注目の記事 PICK UP!

★「実家」を自ら売って”争族”回避!「断捨離」貫徹の母の決断をほめたい らくらく文例5

お母さんの決断

 

静岡花子さんは時価6000万円の豪邸に1人暮らしです。
悩みがあります。このマイホーム(子にとっては実家)が”争族”の火種になりそうなのです。
そこで、実家の相続で兄弟がもめるくらいなら家なんか売ってしまおうと換価分割を決心をしたのです。

 

換価分割の遺言を書いたものの

こんな遺言を書きました。

 

遺言書

遺言者静岡花子は以下のように遺言する。
1. 私が現在住んでいる静岡県静岡市葵区○○1丁目1-1にある私の家と土地は、私の死後、法定相続人である静岡太郎(長男)と静岡次郎(次男)が売却すること。
2. 私の実家を売却して得た金額のうち、税金やその他売却にかかる諸経費を差し引いた残りの金額を静岡太郎、静岡次郎に均分に遺贈する。
3. 私の現金と預貯金等の金融資産の一切も、両人に均分に相続させる。

付言】 本来なら長年住み続けてきた自宅には思い入れがあり、兄弟のどちらかに相続させたかったが、この家があることにより兄弟が反目し合うようになったことを感じ、私は「マイホーム」を売却することを条件にして一番大きな財産を両人に分け与えるものである。私の痛切な思いをよくくみ取り、お父さんと私の供養を欠かさないようにしてもらいたい。

平成○○年○○月○○日                  
○○県○○市○○区○○町○丁目○番○号       
遺言者  静岡花子 

 

お母さんの嘆きと怒りが伝わってくる遺言書です。
この家の状況はこんな感じです。

 

自宅を売るお母さんの決断

「自宅」の相続をめぐって兄弟仲が悪くなってしまった

 

マイホーム(家と土地)6000万円相当。
預貯金と現金2000万円程度。
花子さんは当初、家は兄に、現金等は弟にと思っていました。
2人とも特に親孝行というわけではありません。
独立して家庭を持ち、それなりに家族仲良く暮らしているようです。

 

■莫大な価値を前にケンカだなんて

ところが花子さんが相続の話を始めたところ、2人とも「割に合わない」と言い出したのです。
弟が兄に代償金として2000万円を要求したことから、兄が切れてしまいました。

 

静岡家の財産は花子さんが夫の財産を多めに相続した(不動産をそっくり相続したので財産価値としては高くなりました)ため、現在、総額で8000万円あります。
法定相続人は兄と弟ですから2人。
従って法定相続分は4000万円、遺留分は(計算上は)2000万円です。
豪邸は6000万円の価値があるとされていましたから、弟は法定相続分に届くよう「代償金」として2000万円を要求したわけです。

 

しかし兄は不満です。「弟に2000万円もなんて」・・・・。
無理もありません、普通のサラリーマンですから。
第一、兄はすでにマイホームを持っており、2軒目の豪邸なんかいらないのです。
さらに地方にある家ですから売りにくく、買いたたかれるのが目に見えている。
家を引き継げば改修費が掛かるし固定資産税もばかにならない。
相続税も弟の3倍払わなければならない。
それなのに「さらに代償金だって⁈」と怒り心頭に発してしまったのも無理からぬところでした。

 

■お母さんが自ら家を売却!

だから花子さんは冒頭のような遺言を書いたのです。
しかし結論を言いますと、花子さんはこの遺言書を破いて捨ててしまいました。
実家の相続に、もっと果断に行動したのです。
市内の不動産業者4社に電話して自宅売却の相見積もりを出してもらいました。

 

その中の1社に「時間は掛かってもいいからそれなりの値段で売ってちょうだい」と依頼。
ほどなくして「4800万円ですが、いかがです?」との電話を受けました。
ずいぶん値切られたものとは思ったものの「敷地が広いから分譲するしかない。造成費も掛かるし時価の7掛け、6掛けは覚悟しといてください」という不動産屋さんの言葉を思い出しました。
『8掛けならおんの字ね』と、さっさと売却してしまいました。

 

いま花子さんは、市中心部に近い介護付き老人ホームに入っています。
資産が6800万円あるからマンション住まいをしようと思えばできます。
しかし1人でいたら『私が倒れたときに見つけてもらえないわね』
それに老人ホームは家賃を払う形式だから、自分の所有物にはなりません。

 

「この歳になると”持っている”ということは不便ね」
入所に当たっては、換金できるものはすべて現金に換え、他の大半は捨ててしまいました。
断捨離です。

 

「お金を残してもしょうがない。残り年数でいくらくらい必要か計算して、あとのお金はぜいたくに使わせてもらうつもり」
私は花子さんの決断に感動しました。

 

自宅の分け方

分けにくい財産の典型である「自宅」。思い切ってお金に換えてしまうというのも有効な方法です

 

■人生を変えた選択、断捨離を敢行!

