「うちには相続税がかかるのか・・・・」と考え込むより、相続税の計算法を知りましょう。
2段階方式、電卓を打てる人なら手順通りにやれば計算できます。
相続税、計算法を会得すれば視界がすっきり晴れますよ。
■「法定相続した」と仮定して計算
国税庁のホームページに出ている以下の表を解説しましょう。
[正味の遺産額]が2億円のA家の例です。
法定相続人は妻と子2人(夫が亡くなった「1次相続」です)。
※後半で説明しますが、正味の遺産額が2億円あるという家庭はかなりの資産家。
それでも相続税は1350万円、率にして6.75%にすぎません。
では、相続税の計算法を順にご説明します。
【Ⅰ】[基礎控除額]を計算し[課税遺産総額]を算出
正味の遺産額から基礎控除額を引いたものが[課税遺産総額]です。
そして相続税は、課税遺産総額に対してかけられます。
基礎控除額=3000万円+600万円✕法定相続人の数
A家の場合は
3000万円+600万円✕3=4800万円
課税遺産総額=正味の遺産総額―基礎控除額
2億円―4800万円=1億5200万円
【2】課税遺産総額を法定相続分で按分する
A家は法定相続分通りに遺産を分けると決めているわけではありません。
相続税額は相続人の得た額によって変化します。当然、相続人全員の税額も「分け方」によって差が出ます。
税務当局は分け方による税額格差を嫌います。
このためどの相続でも、いったん「法定相続分で分けた」とみなし相続人ごとの税額を算出、それを合計して相続全体の相続税額を割り出します。
妻 1億5200万円✕1/2=7600万円
子 1億5200万円✕1/4=3800万円
子 1億5200万円✕1/4=3800万円
■「総額」を実際の相続額で按分
【3】按分した金額に見合った「税率」を掛け、各相続人の税額を出す
各相続人の税額を足し「相続税の総額」を出す
税率計算には「相続税の速算表」を使います。
子 3800万円✕0.2―200万円=560万円
子 3800万円✕0.2―200万円=560万円
相続税の総額 1580万円+560万円+560万円=2700万円
【4】相続税の総額を相続人の実際の取得額で按分
A家の「相続税の総額」は【3】の計算により2700万円だと分かりました。
この2700万円を、相続人が実際に遺産を取得した割合でさらに按分します。
国税庁の試算は、「実際にA家は法定相続分で遺産分割した」として計算しています。
子 2700万円✕1/4=675万円
子 2700万円✕1/4=675万円
※上を合計すれば「2700万円」。なんだ、【3】同じじゃないか──と言わないでください。ちゃんと意味があるります(後で説明します)。
【5】実際に納める税金の額を出します
子 675万円 → そのまま「675万円」
子 675万円 → そのまま「675万円」
A家が納めるべき税額 675万円+675万円=1350万円
■正味の遺産、宅地では8割減額で計上も
相続税の計算では①いったん法定相続したものとして相続税の総額を出す、②その税額を実際の相続分で按分する──という2段階方式でした。
ここまでのところ、相続税に絡んでいろいろある「特例」が使われていません。
特例はどこで使うのでしょうか。
これを知るには「正味の遺産額」から説明しなければなりません。
[kanren postid=”1469″]
詳しくはコチラ↑に書きましたが、正味の遺産額を計上するときに「特例を使ったおまけされた金額」を計上するのです。
例えばマイホームを相続するときに使われる「小規模宅地の特例」。
これは配偶者や同居親族が相続する場合は、その宅地を8割引きの価格で相続できるという特例です。
例えば時価1億円の宅地は、正味の遺産額に計上するときには「2000万円」の評価となります。
また生命保険の死亡保険金や死亡退職金は、相続人1人当たり500万円控除の特典があります。
だからA家で夫が亡くなり法定相続人の妻が死亡保険金の受取人であれば、2000万円の保険金が(相続人が3人いますから)「500万円」として計上されます。
死亡退職金も同様。夫の退職金2500万円を妻が相続したら、正味の遺産額に計上される金額は「1000万円」です。
■配偶者はドカンと相続税軽減
以上は個々の財産に対する評価額の大幅”値引き”でしたが、配偶者はドカンと大きな特典を得ます。
それが[配偶者の税額軽減の特例]。
個々の財産についておまけされる上に、正味の遺産額そのものに”投網”をかけて優遇します。
その優遇とは
①正味の遺産額が1億6千万円までか
②配偶者の法定相続分相当額(つまり正味の遺産額の1/2)まで、
どちらか大きい方の金額までは相続税をかけない──という大特典がです。
正味の遺産額が100億円でも、配偶者が相続する限り50億円までは「ゼロ円」です!
一緒に生きてきた配偶者には、パートナーが亡くなって生活が一変するような苦労は掛けない、というのが法の意思です。
だからもう一人の配偶者が亡くなる「2次相続」ではこの格別な特典が亡くなり、ふつうの相続となるので相続税が跳ね上がるのが常です。
■分け方で変わる!相続税額
さて最後に、【4】で「実際の相続も法定相続分で分けた」という例だったので、今一つピント来なかったかもしれません。
そこで遺産の配分を変えて相続税額を計算し直してみます。
(Ⅰ)妻が5000万円、子1、子2が各3000万円
妻 2700万円✕1/4=675万円 → ゼロ円
子 2700万円✕3/8=1012万円 → そのまま
子 2700万円✕3/8=1012万円 → そのまま
A家が納めるべき相続税 1012万円+1012万円=2024万円
(Ⅱ)妻、子1、子2が遺産を3等分
妻 2700万円✕1/3=900万円 → ゼロ円
子 2700万円✕1/3=900万円 → そのまま
子 2700万円✕1/3=900万円 → そのまま
A家が納めるべき相続税 900万円+900万円=1800万円
(Ⅲ)妻が1億4000万円、子1、子2が各3000万円
妻 2700万円✕1.4/2=1890万円 → ゼロ円
子 2700万円✕0.3/2=405万円
子 2700万円✕0.3/2=405万円
A家が納めるべき相続税 405万円+405万円=810万円
(Ⅳ)妻が2億円全額
妻の相続額が「1億6000万円」を超えているので、この場合の計算は別方式になりちょっと複雑です。
2700万円✕1億6000万円÷2億円=2160万円 ◀配偶者の税額軽減額です
2700万円―2160万円=540万円 ◀妻が納めるべき相続税
A家の相続税総額を各相続人の実際に相続した額で按分していくと、納めるべき相続税額は変わっていきます。
「配偶者の税額軽減」の効果が大きいので、妻の相続した分が多いほど相続税の総額は減額していきます。
妻が全遺産を相続すると相続税は540万円、反対に子2人で全額を相続すると2700万円。
この間でA家の相続税額は、分割の仕方で動くことになります。
2700万円払ったとしても正味の遺産2億円(実際の遺産額はもつと多い)に対する税率は13.5%。
あなたが想像していた額よりずっと少な目だったのでは?
相続税の計算法を知ったあなたは、もう不安を抱えることはありません。
電卓を片手に数字を当てはめれば、相続税対策が楽しくなりますよ。
◎遺言・家族信託・後見制度・認知症対策・延命と尊厳死・終活・死後の心配についてメールで無料相談を行っています。
[btn class=”lightning bg”]メールで無料相談[/btn]
<ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)>
■■ 遺言相続・家族信託.net ■■