■法定相続人は民法で規定
法定相続人とは、民法で定めた相続人のことです。配偶者は常に相続人になり、亡くなった人(被相続人)の子は第1順位の相続人になります。子がない場合、親が第2順位、兄弟姉妹が第3順位の相続人です。
民法887条 (子及びその代襲者等の相続権)
- 被相続人の子は、相続人となる。
- 3.(略)
- 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
- 一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
- 二 被相続人の兄弟姉妹
- (略)
民法890条 (配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
■法定相続人には順位がある
被相続人が残した財産(遺産)は、亡くなったときから法定相続人の「共有」になります。被相続人が遺言書を残した場合はその内容に沿って分配、遺言書がない場合は法定相続人全員で遺産分割協議を行い遺産の分配を決めます。その意味では、法定相続人は遺産をもらえる人ではなく、遺産の権利者でもあります。
民法では「法定相続分」も決めています。しかし必ずその通りに分けなさいということではありません。遺言書で法定相続人以外の人や法人、団体などに分けるよう指示できます。遺言書のない場合には遺産分割協議を行いますが、相続人が一致すれば法定分とは異なる分配を決めることもできます。
さて、法定相続人のうち配偶者は常に相続人です。
その他の相続人には以下のような順位があります。
第1順位 被相続人の子(養子や認知した子も含みます)
第2順位 被相続人の親(養親も含みます)
第3順位 被相続人の兄弟姉妹
※養子が死亡した場合、配偶者と子がいる場合はその人たちが相続人になります。子がいない状態で養子が死亡した場合は、養親と実親も相続人になります。
※第2、第3順位の法定相続人が相続できるのは、前順位の法定相続人がいない場合だけです。
(前の順位の相続人が1人でもいる場合、次順位の人は法定相続人になりません)
以上をまとめたのがこちら。
亡くなった人(被相続人)に子がいる場合、相続は赤い点線の枠内で完結します。
第2、第3順位の人は相続人にはなりません。その意味では日本の相続は「核家族主義」だといえます。
なお、子がすでに他界している場合は子の子(被相続人の孫)が相続人になります。これを代襲相続といいます(民法887条2項)。
■内縁関係は相続人にならない
配偶者は常に相続人になりますが、婚姻届を提出していない事実上の夫婦(内縁)は互いに相続人になりません。
離婚した元配偶者(前夫、前妻)は相続人ではありません。しかし元の配偶者との間にできた子は、夫婦が離婚していようと子と別居していようと、相続人です。血縁としての親子関係は戸籍に載っているわけで、これは当然のことです。しかし離婚以降、子と疎遠になっていて現在の家族にもその事実を話していない場合は、思いがけない相続人が表れて相続が混乱することがありますから、ご注意ください。
[第2順位]のところで「養親(ようしん・やしないおや)も含みます」の意味がお分かりなったでしょうか。注釈を簡単に書きましたが、養子は実親と養親のどちらが亡くなった場合でも相続人になるのです(※「特別養子」の場合は戸籍上、実親との親子関係はなくなります)。これと同じ文脈で、養子が養親より先に他界した場合、養子に子がなければ養親も相続人になるわけです。
以上、いずれにしても法定相続人は相続が開始される時点で「生きている人」でなければなりません。胎児も生きて生まれれば法定相続人になれます。
そのほか「相続放棄をしていない」、相続の「欠格者」「廃除者」でないことが最終的に法定相続人になるための条件です。
※欠格者、廃除者の子は代襲相続ができます。しかし相続放棄をすると「はじめから相続人ではなかった」とみなされるので、その子の代襲はありません。
◇なお、法定相続人には以下のような「法定相続分」があります。
- 第1順位 配偶者1/2:子1/2
- 第2順位 配偶者2/3:親1/3
- 第3順位 配偶者3/4:兄弟姉妹1/4
※「法定相続分」についての詳しい解説はコチラ↓
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<ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)>
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