実家の相続方法は4つあります。

  1. 現物分割
  2. 共有分割
  3. 換価分割
  4. 代償分割 です。

 

「らくらく文例3」と「4」で代償分割で悪戦苦闘するお兄さんの例を紹介しました。
写真のように、家を2つに割るのは現実的ではありません。
相続でよく使われるのは不動産の持ち分を相続人で「共有」すること。
確かに公平にはなるけれど、実質的に売却・賃貸・解体などの処分行為には全員一致が求められるので非常に使いにくくなる上、次の相続でますます共有関係が複雑になり収集がつかなくなる可能性があります。

 

換価分割が難しいのは「お母さんが現に住んでいる」という場合が多いからでした。
この例では、お母さん自らが決断したのです。
すっきり分けやすくなった、というより、お母さんの老後の人生が劇的に変わりました。
ホームには同じような境遇のご婦人たちがたくさんいますし、運営主体がしっかりしているので行事も多彩。
85歳にして花子さんはますます多趣味になってきました。

 

実家の相続、こういう選択肢もぜひ検討してみてください。

 

【関連記事】
[kanren postid=”540″]
[kanren postid=”556″]

 

◎遺言・家族信託・後見制度・認知症対策・延命と尊厳死・終活・死後の心配についてメールで無料相談を行っています。
[btn class=”lightning bg”]メールで無料相談[/btn]

サイトのトップページへ

静岡県遺言普及協会
ジャーナリスト石川秀樹相続指南処行政書士

■■ 遺言相続・家族信託.net ■■

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

石川 秀樹

遺言、相続対策と家族信託の専門家です。特に最近は家族や事業を守るための民事信託への関心を強めています。遺言書や成年後見といった「民法」の法律体系の下では解決できない事案を、信託を使えば答えを導き出すことができるからです。
40年間、ジャーナリストでした。去る人、承継する人の想いがよりよくかみ合うようにお手伝いしていきます。

関連記事

  1. 「相続させない」という遺言書

    ★「相続させない」という遺言書 らくらく文例9 怒りにかられて書かないで!

  2. 遺留分減殺請求をやめさせる遺言

    ★遺留分減殺請求をさせない遺言、普通のお宅でこそ書いてほしい らくらく文例3

  3. 1次相続ではお母さんに全財産を

    ★1次相続では妻に遺産を集中。合意ができていても遺言を! らくらく文例10

  4. ★「遺言」について言わずにはいられない。無知は「罪」である!

  5. 魔法の1行内縁の妻差替え

    ★内縁の妻に全財産を遺贈する”魔法の1行” らくらく文例2

  6. 付言を活かした遺言書

    ★想いを伝えたいなら「付言」を使え!”争族”を未然に防ぐ遺言書 らくらく文例6

  7. 自筆遺言書の力

    ★お母さんに遺留分なんか請求するな!自筆遺言でまっすぐ伝える。「妻に全財産」を通すもう一つの方法

  8. ★妻に全財産を相続させる”魔法の1行” らくらく文例1

  9. 夫婦同時死亡に備える遺言書

    ★夫婦同時死亡と遺言書 らくらく文例8 想定外の相続を防ぐ”新常識”!

★認知症の家族を守れるのはどっちだ⁉ 家族信託の入門書

家族信託の本、発売中
全国の主要書店で発売中。
静岡県家族信託協会
または Amazonでも購入できます。
本の内容詳細はコチラから。
目次をご覧ください

(表紙)家族信託の本

<著者石川が無料でご相談に答えます>
本235PのQRコードから「家族信託パンフレット申込フォーム」に跳んでメールを送信いただけば、私が読者の問題に直接「答え」を差し上げます。

★電話でのお問い合わせ

遺言・家族信託・成年後見 054-207-9592

★<新版>家族信託のパンフレット、16ページに倍増!

家族信託の豊富な事例を追加。
銀行に凍結されたら手遅れです。
成年後見に追い込まれる前に決断を。
お申し込みはコチラから。

 

家族信託パンフレット

★筆者のプロフィール

俺丸200

石川秀樹

1950年生。ジャーナリストです。相続対策家(行政書士)。小さな出版社の社長でもあります。何を書いてもユニーク。考え方がまともなだけなんですが。このブログは遺言相続、家族信託、それと老後のあれこれについてが中心。

プロフィル

オール相続の略歴

[btn]超終活ノートさしあげます[/btn]

★静岡県家族信託協会(石川秀樹行政書士事務所)

054-207-9592
祭日以外は営業しています。

『成年後見より家族信託』

家族信託の本、発売中
全国の主要書店で発売中。
静岡県家族信託協会
または Amazonでも購入できます。
本の内容詳細はコチラから。
目次をご覧ください

(表紙)家族信託の本

<著者石川が無料でご相談に答えます>
本235PのQRコードから「家族信託パンフレット申込フォーム」に跳んでメールを送信いただけば、私が読者の問題に直接「答え」を差し上げます。
PAGE TOP