★居宅売却家族信託──認知症対策の定番、ボケが進行しても大丈夫!

家族信託
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こんにちは、静岡県家族信託協会石川秀樹です。
きょうは認知症対策としてよく使われる「居宅売却信託」について解説します。
当協会への家族信託相談のうち、最近は「居宅売却」のテーマが半数以上を占めています。

 

■認知症対策と空き家対策を同時に

居宅売却信託とは、簡単に言えば――――

「親の認知症が懸念される。深刻になってきたときには家庭での介護は難しくなる。施設で面倒を見てもらいたいが金銭的な負担は重くなるし、親が施設に入れば家は空き家となる。親が亡くなっても遠くに住んでいる私は実家を相続したくない。ならば親の入所を機会に実家は売却し、医療費や介護費用に充てたい」
親の認知症と空き家対策にもなる家族信託です。

 

認知症の心配は父なのか、母なのか、それともふたり共か――などによって家族信託の形は変わります。また家族の構成員も、夫婦ふたり、ひとり暮らし、他の家族もいる――など、条件が違えば契約内容も変えざるを得ません。ただ、居宅売却家族信託で共通しているのは「名義の本人が認知症になっていると契約ができない」「だから居宅を今のうちに信託しておいて、“いざというとき”は受託者の手で処分ができるようにしておく」ということ。

 

居宅売却家族信託は最も家族信託が力を発揮できる信託といっていいでしょう。

 

■「信託する」とは所有権を移転すること

家族信託は、成年後見人などの公的後見制度と違い「委任―代理」の関係ではありません。
民法に基づく「委任―代理」だと、委任する人が認知症などで意思や判断能力を失っていると、そもそも「私の代わりに○○○○をしてよ」と頼むことができず、「代理」が成立しません。そうなると認知症患者は何もできなくなってしまいます。それでは困りますから、法律で「公的な代理人」をつくって、「○○○○について」は代理人がそれをできる、ということにしました。

 

家族信託の発想は、この「委任―代理」とはまったく異なります。
信託は財産そのものに着目します。例えば不動産。ここから先は理屈で「信託」を解説すると非常に分かりにくいので、XとYの対話形式で説明しましょう。

X:不動産の所有者(信託契約の「委託者」父)
Y:不動産の処分を頼まれる人(信託契約の「受託者」娘)

■   □   ■
X:将来、マイホームを売却することをYに頼みたい。私が認知症になったらお前に迷惑をかけないよう施設に移りたい。しかしその時には私の判断能力は落ちているだろう。そうなると私が契約するのは無理だ。だからお前に頼みたい。

Y:わかったわ。でも私は家と土地の所有者ではないから契約できないのでは? 今からお父さんと代理人契約を結んでも、居宅の売却では本人の意思確認が厳重だと聞いています。お父さんが認知症だと誰も登記してくれないと思うわ。

X:だからお前にこの家の所有権を移すのさ。いま私の住まいと土地の名義は「X」。それを「Y」に換えて登記するんだよ。

Y:えっ⁈ それでは私が不動産をお父さんからもらってしまったことにならない? 贈与税がかかってしまうでしょ。

X:そうならないように「標(しるし)」を付けるんだよ。私が不動産をあげるのではなく、娘に不動産を管理・処分してもらいたいために「名義だけを娘に与えた」という標さ。

Y:そんなことができるの?

X:できるさ。それが「信託」だよ。「所有権移転」の登記と「信託の登記」というのを同時に行う。

Y:「信託の登記」ですか?

X:実物を見た方が速そうだ。信託契約書の“要約版”を登記簿に掲載するんだよ。

所有権移転と信託の登記(黄色テープ)部分

信託の登記は「信託契約書」の要約版です。所有権移転登記の直後に「信託目録」が載るので、第三者が見てもこの不動産の移転は「信託によるもの」であることがわかります

 

X:「所有権移転」の原因は「信託」。その後ろにズラズラっと「信託目録」を書いておく。これを見れば、何も事情を知らない第三者でも、この土地は信託によって所有権が「X→Y」に移転していることが一目でわかるだろ?

