夢───なのである。

誰にとっての「悪夢」なのか?
私の母や父は今、幸せなのだろうか。
私たち家族は40年間も「三世代同居」で暮らしてきた。
他の家族に比べて”老後の安心”は保障できるはずだった。

でも、である。
父はやがて本人の希望通り住み慣れたわが家に”帰還”するだろう。
しかし冷静に言えば、プロのいる、医師、看護師、介護関係の各種療法士、ソーシャルワーカーの手と目がある施設に比べて「わが家」は、危険度が格段に高いと言わなければならない。
「家に帰る」は最悪のシナリオかもしれないのだ。

安倍政権の「介護離職ゼロ」の掛け声は立派だ。
でも、絵に描いたモチであろう。
現実には介護者の手が足りず、「介護は家庭で」と言わんばかりの政策が打ち出されている。
介護度5の親の帰還は子の私、嫁である家内にとっては「悪夢」の面がないとはいえない。

「寝たきり100歳社会」の悪夢───
こういう八方ふさがりの状況にいると人は安易に「延命拒否」に走りそうである。
昨今の「エンディングノート」ばやりで、そそっかしい人は「延命のための延命は拒否」などと平気で無茶な選択をする。
一度書いているのでこの問題に今は踏み込まないが、「延命=無意味、悪」だと決めつけられるものではない。

否も応もなく、私たちは「寝たきり100歳社会」に直面している。
今のところ「悪夢」を「よい夢」に変える方策を持ち合わせていない。
と言って、現実に親を抱えながら生きている私たちは、これから自分も超高齢、長生き悪夢社会に”参戦”していく身である。
誰も代わりはしてくれない。
だから私たちは、相当な覚悟を固めて生きていこう。

きのう私は「老後はマイホームを売ってまちなかのマンションに住み換えたい」とやや楽観的な自分の願望を書いた。
妻も私も理想的に元気で長生きしているなら、そうしたい。
でも、心の半分以上で『それほど甘くはあるまい。その時はどうする?』と考えをめぐらせている。

まさかの長生きリスク、それも寝たきりのまま長生きしてしまうという現実を私たちは目前にしている。
考えて考えて、考え抜いてどんな覚悟を持ち、どう対策していけばいいかを突き止めたい。
現実は難しいが、「悪夢」にはゼッタイにさせないように。

◇・・・・・・・・・・・・・・◇

この記事を書いてから4週間たった。
きょう父が暮らす介護老人保健施設「池田の街」に行ってきた。
父は先週、リハビリ病院からこちらに移った。
リハビリ専門の病院は、施設も機器もスタッフも充実していた。

父は食堂でポツネンとしていたので車いすを押して病室に帰り、電気カミソリでヒゲを剃ることにした。
しばらくして若い女性スタッフが「リハビリをしましょう」と父を連れ出してくれた。
彼女の担当患者は本日、5人。
1人ひとりにスタッフが付くリハ専門病院とはえらい違いだ。

ほとんど休む暇なく患者と対し、声を掛け、手を取り、足を取りして患者ごとに別々の指示を与え、付いて支え時には手を離し、自力の動作を動かしている。
患者さんは父と同様、高齢で、みな障害を抱えている。
右半身が生きている人は”優等生”に見える。利き腕の重宝は歴然としている。
歩行器を使いながらでも歩ける人は”エリート”だ。

父はスタッフに励まされ、車いすから懸命に立ち上がろうとし、成し遂げた。
平行棒を左手で握り、平衡を保った。「もっと背中を伸ばしてッ」と励ます
右脚はマヒしている。の、はずだったが、ほんの少し自力で前に踏み出し、次に利く方の左脚を送った。
転倒しないよう、スタッフが半分手を添え傾きを調整しつつも、父は10歩、歩き切った。

人も足りない、機器も揃ってはいないが、部屋には活気が満ちていた。
「寝たきり100歳の悪夢」と書きながら、僕は何を言いたかったのだろう。
めげないぞ!と言いたかったのか。
当事者顔して、傍観者のようなことを書いていた。

高齢だから、100歳だからと、年齢で人の命を値切ることを批判しておきながら、高齢社会に希望はないようなことばかり書いてきた気がする。
猛反省した。
人間は、いくつになってもすごいぜ!
最後まで生き抜き、死に切ってみなければ”人生の価値”なぞ分かりはしない

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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