遺言執行者とは、遺言の確実な実行のためにとても大事な役割を果たすキーパーソンです。
遺言執行者が選任されていない場合は、登記や名義変更手続きは相続人が全員で行わなければなりません。というのは、法律上の観念として、亡くなった人の財産は、亡くなった直後にいったん相続人全員の共有となり(民法868条)、正式な名義変更登記がされると、今度はそれぞれの相続人の所有物に変わるからです。
というわけで、遺言の内容を実現してゆくためには相続人全員が協力して相続手続きをしなくてはならないのですが、遠方の人や、遺言に不満な人がいる場合は、手続きに快く協力してもらえず、スムースな手続きの執行が難しい場合があります。こうした事態を避けるために共同相続人全員の代理人をする遺言執行者制度があります。(民法1006条―1021条)
遺言者が死亡すると、遺言執行者は遺言書の検認手続きを行い、相続人全員に遺言執行者に就任した旨の「通知」を出します。遺言執行者が就任すると、相続人は遺産の管理権、処分権を失い、代わりに遺言執行者が遺産の管理をします。
遺言執行者は権利書や銀行の通帳などを相続人から預かり、遺産目録を作成します。これを相続人に交付し、それぞれの遺産が遺言のとおり、相続や遺贈がされるよう、代理権を行使して、名義変更の手続きをします。銀行などの名義変更手続では、遺言執行者がいなければ全相続人が押印を求められたりして、相続人側も銀行も大変難儀をします。遺言執行者が決められていれば、相続人も銀行も大助かりです。
遺言執行業務が完了すると遺言執行者から精算報告がされます。
遺言執行者の報酬は遺産から差し引いて支払います。報酬については遺言者と生前に契約してあるはずです。契約してなければ家裁で決めてもらいます。名義変更など遺言の執行に要した費用も遺産から精算します。
遺言執行者の仕事に疑問がある場合は、家裁にお尋ねください。
相続人が海外にいる場合などは、ぜひ遺言執行者を決めておきましょう。
遺言執行者には執行できる能力のある成人であれば誰でも就任できます。相続人が執行者になっても構いません。しかし、遺言執行者になった人が、就任手続きや執行の仕方を知らないと混乱しますから、遺言の専門家である行政書士、登記の専門家である司法書士、紛争処理の専門家である弁護士に依頼するのが賢明でしょう。
遺言執行者を指名したあとは、執行者を家族にも紹介しておきましょう。あなたの死後、家族の知らない人が突然現れて「私が遺言執行者に指名されている者です」なんて言われたら驚きますよね。ですから、生前からご自分が遺す財産について家族ときちんとコミュニケーションをとっておくことが大事です。
【遺言相続に関する用語集】
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<ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)>
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