一生涯で築いた財産を遺す相手は家族だけでしょうか?
親の遺産をめぐって争いを続ける親族の姿を見るにつけ、(相続のプロとしては言ってはいけないことと自覚しつつも)もっと有益な残し方があるのに、と思ってしまいます。
きょうは「遺贈」と「遺言書」について、ひとりごと・・・・・・
さまざまな相続の様子を見聞きするたびに、『相続は法律の下に行われるのだから、正確な知識とその応用技術がないとうまくいかない』と痛感します。特に残念なのは、遺言を書かかずに亡くなってしまうケースです。諸事情があって、誰しもがわが子に財産を遺したいと必ずしも思っているわけではありません。
しかし遺言を書かなければ、故人の遺志とは関係なく、法定相続人の間でのみ遺産が分配されることになります。そんなときに限って、身内での争いが起こってしまいます。
《枚挙にいとまない遺言の失敗例》
遺言がかえって”争族”の引き金になってしまうことは、ままあります。遺言を遺す側が老いて衰えてくると、親族の中には急接近し「自分に有利な遺言」を書かせる者も出てきます。後に裁判沙汰になる激しい争族の典型です。
一方、せっかく遺言を書いていても自筆遺言書の場合は、要式が整っていないという理由で「無効」になってしまう例が多いですし、あまりに極端な分け方をすると、子や配偶者から遺留分減殺請求をされる恐れがあり、そういう遺言書も少なくありません。
遺言は財産の行方を決める影響力の大きい私文書ですが、書く人はあまりそのことを意識していません。専門家に目を通してもらうという一手間を惜しむために、取り返しのつかないミスが出る、という場合が多いのです。
《家族にあげたくない遺産を社会のために》
今日日は、家族に相続させたくないという人も少なくありません。相続人がおらずひとり暮らしで、いずれ財産は国庫に帰属……という人も増えてきました。こういう人たちは、ゼッタイに遺言を書いておかなければなりません。
そしてできることなら「自分が築いた財産、使わずに残ってしまった(かなり巨額の)財産を、最後は誰にあげたいか」を書いていただきたいのです。でも十中八九は何もせずに亡くなってしまいます。まことに残念の極みです‼
一方、NPOやボランティア団体、行政の一部では世のため人のために活動している組織はたくさんあります。その多くが慢性的な人手不足と財源不足を抱えています。「必ずしも家族に相続させるのでなくてもよい」という人たちの遺産を、遺贈の形でこれらの団体に“誘導する”ことができないでしょうか。
遺言を書いてもらうことが第一の手段になります。
ただし「遺言」は家族に秘密にしておくと、例えば「全財産を○○○○に遺贈する」というような内容ですと家族は仰天し、強い怒りとともに団体に対し遺留分減殺請求をしてくるかもしれません。こういう形は本意ではありません。大金を家族以外の人や団体に遺贈する場合は、家族にきちんと話をし、納得させるという手順を踏んでおくべきです。この辺も“遺言の技術”の1つです。
《「家族信託」は遺贈のもうひとつの形》
遺贈のもうひとつの手段は「家族信託」です。
「この財産を○○○○に寄付したい」と思ったら、自分が委託者兼当初の受益者になり家族の誰か(例えば長男)を受託者にして、○○○○を委託者死亡後の“残余財産”の受益者として信託契約を結ぶのです
(契約の当事者は委託者と受託者、つまり家族内の契約です。受益者はもらう権利が生じるだけで、契約にはかかわりません)。
このようにしておけば、委託者が死亡すると受託者が信託を清算し、受益者の○○○○にこの財産を贈与することになります。信託は「契約」によって行いますから委託者の生前から効力を発揮し(○○○○は贈与を受ける予定者になる)、その意思は固定されます。いつでも書き換えられる遺言よりも明らかに安定感があります。
またこういう信託は家族の協力がなければスムースに実現できませんから、家族が不意打ちを食らうことはなく、寄贈に伴う混乱を避けることができます。
《しっかりした受け皿組織の構築》
「有益な団体にあなたの想いを遺そう」というこのキャンペーンは、一歩間違えると、とてもうさん臭く見られそうです。ですから、少なくともキャンペーンの主体となる団体は社会的に信用される公的な性格を持った組織でなくてはなりません。
静岡市に住む私が今パッと頭に浮かぶのは、▼静岡ビジネスサポートセンターや▼静岡県遺言書協会(※これは私が所属している団体ですから自分で書くと”あざとい”提案になりますね。撤回!)。
さらにしっかりした”受け皿”を創るなら、▼静岡商工会議所や▼静岡市の行政機関、▼他の公益性あるNPO──などと連携して、世のため人のため、この地域のためになる<民間主導ではあるが公的機関が公平・公正を担保するような組織>を作り「遺贈の遺言」をサポートしていくのが望ましいと考えます。
今は夢のような話ですが、つくっていきたいですね。
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静岡県遺言普及協会
ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)
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