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★相続が終わった後に借金取りはやって来る。相続放棄、今さら無理か⁉

「相続後に借金取りはやって来る!

相続が終わった後に”借金取り”はやって来る!
きのうの夕方、高知の女性から電話があった。
「娘が1年前に亡くなり、きのう業者から通知が来て・・・・。相続放棄できませんか?」
聞いた瞬間、「残念ながら」という言葉が浮かんだ。

 

■娘が亡くなり1年後に借金取り

娘さんに先立たれたら誰だって動揺する。
1年たっても気持ちを立て直せないかもしれない。
そんなときに金融業者から「通知」が舞い込む。
相続人であるあなたには、娘が借りた金を返済する義務がある──云々。

相続後に借金判明!

娘が亡くなった1年後に「借金返せ」の通知が来たら⁈

 

大多数の家族にとって、娘や息子の借金は寝耳に水のことだろう。
連帯保証人になったわけではない。
いつ、何のために、どういう借金をしていたのか・・・・聞かされたことさえない。

 

■「常識ですよ!」と督促されて

しかし「相続する」ということは、プラスの財もマイナスの財産も丸ごと承継すること。
「常識ですよ!」と言われればその通りなので、普通、ここで観念してしまう。
金融業者の狙いは、まさにソコ!
相続放棄ができなくなってから現れる。
民法にこんな条文がある。かなり多くの人がご存じのはずだ。

 

相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条
  1. 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
  2. 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

 

相続があったことを知った時から3か月以内なら相続放棄ができるらしい。
電話の女性もこのことを知って掛けてきた。
「1年たっているので・・・・、それでも相続放棄できますか?」という質問。

 

「3か月間」というのは熟慮期間と言われる。
「よーく考えて決めてくださいよ」という意味だが「よく考える期間」としては、3か月では短すぎる。
現状でいうと、人にカネを貸した業者にとっての”猶予期間”ではないか、とさえ思えるくらいだ。
相続が発生し、直後に督促すれば借金があることが遺族にバレて”相続放棄”されておしまい、だからこの期間は”じっと我慢だよ”という期間⁈
現実的にはそのように使われている「3か月間」なのだ。

 

■相続放棄が認められる例も

だからGoogle検索してみるとこんな結果がズラッと並ぶ。
[相続後に_借金]

相続後に借金判明

 

「3か月」たったらすべて後の祭りだろうか。
そうばかりでもないようだ。
『相続なんでも相談室』で行政書士の宮澤優一さんは、「父の死から半年後に借金判明」へに回答し、以下のようなことを書いている。

 

あなたがお父様の相続財産を売却したり、預金を使ってしまったなどの事情がなければ、今からでも相続放棄できる可能性があります。・・・・
最高裁判所は、「亡くなった方との関係から相続財産の調査などが困難で、亡くなった方に相続財産がないと信じたために相続放棄の手続きをしなかった場合、相続人が相続財産について認識することができた時点から3か月を計算すべき。」と判断しています。
今回のご質問のように、予想外の債権者などから借金返済などの請求を受けて初めて亡くなった方に借金があることが分かった場合には、相続放棄を認めてもらえる可能性が十分にあるということです。・・・・

 

上記は、法的に「錯誤無効」が認められた例を示している。
「父親に借金がないと思った」というのが”錯誤”で、「錯誤に基づいた相続承認は無効でいいですよ」というのが最高裁の判断、というわけだ。
ただしこれには「父親の相続財産に手を付けていない場合」という厳しい条件が付く。

 

もうひとつの例。
マイタウン法律事務所の法律相談「相続法律ガイド」』

【状況】
父親が亡くなって10ヶ月近くたってから遺産分割協議書を作成し、押印した。しかし、その数ヶ月後、父親に多額の借金があることが判明。
<解決> 家庭裁判所に相続放棄の手続きを申し出るが、相続放棄は期間が過ぎてしまっていることにより、認められなかった。そこで、高等裁判所に不服申し立てをしたところ、家庭裁判所の判断を取り消し、相続放棄が認められ、借金の責任を免れた。

【状況】
長年別居していた父親が死亡。借金があるとは思ってもいなかった。死亡後半年以上経って、突然多額の借金が判明。
<解決> 家庭裁判所に事情を説明した上で、相続放棄の申し立てをして、受理された。借金の責任を免れた。

 

いずれも父親の借金が半年~10か月後に分かったケース。
最終的には裁判所で「相続放棄」が認められている。

 

■「熟慮期間」を業者に悪用させてはいけない

以下は私の私見だ。

 

民法は誰の味方なのか。
現状では(先ほど書いたように)、相続放棄や限定承認の熟慮期間のはずの「知ってから3か月」が、遺族が(借金を)知らずに相続してしまう、というより法的に「相続したとみなされ」逃げ道がなくなるまで業者がじっと待っている期間、になり果てている!

 

裁判所は”正義の観点”からこの現状を見つめ直すべきだ。
個人の借金があることを知らずに月日がたった、借金があることなど到底予見できなかった今回の電話のケースなど、積極的に「みなし相続は錯誤無効だった」との判決をどんどん出していい。

 

現在、各レベルの裁判官が右に倣え(ならえ)をしている判例は1984年4月27日の最高裁判決と思われる。
この裁判では相続放棄等の熟慮期間の「起点である日」がいつであるかが争われた。
最高裁の判決は以下のような内容であり分かりにくい。

 

 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。

 

判決を通常の言葉に書き直すとこうなる。
「原告は相続放棄をしたいために”熟慮期間”の起点(知った日)の繰り下げを求めた。起点の繰り下げは、相続人が<相続財産がまったく存在しないと信じたか、信じるに足る理由があるとき>だけ認められる」
つまり「財産がないんだから、わざわざ相続放棄をするまでもない」と信じた場合だけですよ、という意味だ。
(それ故、『相続なんでも相談室』の宮澤さんの回答は、この判例を非常に前向きにとらえた解釈と言える)

 

最高裁の解釈は、熟慮期間の繰り下げを消極的にとらえている。
法の最高機関がこんな法解釈をしてしまうと、下級審としては”相続人が現実に感じている意識とズレている”と思ったとしても、お上になかなか逆らえない。
それでも下級審ではチラホラこの判例を覆す判決も出ている。
勇気ある”反骨精神”である。
こういう判決がの積み重ねられていくと、最高裁もいずれ考えを変えるかもしれない。
そのためには、訴訟の入り口にいる弁護士が勇気をもって
「この事例、いけるのではないか」
と戦う姿勢と勇気を持つことがなにより肝要だ。

 

金融業者が”熟慮期間”を”(相続人に)逃げさせないための我慢期間”としているような不正義を、いつまでも許していてはいけない。

 

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ジャーナリスト石川秀樹相続対策の総合プロデューサー行政書士

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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★筆者のプロフィール

俺丸200

石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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