よい相続にするために遺言書は欠かせません。
しかし分け方の数字を書いただけの遺言書はただの「仕分け指示書」となり、かえってもめごとの種になるかもしれません。
<こういう想いだからこう相続させる>と、あなたの言葉で意思を明確に伝えることが重要です。
その重要さは自筆遺言でも公正証書遺言でも同じ。
あなたの書き方が相続を円満にもするし、ぶち壊しもするのです。
■遺言を遺す人は10人に1人より少ない⁉
最近、日本公証人連合会が「公正証書遺言がついに10万件を超えた!」と発表しました。
これは遺言書の定着を意味するのでしょうか?
統計をよく見てください。
日本ではまだ、亡くなる方の10人に1人さえ遺言を遺していないのです!
日本では年間120万人の方が亡くなります。
10年後、団塊世代が後期高齢者になる2025年には、年間170万人が亡くなるだろうと言われています。
これは私の想像ですが、その頃には遺言を書く人が飛躍的に増えそうです。
1つの理由は、▼法の後押しです。
すさまじいスピードの超高齢社会の到来で”介護難民”もささやかれる昨今です。
介護の手を「家庭に戻したい」と政府は考えています。
そこで出てくるのが「遺言書の優遇策」。
介護してくれたお嫁さんなどのために遺言書を遺した場合、相続税の基礎控除額を一定程度増やす、などの案が考えられているようです。
(お嫁さんがそれで報われるなら大賛成です!)
もう1つ、こちらの方が大きな理由になると思いますが、
団塊世代以降の人たちは(自分を引き合いに出すのもなんですが)、自分の生き方や価値観を大切にし、権利意識が強いです。
「生き方」と同様に「死の迎え方」にもこだわりがあります。
私たち世代は遺言書をただの「遺産の仕分け帳」とは考えず、
▼自分の足跡を次世代に託すための「指示書兼依頼書」として使うようになるのではないでしょうか。
■遺言の中身、9割までがお金のこと
なぜ遺言を書くのでしょうか。
民法の考え方は、①財産を次代に引き継ぐ、②血縁の系譜を整理する──この2点だけを意識しているようです。
だから遺言として法的な効力を持つのは以下の3項目だけ、とされています。
- 相続に関すること
- 遺産の処分に関すること
- 身分に関すること
1.で言っているのは「相続分の指定」などです。
遺言者は相続人の誰にどれくらいの割合で相続させるか、法定相続分にとらわれることなく決めることができます。
だから遺言書は法定相続人全員で行う「遺産分割協議」に優越します。
遺言者側の意思が尊重されるのです。
2.は、相続人と相続人以外の人や団体、組織、会社などに財産の全部またはその一部を遺贈することを意味します。
1.と2.で民法が規定しているのは要するに「自分の財産なんだからあなたの意思で、自由に処分していいよ」ということ。
(もっとも民法は、法定相続人の権利として「遺留分」を設け、”好き勝手に分けること”に一定の歯止めをかけていますが)
3.は「子の認知」や「子の廃除(とその取り消し)」、その他、未成年者後見人や未成年後見監督人の指定など。また祭祀継承者の指定などができます。
要するに、家系的に後顧の憂いがないようにしようという配慮がみられます。
遺言相続に関する民法の9割までがお金に関することになっています。
そういう背景があるので、遺言書の使われ方の大半がお金(財産)に関することになるのは致し方ないことかもしれません。
もしも遺言書に不備があって遺言者の意思が最後の最後で実現しないようでは困る、というわけで「遺言は公正証書で」という傾向も強くなります。
■時間短縮と争族防止も遺言書の効果
ただ、遺言書はお金をどう配分するかだけの指示書でしょうか。
遺言を書く目的は人それぞれですが、大きく分けると4つの目的があります。
- 私があげたい人にあげる(不公平に分ける)
- 相続人たちの生計を援助する
- 家系や事業をうまく引き継ぐ
- 思い残すことがないようケリをつける(死後の認知などが典型)
今度は遺言書を「効果」の面から見てみましょう。
4つの目的を達成できるだけでなく、こんな効果もあるのです───
- 相続にかかる時間を圧縮できる
- (相続人間の)もめごとを回避する
1.については、①しっかりした遺言書があれば「遺産分割協議」をしなくて済む、②それゆえ長期の不在者、認知症などで意思能力を喪失した人、未成年者などに対する手続きを省略でき、また⓷気まずい関係の法定相続人に会わなくても済む、などの利点があります。
さらに遺言書には、利害得失をめぐり感情的に激した相続人たちをなだめる効果もあります。
「亡くなった人の言葉」は相続人たちにとっては何より重いですから。
■遺言書の本質はあなたが遺す最後の想い
遺言書の本質は無味乾燥な「遺産分割指示書」ではありません、
遺言書の本質は「遺言者が最後に遺す言葉(想い)である」と私は思っています。
民法にはただの1行もそんなことは書いてありませんが。
同時に「相続」とは、家族や親族に財産を遺すこと、ではないとも思っています。
私の結論は先に書きました。
相続とは、自分の足跡を次世代に託すこと───だと。
託すのはお金や形のある財産のみではなく、「資産をどのように築いてきたかという信条・信念・ノウハウ、資産形成に伴う喜怒哀楽までを含んだ想い」です。
これらを次世代に理解してもらうには「財産仕訳帳」では足りません。
大切なのはあなたの言葉です。
誰にどのように分けるかには、あなたの狙いや想い、相続人に対する理解があるはずです。
この辺のことはむしろ生前にやっておくのが理想です。
しかし生身の人間同士だと伝えにくいということがあるかもしれません。
そこで、遺言書があなたの想いを伝える最後の機会になるわけです。
遺言書を書くとき、公証人はもちろんのこと、税理士や弁護士などに相談する人は多いと思います。
財産の仕分けだけならそれで十分かもしれません。
でも、肝心かなめ、あなたが遺す「あなたが一生かけて築いてきた想いや財産」をきちんと相続してもらうためには(相続税などの)数字の達人たち任せでは足りません。
最後は「あなた」という存在感が相続人たちの心を打つのです。
あなたが相続人一人ひとりに声を掛けるべきです。
声の掛け方ひとつで相続人の想いはまったく違ったものになります。
文章のうまい下手ではありません。心です。
■よい相続のためあなたの言葉を!
民法には1行も記されていない”面倒な作業”をあなたにお願いするのは、
それがなければあなたの想いが遺っていかない、遺らないどころか、『財産をもらえてよかった』『十分でなかったから悔しい』・・・・など、本質ではない欲得だけが相続人をとらえ、あなたが生きてきた意味を心にとどめることがなくなってしまうからです。
「相続対策」では、財産の適切な割り振りが求められます。
相続人たちを争わせない工夫も必要。
相続人に過剰な負担を掛けない節税法も大事かもしれません。
それより何より「あなたが遺す言葉」が決定的な要素になります。
相続対策で「遺す言葉」の大切さを訴えているのは私だけかもしれません。
気づかれていませんが、相続対策のポイントです。
私にご相談ください。
いろいろお話を伺う中で、あなたの本当の想いがあふれ出てくることでしょう。
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<ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)>
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