Y:でも、「信託」だと本当に私が所有者になっても贈与税がかからないの?

 

■信託財産を受託者の名義にする

以上のように、家族信託契約と同時に「所有権移転」と「信託の登記」をしておけば、Yはれっきとしたこの不動産の名義人(所有者)となり、Xの健康状態がどのようであろうと、Yはこの不動産の売買などの処分行為を自由にすることができます。
「自由に」というと何でもできてしまうので、信託契約では契約書の冒頭に「信託の目的」を書き、この不動産をどのような時に、どのような範囲で処分していいかを、決めておきます。

 

■所有権を変えても受託者に贈与税はかからない!

娘Yさんの最後の疑問にも答えておきましょう。
信託で不動産の所有権を移転しても、新所有者に贈与税はかかりません。
家族信託の当事者は、▼委託者、▼受託者、それに▼受益者です。

 

「受益者」は信託財産から何らかの利得を受ける人。今回の例で誰が得をするかというとお父さん(X)。だからXは委託者であると同時に受益者です。不動産は元々Xのものでした。それを将来の処分のためにYに所有権を移したけれども、実質的な利得を受けるのはXだけ。Xはこれまでと同様“自分の家”に住めるし、マイホームを売って得られるお金も自分の療養費として娘から支給されることが決まっています。
自分の財産をいったん預けているけれども、その財産から生じる利得は全部自分に返ってくる。娘(Y)は、管理・処分の義務だけを負い1円も利得を受けない「財産管理人」にすぎません。だからYに贈与税はかからないのです。

 

■委託者は「受益者」でもあるので信託の主役は2人

今回の「居宅売却家族信託」に合わせてX、Yの関係を示せば、以下のようになります。

 

  1. 委託者 父(X)
  2. 受託者 長女(Y)
  3. 当初受益者 X(委託者がそのまま受益者になります)
  4. 残余財産帰属権利者 Y
  5. 信託財産 Xの居宅とその管理費用
  6. 信託目的 将来、Xの居宅を売却してその売却金を信託財産に組み込み、Xの療養看護費等にあてる。

 

0自宅売却信託1

委託者の父が不動産を娘に信託すると、所有権名義は受託者である娘名義に換えます

 

実にシンプル。登場人物は2人しかいません。
委託者と受託者、もう1人「受益者」がいるはずですが、委託者が受益者でもある場合が家族信託では圧倒的に多いので、今回のような構成になることが少なくありません。

 

さて、信託契約を結んでも父の生活は今まで通りです。
受託者のYさんも当面、することがありません。
※固定資産税は「Y」宛てに届くので、Yさんはその支払いだけはすることになります。信託財産からそのコストを払います。

 

お父さんの認知症が進むと、いよいよ施設探し。
同時に父の居宅売却を検討します。入居一時金は多額で、しかも一度施設に入れば継続的に費用がかかります。そこでかねての想定通り(契約書に書いた通り)、受託者は父の居宅を売却することにします。

0自宅売却信託2

委託者兼受益者の父が施設に入所することになると、受託者は居宅売却へ動き出します

 

■居宅売却は後見制度では難しい

将来の認知症に備え居宅を売却することは家族信託でなければできないのでしょうか。
任意後見契約や成年後見制度を使っても、できなくはありません。
※所有者がすでに事理弁識能力を失っている場合は、公的後見制度を使うしかありません。

 

ただ、「家を失う」ことは重大事ですから、成年後見制度の下でこれを行うときは、家庭裁判所の許可を得ることになっています。家裁は、他に金融資産がなく、居宅売却以外にお金を得る方法がないときに限り許可を出すならいですので、お手軽に「困ったら居宅売却」というわけにはいきません。さらに、家を売って得られた金銭は、家族ではなく後見人が管理することになります。
成年後見制度は、後見を受ける本人が自由に後見人を選べないという難点もあります。

 

