「家族信託」に最近はまっています。
まだご存知の方が少なくて、いつも説明には苦労します。
何しろ新しい、前例がない。
・・・・・だから不安、だという発想が私にはなくて、
民法の世界ではできなかったことができる、というこの1点に強く惹かれるのです。
「家族信託」は簡潔にいうと、自分の財産を身近な人に預けて管理してもらう、という財産管理手法です。
信じて託すから「信託」。
ただ、財産がそのまま預けた人のものになってしまう、というわけではありません。
信託された財産は「一定の目的」のためにのみ使います。
以上、2つが基本的なルール。
そのルール内であれば、預ける人と預けられた人との取り決めで、その財産を何のためにどのように使うか、自由に決めることができます。
■家族信託はシナリオだ!
つまり、家族信託はシナリオのようなものと言っていいでしょう。
財産を託す人がどのように未来を思い描くのか、その想像力次第で”物語”はいかようにも変わっていきます。
これは画期的な手法です。
奇妙な問いですが、財産を持っている人は幸せでしょうか?
お金や権力は生きているからこそ、当分生きているという希望があるからこそ、持っている甲斐があるわけで・・・・・、歳を取り、”出口”のことを考え始めるようになると、そう楽しいものでもなくなってくるような気がします。
なまじ財産があるだけに、やれ相続だ、遺言だと、無言の圧力もかかってきて。
これから何十年も生きるであろう者たちの期待感はうとましい。
そうは思っても、自分の財産の行先はそこにしかありません。
つまらない。
だから、懸命に生きてきた証の財産の行方も決めずに旅立ってしまう人もいる。
最近は、”認知症の恐怖”も言われます。
まさか私が? と思いはしても、自分だけは大丈夫と言い切れない。
憂うつです。不安がある。
でも子や孫に「私を見てくれ、気遣ってほしい」とも言えない。
■家族信託は老後に希望を与える
そういう私のような世代に、家族信託は希望を与えてくれます。
シナリオの書き直しです。
これまで生きてきたシナリオはもう色あせてかけている。
でも、まだ先がある(そう考えたい)。
ならばシナリオの書き直しは必須です。
遺言では、一代先しか決められない。
「私の財産」なのに相続させたら最後、相続人のものになって「どうこうしてくれ」と希望を述べても、してくれるかどうかは相続人次第。
信託なら、(信託は契約なので)決めた通りにさせる法的な拘束力がある。
意識して書けば、”これから”を自在に決めることができます。
シナリオを描くというのは、一種の生き直しです。
”争族”という言葉があります。
自分が遺す財産が引き金になって、家族が相争う。
おぞましい限り。
あなたはそう思うかもしれない。
でも、考えてみてください。
そういう家族をつくったのは誰ですか?
自分の生き方、考え方が当然、家族に大きな影響を与えています。
■「〇〇のために」が家族信託の真髄
遺言書は多くの場合、ひとりで書きます。
自分の想いを綴ります。
素直なやさしい家族なら、あなたの想いは家族に通じるでしょう。
ギクシャクした家族になっていたら、遺言書はかえって争いに火を付けてしまいます。
「家族信託」はひとりでは完結しません。
託す人がいます(委託者)。それはあなたです。
託すことができる味方が必要です(受託者)。それはあなたの息子や娘かもしれません。
信託から利益を得る人がいます(受益者)。それはあなたの配偶者・・・・。
そもそもあなたは人に託せる人でしょうか。
信じる力がありますか?
託すに足る信頼できる人はいるでしょうか?
第一、あなたに「どうしても守りたい人」はいますか?
そういう熱い想いが残っているでしょうか。
信託は「一定の目的」があってするのです。
「〇〇のために」というのが家族信託です。
「〇〇」はあなたの奥さんかもしれません。
あるいは体が弱い娘さんかもしれない。
また、認知症の発症を心配しているあなた自身かも。
「〇〇のために」は、家族の協力がなければできません。
もちろん家族内に信頼できる受託者がいない場合、第三者を受託者にすることはできます。
その場合にこの信託が成功するか否かは、信託の目的、「〇〇のために」を他の家族が理解できるかどうかにかかっています。
家族信託は1人ではできない、というのはそういう意味です。
■家族信託するなら家族と話そう
よく「家族信託は争族を防ぐ」などと言われます。
それはウソです。
家族信託が魔法のような手法で、もめごとをすべて解決してくれる、あるいはもめごとを起こさせない、なんてことはありません。
そんな手法は(信託に限らず)どこにもありませんよ!
ただ、今言ったように、家族信託を組むにあたっては、そもそも家族が一致協力する姿勢がなければ何も始まらないんです。
契約だから、委託者と受託者が一致すれば書面を交わすことはできます。
しかしふたりだけの密室の取り決めであったら、そこに同席しなかった他の家族は当然に反発するかもしれない。
”地雷”を抱えて信託がスタートしても、何も解決しません。
だからシナリオの書き直しは、必ず書き込む前に、家族と腹を割って話し合うことが必要になります。
それって、相当な度量と度胸がいりますよね。
でも何か事業を成し遂げようとするとき、人は間違いなくそういう作業をしているはずです。
でなければ事業は、予期しないタイミングで地雷を踏んで、希望も夢も吹き飛んでしまいます。
■家族信託でこんなことが実現する
家族信託は新しい財産管理手法です。
準拠している法律は「民法」ではなく「信託法」。
大改正された新信託法が2016年9月に施行され、一気にエキサイティングになりました。
ひとことで言えば、民法の法理をあきれるほど超えている。
まったく新しい発想の法律で、「民法の世界観」になじんできた法律家たちを困惑させるほど。
例を挙げると、家族信託ならこんなことができます。
- 親が認知症になった後も、負担の多い成年後見制度を使わずに財産管理する
- 自分が認知症になった後も相続対策を進める
- 親亡き後、在宅で知的障がいの子が暮らすスキームをつくる
- 自分亡き後、認知症の妻の老後を安心できるようにする
- いざとなったら実家を売って母に施設に入ってもらう
- 実家を狙っている兄の影響力を事実上、排除する
- 収益不動産の管理を息子に任せて“引退”する
- 兄弟が争った結果、共有財産になってしまった不動産の管理をする
- 未成年の子に財産を遺すが、親権者に浪費されない仕組みをつくる
- 現在の妻に自宅を遺すが、妻死亡後は前妻の子に渡す
- 財産は先祖代々引き継いできたので、直系の者に代々伝える
- 生前から自分の財産の処分方法を決め、確実に実行させる
- 無関心な家族に代わって友達に費用を持たせ永代供養してもらう
- 自社株を後継者候補の長男に持たせたいが、発言権もまだ残しておく
- 私が認知症になった後、信頼する部下に後継者選任を任せる
すべて民法の立場からは「無理です」と言われてきた事案ばかり。
でもそれは、法律がおかしいんです(誰もそうは言いませんが)。
こうしたい、こうなってほしいという希望がありながら実現しない。
新信託法なら何でもできるかと言えば、一定の限界はあるのでしょう。
でもこれからは、法律に当てはめてできることだけをする、という発想から離れることができます。
まず「これをしたい!」から始めます。
民法と信託法の下で、私たちにできることが増えました。
だから「これをしたい!」を実現させるシナリオを綿密に描く。
そこから始めます。
最後にダメ押しで、このやり方は法律に準拠しているかを精査。
難点があれば書き直せばいいのです。
想いが先!
希望をもって自分の財産の活かし方を考えていきましょう。
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静岡県家族信託協会
ジャーナリスト石川秀樹(相続指南処、行政書士)
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