★延命の“出口”を決める、医療側への「お願い書」を書いた

[延命の出口決めるお願い書

 

「寝たきりで延々と生かされ続けるのはかなわない」
そういう”空気”が少しずつ広がっているようだ。
でも、いきなり「尊厳死宣言」では過激すぎる。
もっと「自分の意思」と「医療側の事情」をつなげる文書ができないものか。
それで《終末期の延命について私はこうしてもらいたい》という、独自のお願い書を書くことにした。

 

■お願い書を書いてみた

介護や医療スタッフへの私的なお願い書である。
公正証書にする気はない。
そんなことをしなくても、事理を分けて自分の死生観と最期に延命措置をどうするかについてのお願いを伝えておけば、今の医療現場はそれを尊重してくれる。
一昔前とは様変わりだ。

 

私のお願い書は以下の通り────

 

私の死期に際し望むこと(お願い書)

<私の死生観>

私は自分に意思能力があり、わけても文章を書き続ける能力がある限り、生をまっとうしたいと思っています。認知症を発症していても、それのみをもって「延命措置停止」はお願いしません。

<「延命」判断の4ケース>

①病院に救急搬送時 

心臓マッサージや人工呼吸器装着など、迅速で懸命な、あらゆる救命措置を行ってください。

②がんなど治る見込みのない病気の末期
  • 心臓マッサージや気管挿管などの心肺蘇生 → 希望しません
  • 救命のために人工呼吸器を装着すること → 希望しません
  • 心臓を正常調律に戻すための除細動(AED) → 希望しません
  • 点滴や胃瘻、鼻からチューブによる栄養補給 → 希望します(しかし、意思・判断能力・外界への反応がすでに失われている場合には不要です)

※苦痛をやわらげるための処置は、最大限に行ってください。

③脳梗塞などの病気や事故などにより慢性的に重篤な状態にあるとき

皮下点滴、栄養補給のための中心静脈栄養や経管栄養(胃瘻増設や鼻からチューブ)は、私の意思能力がある限りは行ってください。
しかし②で書いたように、外界認識能力さえ失われた場合は、経管栄養を中断して皮下点滴に換えるか人工栄養の量を減らすなどして、自然に死を迎えられるようにしてください。
なお、急変時や最末期の心臓、呼吸器については②に準じることとし、救命よりは苦痛を除く措置をお願いします。

④老化により終末期を迎えているとき

<読み書き能力や意識がはっきりしているとき>

経管栄養を含め、現状維持のための措置を行ってください。

<著しく意識レベルが低下したとき>

身近な人を認識できず、外界からの刺激にも反応しなくなったときには経管栄養を中止して皮下点滴に換えるなど、自然死に向けての措置に切り替えることを強く要望します。

 

静岡県遺言書協会の会報4P目

歳を取ってから命の危機が迫って来たら・・・・私はそれでも安易に「延命拒否」とは言わない 静岡県遺言書協会会報3号「繋(つなぐ)」から

 

■父の闘病に1年半、接してきて

書家であった父は昨年正月、脳梗塞で倒れた。
右半身がマヒ、同時に言葉がほぼ失われ、嚥下障害が残った。
発症から5日目に医師から「鼻からチューブ(経鼻経管栄養法)をしますか?」と選択を迫られた。
迫られたのは父の子である私にであった。

 

断れば父は数週間の範囲で亡くなるだろう。
その後の父の経緯をいえば、リハビリに励んだ結果、4か月後父は自力摂食を取り戻し食事の「味」を云々するまでになった。
しかし90歳である。
小さな喜びの山を越えたかと思うと谷が待っており(例えば誤嚥肺炎)、総合病院→リハビリ病院→老健施設を経て、1年半後の今は老人病院で中心静脈栄養を受けている。

 

書けば「悲惨」だけしか待っていないように見える。
しかし私はこの間、死生観が変わったし、父の生きざまを肯定するようになった。
父は一貫して”生きること”を望んできたのだ。
以前、観念だけで、理屈だけで《人の終わり》を考えていた私は、こんな父のことを俗物だと思っていた。
潔くない、と。

 

今は、父を認めている。
えらそうに「認めた」というのではない。
《俺の中にも生きることにこだわる生命力があるのだな》
「潔さ」などという言葉に振り回されてきた自分の偽善を、木っ端微塵にされてしまった。
《そうだった。おやじのようでいい。俺も堂々としまいまで生にこだわろう》
と言えるようになったということである。

 

■家族に生死の決定権を委ねるのは酷!

にもかかわらず、条件付きながら「延命拒否」の事実上の”宣言書”にもなり得る「お願い書」を書いたのは、
家族に私の生死の最終決定権を委ねるのは《酷だ》と思うからである。

 

私はこの1年半、医師から問われ「父の生死の分かれ目」を決定してきた。
明確に「生き死にの判断」を迫られたことが4度。
入院5日目の鼻からチューブの選択。
リハビリ中に誤嚥肺炎を起こし救急搬送された病院で「もしもの時に気管切開などの救命を、しますか?」とも問われた。
老健施設で”末期”と判断されて、看取りの相談を受けたこともある。
そして最後に転院した老人病院では、皮下点滴を中心静脈栄養に切り替えるかどうか。
(中心静脈栄養に換えた結果、父が生気を取り戻せば、次は胃婁増設をするかどうかを迫られることになる)

 

どのタイミングでも、私が「もういいです」と言えば、父の命はあと数週間ということになる。
まるで「命の鍵」を預けられたみたいだ。
父の生殺与奪の権を預けられるなんて・・・・・、何という役回りだ!
負担は重い。自分のではない「命」の多寡を決めるなんて。
『父が自分で決めてくれたらいいのに』と何度も思った。

 

■だから「最期」は自分で決めておく

だから自分の時は『自分で決めなくちゃな』と思う。
そういう意味でのお願い書である。
私の意思は、今のところ明解だ。
意識があるなら生かしてくれ、意思を完全に喪失したらもう無理して命を引き延ばしてくれるな

 

『こんなことを書く俺は傲慢だ』と思う。
しかしこのように書き残しておかないと、家族が混乱するだろう。
意識ある限り俺は粘るけど、自意識がなくなったらもう解放してくれていい。
そんな気分のお願いだ。

 

この「お願い書」、私が属していた静岡県遺言書協会の「会報3号」=写真=のために書いた。
延命拒否」というのは自分の命を縮める行為なので、極力抑制するべきだと私は考えている。
そんな想いを込めて書かせてもらった。
「会報3号」はA4判4ページに「延命について」を特集している。
実物をご覧になりたい方は下記のリンクからお申し込みください<無料>。

「延命」について特集(静岡県遺言書協会・会報3号)

 

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石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

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★筆者のプロフィール

俺丸200

石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

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