そこで、好きな人を選任できる任意後見契約があります。
この任意後見なら後見人は本人の希望を聞いて適宜のタイミングで居宅を売却してくれるでしょうか?
理論的には「できる」といいたいところですが、任意後見人には必ず任意後見監督人という法律のプロが付きますし、そのバックには家庭裁判所があります。そう考えると、監督人に相談、報告もしないで居宅の売却を進めることは、事実上難しいといわざるを得ないでしょう。

 

これは不都合のように見えますが、成年後見であれ任意後見契約であれ、その前提は「依頼者(被後見人)はすでに判断能力を失っている」ということですから、本人の代理人が好き勝手に家を売ることを許すと本人に大きな不利益が生じる恐れがあります。「不自由」であることは本人を守ることにも通じるわけですから、制度的にやむを得ない制約でしょう。

 

では家族信託では?
まさにこの事態を想定して家族信託の契約書を作っているのですから、受託者は適宜のタイミングで居宅売却を決定できます。
契約書に「信託目的」として居宅売却のことをきちんと書いておけば、受託者は制約を受けずに行動を起こすことができます。

 

■受託者の仕事の範囲を広げることもできる

今回は居宅売却家族信託の解説が主なので「信託目的」を単純化しました。

 

居宅を売却するときに、移り住む施設を決めるようなことも当然、受託者の仕事になりますが、仕事はそれだけにとどまりません。実際の信託契約では、受託者にもう少し複雑で多様な仕事をしてもらうこともできます。
例えば、ひとり暮らしの父の「見守り」。
受託者が父親と同居できない事情がある場合、父のためにセキュリティ会社と契約を結び、異変があったときには連絡をもらう、ということが考えられます。
また、父が暮らしやすくなるようリフォームの指揮をとる―なども任務とすることができます。

 

家族信託の契約書を書くときは、将来、あるいは近い将来に起こりそうなことを想像して、どのような場合でも対応できる契約内容にすることが大事です。想像する力が、よい契約にするための条件になります。

 

■残余財産の承継も柔軟

父が亡くなると、この信託は終了することになっています。
残余財産を得る人は契約で決まっており、「帰属権利者」といいます。
契約により今回の帰属権利者は、受託者のYさんです。

0自宅売却信託3(帰属権利者)

家族信託では残った財産の帰属も柔軟。家を売却したうえでの承継もOK

残余財産?
「でも、居宅を売った場合と売らなかった場合とでは、残余財産は違うんじゃないの?」
その通りです。
家が残っていればそれも残余財産。
売れていれば居宅はお金に代わり、信託財産の追加金融資産に組み込まれます。

 

家が残っている場合、受託者(長女)は「清算受託者」として、家を現状のまま承継してもいいし、売却して現金に換えてから承継することもできます。
(処分法についても契約書にあらかじめ書いておきます)

 

家族信託は財産承継にあたっても変幻自在で、柔軟です。
将来を予測していろいろな対応法を用意しておけば、遺言より確実に財産を引き継ぐことができるわけです。
もっとも、予測がきちんとできていないと………
思いがけない出来事により信託契約そのものが暗礁に乗り上げかねませんから、計画のち密さも必要です。

 

■家族信託の税務関係

最後に、今回の家族信託にかかる税金のことに触れておきましょう。

  1. 信託がスタートしたとき 委託者はこの信託の当初受益者になり、居宅は娘名義に換わりますが、居住権はいまだに父に在りまから、税金はもちろん何もかかりません。
  2. 居宅を売ったとき 売却益が出たときは、土地と家それぞれに所得税と住民税がかかります。税率は合わせて20%です。(不動産を売るときの仲介手数料や家の解体費は利益から差し引くことができます)。なお、居宅を信託していても、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は問題なく使えます。
  3. 父が亡くなり帰属権利者が残余財産を承継したとき 税務署は「信託はなかったもの」とみなして、財産承継を「父から娘への相続」とみなします。信託財産と信託しなかった財産とを合わせ、基礎控除額を超えている場合は、超えた分について相続税がかかります。

 

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静岡県家族信託協会
ジャーナリスト石川秀樹
相続指南処行政書士

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